第三話

冬都ふゆと。これ買ってきたから」

「なにこれ?」

 小さい子どもがすっぽり入ることができるくらいのダンボールを指さすと、冬都はさすがに画面から目を離した。

「抱き枕」


 というわけで、九千円くらいの抱き枕をいとしの弟に与えてみた。


「あ、ねれるかも……」

 冬都はむちむちふわふわのクッションに抱きつくと、気持ちよさそうに、とろーんと、目を閉じた。

「最低でも30分はねばりなさいよ」

「うん……」



 お互いベッドに入って、20分くらい経ったかな……。

 いつもは15分くらいで私の部屋にくる冬都が、今夜はこない。

 これはこれで、ちょっと寂しい——


 あれ……?

 もしかして、姉弟きょうだいばなれできてないのは私の方……?


 だって、だって。

 16も歳が離れてたら、仕方ないじゃん?

 おねえちゃんすきー、って甘えてくれるし、なにしても喜んでくれるし、おおきくなったら、おねえちゃんとけっこんする、って……。

 はぁ……。


 かわいかったなぁ、冬都。


 あぁ、ねむい……。

 明日も仕事だし、もうなーにも考えないで寝よ……。



 ぼふんっ。

「いで」

 そこそこの重みがあるふわふわもちもちに殴られた。

「ねえちゃん、ねれない」

「ふつう、それで殴るか……?」

「うるさい……。ねむい……」

 冬都はぽい、と抱き枕を放ると、ベッドに入ってきて——

 むにゆ。

「おぅっ」


 あーあ、私の九千円……。

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