第二話

 これは、まずいかもしれない——


 私の弟、冬都ふゆとは私を抱きながらでないと、眠ることができない、らしい。


 16も歳が離れた弟を甘やかしすぎた私が悪いのかもしれないかもだけれど……。

 だって、かわいかったんだもん。


 中学生にもなって、姉といっしょに、それどころか抱きながら寝てるなんてそんなこと冬都の友だちが知ったら……。


 すでにすー、すー、と小さく寝息を立てながら、冬都は私の胸元で心地よさそうに眠っている。


 あー、かわいい。

 中学生になってもまだまだかわいい。


 小学校3、4年生までは、私も腕で冬都の頭を包んで、後ろ頭や背中を撫でながらいっしょに寝ていた。

 5年生になると、冬都は自分で寝ると言い出して、はじめて自室にベッドを買ってもらい、そこで寝ることになった。

 だけど、30分くらいすると、目をこすりながら、私の部屋にやってきて、

「ねえちゃん、ねむいけど、ねれない」

 と言って、私の布団に潜り込んできた。

 次の日も、また次の日も、同じだった。


 そして、中学校にあがっても、結局ひとりで眠れないまま——


 ぐっ——

「ぐえっ」

 だんだん冬都も大きくなってきて、男の人の力になってきた。

 遠慮なく抱きつかれると、ちょっと苦しい……。

 コアラにしがみつかれてる木って、こんな気持ちなのかも。


 うーむ。

 姉ばなれ(物理)の方法を考えねば——

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