第43話 ばるぼら

 手塚治虫先生が『ブラック・ジャック』を連載を始めた1973年に、「黒手塚の代表作」とも言われてるアダルト路線の『ばるぼら』も連載が始まってる。

 人気小説家が浮浪者の女性を拾って恋愛に・・・そして破滅してゆく物語。



 『ブラック・ジャック』なら主題は「生と死」とか言い方はあるんでしょうが、この『ばるぼら』は主題を考えちゃいけない気がします。いや、最初から主題なんてなくて手塚治虫先生の性癖と嗜好を漫画作品に落とし込んだだけかも知れません。


 でも二つだけ、間違いないと確信してることがあります。一つは、主人公をどんな悲惨で残酷な状況にしても、一切作者は憐憫も罪悪感も感じていないこと。まあ、手塚治虫先生は「漫画に悲劇を持ち込んだ」作家ですから当然ですね。

 もう一つは1974年に起こった「絵画『モナリザ』へのスプレー噴射」事件に怒っていたこと。最終話に無理矢理このエピソードがねじ込まれてます。



 『モナリザ』スプレー噴射事件の犯人は、人権活動家だそうで・・・なぜ、芸術を毀損することが啓蒙運動になると考えるのか・・・世の常識を漫画で覆してきた手塚治虫先生にも理解の外でしょう。


 

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