第44話 奇子

 黒手塚の代表作が『ばるぼら』でも、黒手塚の最高傑作は『奇子』だと思う。

 戦後の激動と古い因習が色濃く残る田舎で、土蔵に幽閉されたまま成長することになった少女の物語。

 心の綺麗な人は読まない方がいいし、子供には絶対読ませられない作品。



 これ、最初読んだときには意味がわからなかったんですよ。

 戦後最大のミステリーと言われる『下山事件』。それを知らないと話が繋がらない。漫画だけで完結しない、しかも、陰謀論を前提にしてると言う、手塚治虫先生の作品としては非常に珍しい。

 下山事件を調べてから、もう一度読み返して「ああ、そうか」と納得できるところがありました。

 手塚治虫先生としては、当時の日本や世界に色々と腹に据えかねることがあったのだろうと思います。



 続編が計画されていた、との話もありますが実現しませんでした。取って付けたような大団円で終わってます。

 この作品がいい意味で昇華したのが『火の鳥』じゃないかとも思います。

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