十一話

「——<ベスティア>の生産は、現在で100を超えています」

「おお、ありがたい」

 魔界——クロースト城の地下一階、実験室。

 ここでは、<ベスティア>の生産、知能を向上させたり、新たな兵器を作ったりしている。

 その主幹であるヒランは、もうすでに新たな兵器を完成させていた。

「<ベスティア>ですが、少し難点があります」

 ヒランは、少し肩をすくめながら言う。

「どんな?」

「フォレストさんのような強大な力は持っていない、という事です」

「……ほぅ」

 椅子に座り、少しあごをさするフォレスト。

「それでも、人間は殺せるんだろう?」

「ええ」

「それならいい」

 ディークストの目的は、かつて存在していた魔の神を復活させることだった。

 復活をさせるには、その動力源である「鍵」が必要なのだが、その「鍵」は何者かによって盗まれてしまった。

 それは、人間なのか妖精なのかは分からない。とにかくフォレストがやるべきことは、片っ端から人間を殺して鍵を持っていないかを探すことである。

 現在の人間の数は約80億人。そんな数をフォレスト一人が殺すというのは骨が折れる作業である。確率は、80億人分の1なのだから。

 そこで、自分の手を汚さないという理由もあるが、一番はそんな数をどう殲滅していくかを考えた結果がこの<ベスティア>という兵器だった。

 地下一階の研究所に籠って、ここ数か月は<ベスティア>の研究をしていたヒラン。

「僕が紹介したかったのは、<ベスティア>の生産数ではないんです」

「というと?」

「言ったでしょう。新しい兵器が出来たって」

「ああ、そうだったな。それで、その兵器はどこにあるんだ?」

 ヒランは手招きをして別な部屋へと二人を案内する。

「これは……」

 リークが呟く。

「どうしたんだ?」

「……すごい開発だこれは……ッ!」

 なぜか一人静かに喜んでいるリーク。フォレストにはその意味が分からなかった。

「端的に言うと——<ブロッサム>を作ることに成功した、という報告です」

「おぉ!さすがだ、これで妖精たちに対抗できる!」

「ええ。言われていたことをしただけですけどね」

 部屋の真ん中には、簡易なベッドが設置されており、そこには小柄な少女が仰向けになっていた。

 その少女には色々なケーブルが繋がれており、モニターにはよくわからない数字が羅列していた。

「非常に苦労しましたよ。どれだけ人間をダメにしたと思ってるんですか」

「ああ、分かってる。それなりの対価は与えるよ」

「まさか<ブロッサム>を作れるなんて……もう一人前だなヒラン」

「ははっ」

 リークがそう言うと、ヒランは乾いた笑いをした。

「けれど、まだテストはしてないです。本当に使えるのかを試さないと」

 少女の頬を触りながらそう言うヒラン。

「そうか。試すって言っても、何で試すんだ?」

「そうですね」

 数秒沈黙が訪れた後、ヒランが口を開く。

「まずは<ベスティア>にどれだけ耐えられるのかの検証。その後、少し調整をして……人間界に送り込みます。そこで、妖精たちとの接触を図る。ある程度友好的になれば、こちら側から仕掛ける——といった感じでいこうかなと」

「ああ、ああいいな。そう思うだろリーク?」

「はい」

「頼んだヒラン」

 そう言ってフォレストたちは研究所を退出した。

「さてと……よろしく頼んだよ有紗」


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