十二話

 家に帰宅した蓮人は制服を脱いでジャージ姿へと変わる。

「それで……話ってのは?」

 リビングのソファに座り、対面でスカートを翻して寝転がっているレアに訊く。

「あの怪物——<ベスティア>についてだけど、口外しないで」

「……」

 どこかで聞いたことがあるセリフだった。

 ——玲華も同じことを言っていたのを思い出す。

「アイツは、私たち妖精の敵なの。それで、あんなのが学校にいるなんて他の人が知ったらパニックになる」

「ああ、確かに」

 至って普通の回答だった。

「俺から質問するけど、魔人はどうしてこの世界にいるんだ?」

「…………」

 目をつむりしばし無言になるレア。

「やっぱり考えられるのは、時空が歪んだか——人間界に穴が開いたか、の二つでしょうね」

「……そうか」

 分かったような分からないような曖昧な返事をする。

「まあ、とりあえず。今後何も起きないことを祈るしかないね」

「そうだな……」

 今回はレアが倒してくれたから良かったが、もしまた<ベスティア>が学校に現れたら大変な騒ぎどころではない。

「また学校に<ベスティア>が現れたら厄介ね……」

 そう言いながら何か悩んでいるレア。

「蓮人さん、そろそろ夜ご飯作らないといけないですよ?」

「あ、そうか」

 レアの様子を不思議に眺めていると、廊下の方からフェアリーの声がした。

 壁掛け時計に目をやると、時刻は午後7時30分。

 蓮人は立ち上がり、キッチンの方へと移動する。

「あっ、蓮人さんちょっといいですか?」

「?」

 冷蔵庫を開けようとした時、背後から声をかけられる。

「私も料理手伝いたいです」

 何とも嬉しい言葉だった。

「あぁ……そうだな。分かった」

 一瞬悩んだが、首を縦に振ってあげた。

「ありがとうございます」

 少し嬉しそうに頬を緩ませたフェアリー。

 この後、フェアリーと一緒に夜ご飯を作った。


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