九話
なぜ<ベスティア>という怪物が、人間界に存在しているのか。
考えられるのは、人間界のどこかに穴が開いてそこから入ってきたのか―—時空が歪みつつあるから、なのか。
魔人は何のために<ベスティア>を作り出したのか。
そもそも、魔人や妖精は、魔力というもので構成されている存在。
それゆえに魔力を根絶させる人間界では、魔人も妖精も弱体化する。
けれどその地にいる人間を使えば、弱体化することなく本来の力を出せる、というのが妖精の考えであった——
♢
次の日。
「おはよー、蓮人」
「……またか」
朝リビングに行こうとすると、インターホンが鳴った。
まさか……とは思ったが、寝ぐせはそのままで扉を開けると、案の定玲華がそこに立っていたのだ。
「……何しに来たんだ?」
「んー?えへへっ、ちょっとね」
「…………」
どうして二日連続で家に来るのだろうか。しかも、登校前に。
別に玲華の家と蓮人家は近くないはずだが……。
「あれっ、蓮人さん?」
「な……ッ!」
と、背後から急に声をかけられる。
びっくりして振り向くと、そこには今起きたのであろう、眠たそうな目をこすりながらこちらを見ているフェアリーがいた。
「……お、お前……あっち行ってろ」
このまま玲華に合わせるのはマズい。
なぜなら、自分には姉も妹もいないという事を玲華は知っている。つまり一人っ子なのだ。
そんな中この子を見たら、どう思うだろう?
「どうしたんですか?」
あくびをしながらフラフラとこちらに近づいてくる。
「い、いいから自分の部屋に戻れ!」
階段の方に指をさしながらそう叫ぶ蓮人。
「蓮人ってば何騒いでるの?」
「あッ!?」
それを不審に思い、扉を支えていた腕の下から顔を出す。
「あ……」
「え?」
そこで初めて目が合う。
この子は?
この人誰?
変な汗が額を流れる。
「れ、蓮人……?ちょっと、聞いていいかな……?」
顔を引っ込ませ、おずおずと聞いてくる玲華。
「この子………だれ?」
「………………」
その場に立ち尽くす。
「こ、これはアレだよ……ええと……」
目を泳がせ、なんていい訳したらいいか思考を巡らせる。
けれど、いい訳なんて通じるわけがなかった。
「蓮人って、妹いないよね……幼馴染なんだから、知ってるよ……ほんとに、だれ?」
「いやぁ、なんていうのかなー……」
少し苦笑いを浮かべる蓮人。
対して玲華は、少し顔を引きつらせたような表情になっていた。
「蓮人ー!早く朝ごはん準備してよー!」
「………………」
そして、レアの叫び声が家中に響き渡る。
蓮人は、ますます言い逃れできなくなってしまった。
「……れ、玲華……悪い」
「あ、ちょっ——」
これ以上こうしてはいられない。
蓮人は一言そう言い、扉を閉めた。
「蓮人!話は終わってないよ!」
「…………」
玲華の声を聞きながら、その場で頭を抱え込んだ。
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