七話

「くそ·····ッ!」

男が机を叩く。

その音は尋常じゃないほど大きかった。

「ど、どうしたんですか·····?」

対面に座っていた細身の男が、肩をビクリと震わせ聞く。

「俺の、計画が·····台無しだ!」

そして、もう一度大きく机を叩く。

 なぜあの少女たちが、あっちの世界にいるのか。フォレストは、少女二人に疑問を抱いていた。

 どうしてあの時の少女が、人間がいる世界にいるのだろう。

 いや、今はそれよりも。

「リーク……俺の計画は、どうなるんだ?」

「あぁ……今調べます」

 細身の男——リークは、近くにあったタブレット端末を手に取り、発する。

「ええと、フォレストさんの計画は、妖精が持っていると言われている鍵を奪還すること。けれど、その計画はかなり難航に至っています」

「……難航している理由は?」

「どの妖精が、鍵を持っているか分からないから、です」

「…………そうか」

 小さく息を吐き、背もたれに寄りかかる。



 ——現在の世界は、魔界、妖精界、人間界という三つの世界で構成されている。

 魔界と妖精界の間に人間界がある。

 魔界はかつて、ディークストという魔の神が存在しており、その時代は非常に裕福な暮らしができるくらいに治安が良かった。

 だが、ある日を境に、ディークストの動力源である鍵が何者かにより盗まれ、ディークストは死亡。その後、治安が悪化していった。

 その数年後、ディークストの遠い親戚であったフォレストが、その地位に君臨し、現在に至る。

 現在の魔界は、ほとんどの人が職を持てない状態に陥り、物価も上昇。死亡する人も、数えきれないくらい出ている。


「そういえば、フォレストさんはどうして人間界に?」

「元々、妖精界に行きたかったんだよ。だけど、人間界を通らないと行けないんだ」

「鍵を探しに?」

「ああ」

 けれど、なぜか妖精である二人の少女―—レア、フェアリーに出会ったのだ。

「疑問に思うんだ」

「?」

「どうして、人間界に妖精がいたのか、と」

「……え?」

 普通ならあり得ない。妖精界側からは人間界へは行くはずができない。

 そんなゲートのようなものは存在しないからだ。

「確かに、おかしい……なぜ」

 考えるようにリークがあごに手をやる。


「——お話し中、失礼します」

 と、部屋の扉がノックされる。

「お前は……」

 フォレストが後ろを振り向くと、そこには明らかに十代前半の少年が立っていた。

「ヒラン……どうした?」

「言われていた兵器、ほぼ完成しました」

「おお、その歳にしてはやるな」

「いえ。僕より年下のやつも、頑張ってますよ」

「そうだな。それじゃあ、案内してくれ」

 ヒランと呼ばれた少年は、小さく頷くと部屋を出ていった。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る