四話

「あの怪物は、一体なんだったんだ……」

 結局のところ、コンビニで弁当を買って近くの公園で食べることになった。

「……まさか、ここで出てくるなんて」

 隣でおにぎりを食べていた玲華が、そんなことを口にする。

「なんだって?」

「あ、ううん、なんでもない」

 蓮人は首を傾けた。

 玲華の言葉の内容にちょっとだけ違和感を感じたが、それ以上訊くことはしなかった。


 弁当を食べ終えた蓮人は、少しスマホでゲームをしようと開く。

 そのロック画面に、今日やることリストという名のメモが表示されていた。

「あ、そうだった。今日の夜ご飯買ってかないと」

 そこには、「夜ご飯の材料」と書かれていた。

「玲華、俺は今から夜ご飯の材料を買わないといけないんだけど、どうする?」

「あー、そうなんだ。……そう言えば、私もやることあるし、今日はこの辺にしよっか」

「分かった。気を付けてな」

「うん」

 軽く手を振り、玲華は公園を出て行く。

「さてと……買うものはこれらか」

 メモに軽く目を通しながら、蓮人も公園を出た。


 ショッピングモールが見えてきた辺りで。

 「……あれは」

 蓮人は小さく言葉を漏らした。

 数メートル先に、黒いドレスを着て歩いている少女が見える。

「……あ」

 と、こちらに気が付いたのか、後ろを振り返った。

「あなたは……さっきの」

「あ、ああ。その……さっきは、ありがとう」

「別に。また死者を出したくなかったから」

 凛とした顔でそう言う。

「……俺は日暮蓮人。それで、君は、レアだったか?」

「ええ」

 彼女の名は、レア。やや長い空色の髪をしている。

「あ、このままじゃいけないんだった」

 そう口にし、指をパチンと鳴らす。

「わ——っ」

 その瞬間、ドレス姿からラフな姿へと変わった。

「これでよし」

 奇妙な出来事だった。

 あんな一瞬のできことで、服装を変えられるなんて……。

「ん?どうしたの?」 

 唖然と見つめる蓮人に、レアは少し首を傾げた。

「服が……変わった」

「ああ。これ、私の能力の一つよ」

「能力、だって?」

 聞き慣れない言葉に、蓮人は訊く。

「なんていうのかなー……うーん」

 唸りながら後頭部をかきむしるレア。

「言って大丈夫なのかな……?いや、でも、言ったら言ったで事情を話さなくなるし、めんどいし……」

 何やらブツブツと言っている。

「えっと……レア?」

 と、蓮人が声をかけると、肩をビクリと震わせた。

「え、えーと……ごめん、私これから用事があるから!」

「あ……え?」

 そう言い残し、駆け足で去って行ってしまった。





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