43.更紗
(急がなきゃ……! もっと、もっと早く走るのよ。早くヤツを見付けないと。邪魔をされる前に早くケリを付けなくては……!)
更紗は白石殺害の現場から走り去ると、急いで合宿所へ戻り、リュックを手に取って急いでそこを後にした。向かう先は大嶺の潜伏先だ。
更紗は独学で勉強した心理学の知識を辿り、大嶺がとりそうな行動パターンを分析していた。その結果、大嶺は港の傍の廃屋にいるのではないかという結論に達していた。
よって、今彼女は合宿所から海へと至る道を走っていた。
(あんな人達みたく、綺麗事を言っている時間は私には無いのよ。早く、もっと早く。そして的確に大嶺を見付けるのよ)
更紗は合宿開始からの二週間で、体重がおよそ七キロも落ちていた。あれほど落ちなかった体重がここに来てグッと落ちていたのだ。運動と食事療法で四キロ落ちており、高遠が殺害された後は心労で三キロ減少していた。
よって、彼女のBMIは二十九・四にまで下がっており、以前より身体の動きもスムーズになっていた。
しかし、未だ太り気味である事には変わりなく、呼吸は荒く汗を大量にかき、出来る事ならば今すぐ徒歩に切り替えてしまいたかった。
しかし、彼女の内の何かが自身を奮い立たせていた。どうしてもメンバー達よりも早く大嶺を発見する必要があったのだ。
更紗はおよそ十五分で港の近くに着いていた。しばし、息を整える。もしも息が上がった状態で大嶺に遭遇しては、大嶺の思う壺だ。
(よし。わたしなら出来る。きっと大丈夫。高遠先生が守ってくれるはずよ)
更紗は顔をパンパンと両手で叩くと、意を決したように引き締まった顔つきで周囲にある廃屋を見回した。
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