第4話 【ドラマ】連続テレビ小説 虎に翼

作:吉田絵里香


第5週『朝雨は女の腕まくり!?』


◆これまでのあらすじ:

 昭和初期。女性は法律上で“無能力者”と定められ、様々な権利を制限されていた。女性は結婚し男性を支えることが幸せ。それが“普通”。そんな世の中の空気に疑問を持っていた主人公・猪爪寅子(伊藤沙莉)は、明律大学教授穂高(小林薫)に導かれ、弁護士を目指すことに。

 寅子の前には、女性は弱者、守られる者であるという社会の偏見と、その偏見の根拠となる男女不平等な法体制、女たちの『すん』とした諦めの空気が立ちはだかっている……


◆第5週あらすじ:


・月曜日……

 主人公・猪爪寅子(伊藤沙莉)の父(岡部たけし)が政治家への贈賄容疑で逮捕された。『共和事件』国家を揺るがす政治スキャンダルである。敗色濃厚な裁判を前に父の弁護を名乗り出る弁護士はいない。家の外には記者が詰めかけ大学にも通えない八方塞がりの猪爪家を、花岡(岩田剛典)と共に穂高教授(小林薫)が訪れる。

 穂高は父の弁護を引き受けると告げ、寅子にも大学に来るように促す。

 翌日、大学を訪れた寅子を待ち受けていたものは、学友たちの厳しくも温かい歓迎であった。

 1ヶ月後、ながらく検察に勾留されていた父が帰宅する。やつれきった父の姿に猪爪家は困惑する。無実を信じる家族の前で父は「やったんだ……」とだけ零した。父は予審※(※弁護人を介さない検察官と被告人だけの予備裁判。予審の判決を覆すことは困難だった。現在は廃止されている制度)で罪を認めたのだという。


・火曜日……

 父は口を閉ざし部屋にこもる。父の様子を穂高に報告する寅子。父の様子は明らかにおかしいが予審で罪を自白した以上、このままでは有罪になるだろう。穂高は寅子に自分の助手になるよう依頼する。父の無罪を信じる寅子は快諾し、寝る間を惜しんで調書の検証に乗り出すのだった。学友たちも寅子を手伝う。

 やがて寅子は父の無罪を証明しうる証拠にたどり着く。寅子の母(石田ひかり)が毎日つけていた手帳……その記述と調書の内容に食い違いが散見したのだ。そのことを父に問いただすと、父は無実であることを認めた。検察の厳しい取り調べに屈し、やってもいない罪を自白したのだった。

 この事実を知った穂高は寅子と共に贈賄事件の被告人の弁護人たちの会合へと向かう。敗色濃厚な裁判を控え、弁護人たちからはどこか諦めの空気が漂っていた。穂高は彼らの前で、寅子の父の無罪を主張すると宣言する。


・水曜日……

 寅子は「法は強者が弱者を虐げるためではなく、正しき者を守るためにあるべきだ」と弁護人たちの前で宣言する。学友たちの助けを借り、父の無罪を証明する証拠集めに奔走する一方で、新聞記者の竹中(高橋努)にも話しかけ、父を有罪と決めつけている世間の空気を変えるために記事を書いてほしいと頼み込む。竹中はそんな寅子を冷たくあしらうのだった。

 寅子が公正な裁判を求める署名を集めていた時、寅子は暴漢に殴りかかられる。すんでの所を救ったのは竹中であった。

 竹中は、共和事件の裏には内閣解散を目論む政治家たちの隠謀がある。これ以上被告人が無実を訴えれば、寅子の身が危なくなると忠告する。

 そして父の裁判の日が訪れた。裁判官の中には寅子にとって因縁の相手・桂場(松山ケンイチ)の姿があった。

 父は冒頭陳述で体調を崩す。厳しい取り調べに屈したトラウマが父の心身を蝕んでいた。退場する父に向かって竹中は、しっかりしろそんなだから娘が襲われるんだと野次を飛ばす。寅子は暴漢に襲われたことを父に隠していた。穂高は父に寅子が襲われた経緯を説明した。

 裁判が再開し陳述を終えた父に、判事が問いかける。お前は(予審と同じように)罪を認めるのかと。ここで父が罪を認めれば有罪になってしまう。父は寅子を頼りないまなざしで見つめ、つぶやいた。ごめんな寅子……と。


・木曜日……

 寅子の父は罪状を否認、予審で罪を認めたのは検察に自白を強要されたためだと主張する。ごめんな寅子……それは自らのふがいなさから娘に迷惑をかけたことを謝罪した言葉だった。

 穂高をはじめとする被告人の弁護人たちは、調書と矛盾する記録を証拠として提示し被告人たちの無罪を主張。その中には寅子の母の手帳もあった。

 対して検察は予審での自白を動かぬ証拠とする姿勢を貫き、矛盾を認めようとしない。

 革手錠での長時間の拘束。尋問による自白の強要は人権蹂躙にあたるのではないかと指摘。検察が革手錠は被告人が暴れたため看守の判断で装着させたものであり、検察に誤りはないと反論。すると寅子が何かに気がつく。穂高は寅子と一言話すと、監獄法を用い、検察の主張の齟齬を指摘する。監獄法では検察の指示なく手錠をかけることは禁じられている。検察の指示なく看守が自主的に手錠をかけるなどあり得ない。検察が予審での自白を強要するために手錠を用いたことは明らかであり、自白の信憑性は低いと指摘する。

 そして判決告知の日がやってきた。はたして下される判決は……


・金曜日……


 判決が下された。被告人16名全員無罪。検察側には有罪を裏付ける証拠は乏しく、最大の証拠とする予審の自白の信憑性も低い。これは被告人の罪を問うどころか、事件そのものが存在していなかったことを示している。検察側の主張はあたかも水中に月影を掬い上げるがごとく。よって無罪とする。とのことだった。

 この判決に寅子たちは湧いた。かくして1年半におよぶ猪爪家の戦いは終わった。

 平穏を取り戻した猪爪家で父と母は抱き合ってよろこび合うのだった。

 穂高は桂場と酒を酌み交わす。穂高は桂場が判決文を作製したことを見抜いていた。桂場が検察の態度への怒りを吐露すると、二人は国家権力に屈せず司法の独立を、法曹の誇りを守り抜いたことを称えあった。

 後日、桂場が行きつけの甘味屋を訪れる※(※桂場は甘党)とそこには寅子の姿があった。寅子はどうしても桂場に礼を言いたかったのだという。

 寅子はこれまで、法律を守るための盾だと思っていた。寅子の友人は戦うための武器だと思っていた。しかし今回の事件を経て考えが変わった。法律は道具のように使うものではなく、法律自体が守るべきものなのだと。色や匂いをつけてはならない水源のようなものだと考えをあらためたのだと桂場に打ち明ける。

 寅子の考え方は、裁判官の行動指針そのものであった……しかし当時の法制度では女性は裁判官になることは出来ない。桂場は寅子に裁判官の資質を見いだすも、それが叶わぬ世を惜しく思った。



◆ポイント

①師匠・穂高無双

 今までずう~っと面白かった虎に翼。今週は特に面白かったなあ……金曜日の判決には思わずガッツポーズをして喜びました。大谷翔平がホームラン打ったときばりに喜んでしまった……

 さて今週の見所は寅子の師匠・穂高の八面六臂の活躍でしょう。穏やかな物腰の下に、圧倒的な知性と不屈の反骨精神を持つまさ紳士の鑑。さぞおモテにでしょう。本職は大学教授ながら寅子や学生たちのやる気を引き出し、証拠を積み上げ、被告弁護人たちをひとつにまとめ、高圧的な検察にも一歩も引かない姿勢はかっこよすぎました。惚れた。師匠ポジはかくあるべきだよなあ、いいキャラクターです。

 

②記録の大切さ

 今回、圧倒的に不利な状況を覆す証拠となったものは、寅子の母がつけていた手帳の記録、銀行の入出金記録、邸宅の訪問記録……といった人の手をかいした記録の数々でした。

 もしこれらの記録がなかったら、父は有罪の判決を受けていたことでしょう。何気ない日記が、何かあったときの証拠となり得る。そのことを肝に銘じて僕も日記のようなものをつけようと思いました。

 この感想録もがんばりたいですね……作品に向き合って記録までつけるのってけっこう労力が必要ですでに挫折しそうですけど……(よければ応援お願いします)

 今週はスマホ片手にメモ取りながら朝ドラ観てました。


③朝雨は女の腕まくり!?


 ということわざの意味を、恥ずかしながら知らなかったので調べてみました。


朝雨は女の腕まくり……

 女が腕まくりしていくら力んで見せても、すぐにへたばってしまう。同じように、朝降る雨は、じきに上がるから恐れるに足りないことをいう。


 という意味らしいです。寅子や寅子の母をはじめとする女性陣が、まさしく腕まくりのがんばりで父の無罪を勝ち取った様を見たいま、まさに皮肉が効いたサブタイトルでした。


◆感想:

 序盤最大の見所でした。面白かったなあ……

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