剣士ライオネル


「みんなが突破できなかった壁をじいちゃんは越えたんだね」

「そう、驚くべきことじゃった。それから奴の剣は一線を越えた強さを手に入れた。一度でも剣で触れたものなら何でも斬れるようになった。どんなに硬いものでも、たとえ魔法であっても一刀両断にした」

「すごい」

「あっという間に奴はパーティーの中で最強の男になったよ。基本的に奴が斬れない敵も物もなかった。だが、スピードやパワーが飛躍的に上がったわけではない。あやつにも斬れないものがあったんじゃ」

 分からない、聞いている話じゃそんなものはなさそうだけれど。

「斬れないものって?」

「二つあった。一撃で即死する類の攻撃。それと、そもそも剣でとらえることが出来ないものじゃ」

 なるほど、たしかに二度目がないなら斬れないし、触れることすらできないなら当然斬ることなんてできない。

「最強の男はどうやってその問題を克服したおもう?」

「さらに剣をふった?」

 アルベルトは笑った。

「さすがはライオネルの孫じゃな。確かに奴は圧倒的な努力で問題を解決した。しかし同時に努力では解決できないものがあると悟ったんじゃ」

「じゃあどうやって?」

「奴は私たちを頼った。一番弱かった男は皆に馬鹿にされながらも、自らの努力を信じて最強となった。それでもなお自分の力に胡坐あぐらをかかずに私たちを頼った。色んな意味で大きな男だと思わされたよ。私が太刀打ちできないものをライオネルが斬り、ライオネルが対処できないところは私の魔法で補った」

「いいパートナーだったんだね」

「ああ、いい関係だったと思う。だから残念じゃ」

 昔話は終わり、アルベルトはそっと目を瞑った。俺もじいちゃんを思って彼とともに黙祷した。


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