むかしばなし
アルベルトは紅茶を一口飲むと語り始めた。
「ライオネルが剣士だったのは知っているか?」
「いや」
おれは首を横にふった。じいちゃんが剣士だった?そんなこと聞かされたこともないし考えたこともない。
「ライオネルの剣術は天才的だった…彼からダンジョンの話は聞かされたか?」
首を振る。ダンジョン、これも聞き覚えがない。
「順を追って話そう。ある日、私は国から直々に頼みを受けた。それは国の外にある七つのダンジョンについての調査をしてほしいという依頼だった。私は喜んで引き受けた。後日、王宮にメンバーが集められた。そこにいたのは誰でも一度は耳にしたことがあるような名の通った連中ばかりじゃった。いわゆる選抜隊じゃな。しかし、その中に一人、見知らぬ人間がおった」
「それがじいちゃんだったんだね」
アルベルトは頷いた。
「はじめてアイツを見たとき私は不思議におもったもんじゃ。どうしてこんないかにも凡庸な人間が選ばれたのか。」
もちろん今はそんなことはちっとも思っておらん、と補足して話をつづけた。
「しかし、あのときのあやつは剣術の手合わせをしても、魔法使いの私よりも弱かった。私が魔法で身体強化をしているとはいえ、実力の2割ほどしか発揮しておらんかった。そんな私にも勝てないものが剣士なんて名乗るべきではないと思った。そしてそれを直接本にに伝えたんじゃ」
あのときは本当に若かった、そう言って恥ずかしそうに頬を掻いた。
「ライオネルは一言、すまないと言った。そのことがきっかけになったのかは分からんが、それから奴は二度と剣士と名乗ることはなかった。そして、暇さえあれば剣をふっていたのが、今度は寝る間も惜しんで、何かに憑りつかれたように剣をふるようになっていった。そしてあるとき、奴の剣術は化けた」
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