第28話 ルミナリス
霧が立ち込めるルミナリスの朝は、かつての平和な日々の面影を色濃く残していた。
しかし、その静寂は表面的なもので
土地はドラゴニアとの長引く戦争によって深く傷つき、荒廃していた。
かつて子供たちの笑い声が響いていた広場は
今や訓練された兵士たちが行き交う場所となり、緑豊かだった林は戦火により焼け野原と化していた。
「…はぁ。」
ルナはそんな変わり果てた故郷を眺めながら、深いため息をついた。
彼女自身もまた、戦争の影響を直接的に受けていた。
彼女の家族は戦争で大きな痛手を受け
特に彼女の母が重傷を負い、その介護がルナの日常となっていた。
毎日、母の傷の手当てをし、痛みに顔を歪める彼女を見るのは、ルナにとって耐えがたい苦痛だった。
「お母さん、大丈夫かなぁ?」
泣きそうな顔でルナを見つめる妹
「大丈夫だよ!」
「エミリがそんな顔してたらお母さんが心配しちゃうよ?」
「分かった!」
妹はお母さんに前田気持ちをグッと堪えて寝室に向かう。
「母さん…」
介護と妹を見ていく責任は彼女に重くのしかかり、彼女の心にも疲労が溜まっていった。
夜な夜な、家族の安寧を願いながらも、彼女は戦争がもたらす絶望に打ちのめされていた。
ある晩、彼女は一人で散歩をして少しでも心の平穏を取り戻そうとしたとき
運命的な出会いが彼女を待っていた。
「ルナだ!」
森を散歩していると精霊たちが声をかけてくれる。
「みんな!元気してた?」
ルナは幼い頃から精霊の姿が見える特異体質だった。
両親に言っても信用してもらえないため
精霊と話せるのはルナだけの秘密になっていた。
「家族を支えてるルナは本当に偉いよな〜」
「そうかな?私がやるしかないからさ〜、でも介護って疲れるだよね…」
「そうだよね…休みなしで毎日やるもんだからね〜」
「精霊は介護しないじゃん!」
介護の愚痴や日常の何気ない事だか
母親や妹の世話をしているルナにとって
精霊たちとの会話は良い息抜きになっていた。
霧の中、一人の老人が彼女の前に現れた。
その人物はアルケミスと名乗り
ルナが持つ特別な力、すなわち「万物の声を聞く者」の能力について語り始めた。
アルケミスの言葉は神秘的で、彼はその能力がいかに戦争を終わらせる可能性を秘めているかを説明した。
「ルナよ、君の力はこの世界に平和をもたらす鍵だ。君は自然と会話ができ、精霊たちの声を理解する。なぜその力を戦に役立てないのか?」
「私の力が平和をもたらす?」
アルケミスの言葉に心を動かされたルナは、自分の能力について新たな視点で考え始めた。
「精霊は我々のはるか先を行く存在、彼らの力を少しでも借りる事ができれば戦争の未来は大きく変わる」
「…はぁ。」
もし本当に彼らの力を借りることができれば、戦場で無駄な命が失われるのを防げるかもしれない。
そして、何よりも彼女は、家族と共に再び平和な日々を送ることができるかもしれないという希望に心を寄せた。
その日から、ルナの生活に変化が訪れた。
アルケミスに導かれるように彼女は自分の能力を探求し始め
より深い精霊たちとの会話を試みた。
驚くほど短い期間で、彼女はその能力を使いこなし始め
自分の運命を変えるための第一歩を踏み出したのだった。
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