第15話 ドラゴンのポテンシャル

「アリーシャ、今回のリハビリは終わりだ」


「え?」


アリーシャは驚いた様子でこちらをみる。


「ど……どうしてですか?」


(そんなに悲しそうな顔をされると困る……)


「リハビリは必ず休息が必要なんだ」




「なぜですか?私はまだ動けますよ?」




「筋肉が強くなるには、


①筋トレをする


②筋繊維が切れる


③48時間かけて筋繊維が回復する


どうしても、休憩しないと筋力は強化されないんだよ」




「なるほど、休むこともトレーニングなんですね!」




「そうだな!」


「でも、休憩したらいつでもリハビリしにきていいからな!」


俺がそう伝えるとアリーシャはすぐに笑顔になった。


「ありがとうございます!ナオルさん!!」


この笑顔の為に頑張ってきたのかもしれないなと思った瞬間だった。




それから、デイサービスでのリハビリは順調そのものだった。


高齢のドラゴンはリハビリで


筋力を強化することで運動機能は改善して


怪我を乗り越えて働きに出るドラゴンもたくさん出た。




高齢化による慢性的な人手不足問題も


解決に向けて進み出していた。




リハビリは国さえ変えてしまう力があるのだ。


俺はデイサービスの隣にある、食堂に来ていた。


リハビリで大切なのは「栄養」


どんなに訓練しても栄養を正しく摂らないと筋力はつかない。


そこで、デイサービスと並行して食堂を作っておいたんだ。




「ナオルさん!今日はお忙しい中ありがとうございます」


「今日は私が作った料理を食べてください!」


アリーシャは嬉しそうに話しかけてきた。


「アリーシャが料理を作ったのか!?」


俺は驚いた。


ドラゴンが料理を作るなんて……


「はい!人間の姿の時に料理を練習したのです!」


アリーシャは誇らしげに言った。


(人間の姿でも可愛いな……)


「まあ、食べてみてください!」


俺はアリーシャに作ってもらった料理を食べてみた。


(うん!普通に美味しい!)


ドラゴンが人間の姿になり料理を作るという漫画のような展開だが、実際に体験してみると非常に美味しい。


「どうですか?」


「美味しいよ!」


俺が感想を伝えるとアリーシャはとても嬉しそうにしていた。


今日はデイサービスも休業日で、俺はアリーシャの作った料理を食べていた。




料理は鶏肉を中心としたタンパク質中心の内容だ。


「鶏肉はヘルシーで栄養満点ですからね!」


アリーシャが自慢げに言ってきた。


「確かに鶏むね肉はタンパク質が豊富で、低カロリーだからダイエットにもおすすめだな」


俺は鶏肉をモグモグと食べながら話す。


「これなら、リハビリの効果をさらに高めることもできそうだな」


「よかったです!」


アリーシャは嬉しそうだ。


「でも、なぜ鶏むね肉を選んだんだ?」


俺は素朴な疑問をアリーシャに聞いてみた。


すると、意外な答えが返ってきた。


「ナオルさんが好きな食べ物だからです」


(え?)


(俺が好きなのは鶏むね肉じゃなくてカレーなんだけど……)


(まあ、ここは異世界だしな……)


そんなことを考えていたら突然アリーシャが俺の手を握ってきた。


「ナオルさん、私……」


俺は突然のことにドキッとする。


(え?告白されるのか?)


「もっと、リハビリがしたいです!」




「えっ?」




「リハビリを受けてから、体の調子がいいんです!」


「体は軽いし、パンチも鋭くなって」


「この前なんか、エルフの英雄も撃退できたんです」




アリーシャは嬉しそうに言った。


確かに、筋トレみたいに能力が成長する考え方なんて


この世界にはなかったようだし、驚いて当然なのか。






「ちょっと待って、エルフの英雄って、国王様が敵わなかったあの?」




「はい、そうです!」


アリーシャはドヤ顔で答える。


(おいおい、国王様ってこの国で一番強いんだろ?)


(国王が敵わなかった敵を撃退できるなんて……)


俺は改めてドラゴンのポテンシャルに驚いた。


「じゃあ、これからも定期的にリハビリするか!」




「はい!ありがとうございます!」


俺はこの日から定期的にアリーシャのリハビリを手伝うことになったのだ。


それから2ヶ月が過ぎた頃だった。


デイサービスセンターにはたくさんの高齢者が集まっていた。

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