第8話 物件を探そう
その後、僕はドラゴニアの視察を終え王宮に帰ってきた。
国王は僕の話を聞いてくれた。
「ふむ……それは由々しき事態だな」
「アリーシャからも話を聞いたが、この世界はまだまだ未発展だ。人間の国もまだそこまで発達していない」
「だが、ナオル殿のおかげでドラゴン国の高齢化問題は解決しそうだな」
「まだ実際に解決策が見つかったわけでないですよ?」
僕の言葉に国王は答えた。
「だが、民の生活をよりよいものにできる可能性があるのだろう?」
確かにその通りだ。僕はこの国でもっとリハビリの知識を広めていきたい。
「ナオル殿はこれからどうするのだ?」
国王は僕に尋ねる。
「まだこの国にお世話になるつもりです」
「では、今のうちに今後のリハビリ計画を立てておきたいと思います」
国王は少し考えてから答えた。
「ナオル殿がこの国を良くしたいという思いはよく伝わった。私も全力でサポートしよう」
「まずは、ドラゴン国の高齢化問題を解決しなければなりません」
「この国をより良いものにしたいです」
すると国王はアリーシャに話しかけた。
「アリーシャ、ナオル殿に協力をしてもらえないか?」
「えっ!私ですか?」
「そうだ、いきなり人間がドラゴニアの政策に関わることを快く思わない貴族も多いからな」
確かに、いきなり来た
謎の人間がよくわからないことを始めようとしている……
反感を買うこと間違いなしだな。
「分かりました、お役に立てるか分かりませんが協力させていただきます」
こうして、アリーシャと協力関係を結ぶことになった。
国王は僕のリハビリのスキルを評価して
ドラゴニアでもリハビリを認めてもらえるように協力してくれると約束してくれた。
「だが、ナオル殿の行いを良しと思わない輩も多いだろう」
「しばらくの間、表向きはアリーシャの指示に従う形にしてくれ」
「分かりました」
アリーシャの指示で僕はデイサービスの候補地を案内してもらうことになった。
候補地は3番街と呼ばれる場所。
戦場で怪我を負ったドラゴンや高齢化で体の自由が効かないドラゴンが生活しているらしい。
「ここなら、怪我人の移動距離も短いし良いのでは?」
「僕もここなら賛成です」
「よし、では移動しましょう」
3番街は王宮から近い場所にあり 徒歩で数分で着く場所にある。
しかし、かなり距離があるのと怪我を負ったドラゴンが暮らす場所なので人通りは少なく、田舎町のような雰囲気がある。
「この辺りにしましょうか」
3番街を進むと開けた場所に出た。
そこは開けた草原だった。
僕は辺りを見渡す。すると、アリーシャが僕に話しかけてきた。
「この場所はドラゴン達のリハビリに適した場所なんです」
アリーシャは話を続ける。
「この国は戦争が多く、怪我を負うドラゴンがたくさんいます」
確かに、先ほどの戦闘でも怪我を負ったドラゴンや体が不自由なドラゴンがいた。
「僕が作るデイサービスではその怪我したドラゴン達を治療するんです」
アリーシャは僕の言葉に驚いた。
「まさか、病院を作ろうとしているんですか?」
「病院とは違いますが、怪我をしているドラゴン達にリハビリを行います」
「リハビリとはなんですか?」
アリーシャはキョトンとした顔で聞いてくる。
この世界には怪我をリハビリする概念がないのだから当然だ。
僕はリハビリについて一から説明した。
「……このようにリハビリとは個人が持っている機能を活かして怪我から立ち直るものなんです」
アリーシャは目を輝かせていた。
「素晴らしい考えです!」
「怪我をした者に新たな未来をつくるのですね!」
アリーシャは目を輝かせている。
「私、怪我人がお荷物というドラゴニアの常識をなんとかしたいと思ってました!」
「……そこまで壮大な者じゃないんだけどな」
どうやら僕が思っていた以上にアリーシャの目標は高いようだ。
3番街の物件探しも終わり、国王たちに報告を行うことにした。
「そうか、それは良かった」
「それだけですか?」
ドラゴニアの一大プロジェクトにしては反応が薄いような…
「ナオル殿のリハビリのスキルを信頼している」
「ドラゴン国の高齢化問題を解決するために頑張ってくれ」
国王に激励され僕は嬉しくなった。
「はい!」
こうして、僕はドラゴン国のデイサービスを作ることになった。
アリーシャと一緒に物件巡りをしていると、小さな家を見つけた。
3階建ての小さな建物で、設備も十分整っている。
僕はアリーシャに尋ねた。
「こことか、いい物件だな」
アリーシャも嬉しそうに答えた。
「ええ、私もそう思います」
しかし、営業している様子がなく廃墟のようだ。
「ここには何が?」
僕はアリーシャに尋ねた。
するとアリーシャが気まずそうに言った。
「ここは、過去の王族の別荘です」
「今は誰も住んでおらず、廃墟のような状態になっているのです」
「建物を壊すにもお金がかかるのでそのまま放置されているのです」
なるほど……確かに取り壊しの費用もバカにならないし放置するしかないのかな?
しかし、僕にはある考えが浮かんだ。
「よし、ここを改装しよう!」
僕が言うとアリーシャは驚いていた。
「えっ!ここにですか?」
「ああ、せっかくだしここを改装してデイサービスにしよう」
僕が言うとアリーシャは嬉しそうに答えた。
「ありがとうございます!更地にするのもお金がかかるので助かります。」
この世界、妙なところで日本と似てるんだよな……
こうして、僕たちは別荘の改装を始めた。
改装作業は1ヶ月程度で完了した。
廃墟だった別荘は綺麗に改装され、ドラゴンと人間のリハビリ施設へと生まれ変わった。
内装や設備もしっかりと整備した。
「これで、怪我で飛べないドラゴンもデイサービスに通えるな」
「はい、こんなに綺麗な施設は初めて見ました」
アリーシャも満足してくれたようだ。
あとは国王に報告を行うだけだ。
「国王様に報告に行くか」
アリーシャは嬉しそうに言った。
「そうですね、おじい様も喜んでくれるはずです!」
国王への報告はアリーシャに任せて僕は王宮に戻った。
「おお、ナオル殿か」
「なにか良い報告でもあるのか?」
「はい、施設の改修が終わりデイサービスを始める準備ができました」
国王は満足そうに言った。
「それは良かった!」
「喜ぶのはまだ早いですよ、始まってもいないんですから」
「そんなことはない、ナオル殿がいなければ我が国のドラゴン達は衰弱して死んでいっただろう」
「本当に感謝している」
「ありがとうございます。」
それほどまでに、ドラゴニアの高齢化問題は深刻ってことか……
こうして、ドラゴニアで世界初のデイサービスが始まることになった。
そして、国王に報告を終えるとアリーシャが言った。
「おじい様にもう一つお願いがあります」
「なんだい?」
「リハビリを受けるドラゴンは私たちに選ばせて欲しいのです」
アリーシャは真剣な表情で国王にお願いしている。
「ふむ……どうしてだい?」
国王の質問には僕が答える。
「リハビリは万能ではありません。怪我の状況ではリハビリでは回復が困難な場合もあるからです」
僕はさらに続ける。
「皆さんの期待を裏切るようなことは絶対にしたくない、だから高確率で能力が改善する者からリハビリしていく方針にしたいんです」
日本でもそうだった
リハビリは神の技ではない
回復が見込めないケースもたくさんあった。
国王はしばらく考えてから答えた。
「分かった、ドラゴンのリハビリはナオル殿に任せよう」
「私としては少しでも早く国民の助けになるようなら何でもしようと思う」
アリーシャは嬉しそうに言った。
「おじい様ならそう言うと思っていました。」
僕たちは国王にドラゴンのリハビリを任せてもらうことにした。
王宮から帰宅すると、アリーシャが嬉しそうに言ってきた。
「これで国民の役に立てますね!」
僕は笑顔で答えた。
「そうだな、早速準備を始めようか!」
こうして、僕たちはデイサービスの準備を始めた。
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