第7話 おぬし…本当に人間か?

そして、一本を炎龍に投げ渡す。


「感謝する」


僕は炎龍と向き合い木刀を構えた。


すると、アリーシャが話しかけてきた。




「ナオルさん!気をつけてください!」


「大丈夫、怪我しないようにするよ」




こんなこともあろうかと


ドラゴンの国王の筋肉の構造やステータスを【評価する眼】で分析していたのだ。








まあ、ステータスは向こうのほうが圧倒的に高いはずだけど……


今の僕のステータスだと


強化できるのは30分程度、誤魔化し程度なのだ




そんなことを考えているうちに炎龍が襲い掛かってきた。




剣術で言うところの「構え」というのだろう。


僕は炎龍の構えをみて、隙があることに気が付いた。




だが、かなりの使い手だ。


隙がわざとなのか本当に隙なのかは分からない。




炎龍は僕の間合いに入り、上段から木刀を振り下ろす! 僕はその攻撃をギリギリで避けるが頬に擦り傷ができる。


「へぇ……避けたってことは本気を出す気になったか?」


炎龍は余裕そうに笑い始めた。


「これはどう避ける?」


次の瞬間、炎龍は木刀を振り払い、一気に距離を詰めてくる。




【改善する者】自分の筋力と脚力を強化 僕は振り下ろされた炎龍の木刀を受け止める。


そして、その衝撃で砂埃が舞う。




「ふん、なかなかやるな」


炎龍は少し距離をとって構えた。




「ならば!」




炎龍は再び間合いを詰めて下から木刀を振り上げる。


僕も同じようにガードをするが衝撃を殺しきれず地面に倒れてしまう。


なんだ?筋力のステータスが軒並み高い?


「次は避けれるかな?」


炎龍は再び木刀を振り上げ、僕めがけて振り下ろす。


僕はそのまま炎龍の攻撃を受け止めた。


【改善する者】自分の筋力と脚力を強化! 【改善する眼】相手のステータスや弱点を見ることができる。


どうやら炎龍は僕が受け止められる力に調整しているようだ。




そして、再び間合いをつめてくる。


次の瞬間、木刀が振り下ろされ激しい音が鳴り響く。


「うむ、なかなか良い勝負だ!もっと楽しませてみよ」




どうやら炎龍は本気を出してはいないようだ。






僕のステータスでは炎龍に勝てない。


何か弱点を探るか……


僕は【改善する眼】のスキルを使ってみた。




すると、炎龍のステータスが見えるようになった。


【改善する者】は相手の機能低下だけじゃなく、ステータスや弱点も全て見れるようだ。




炎龍は先ほどまでのステータスより3倍近く強くなっている。


僕は木刀で炎龍の攻撃を防ぐが、衝撃で吹き飛ばされてしまう。


しかし……


【改善する眼】のおかげで勝機が見えた。




【改善する者】で自分の脚力を炎龍と同等に強化。


右側面から膝に攻撃を加える。






炎龍は膝をつき、木刀を落として膝をついた。


「おぬし……なかなかやりおるな……」


炎龍は余裕そうに笑っていたがかなりダメージがあるようだ。


「ふむ……人間相手に、ここまでの傷を負ったのは初めてだ」




僕の分析通りだ。


炎龍は右膝に怪我を抱えている。




この国ではリハビリという概念がないのだから


右膝を狙った攻撃は人間でも太刀打ちできる




はずがない。




そもそも、ドラゴンと人間ではステータスが違いすぎるのだ。


戦い始めてから25分が経つ、ゲームオーバーだ。






「おぬしは本当に人間か?」


どうやら人間の可能性を疑われているようだ。




「僕は人間だ。ただ異世界から来ただけのね」


炎龍は驚きながら僕に言った。




「異世界?なんだそれは」




「この世界とは別の世界があるんだよ」


僕が言うとアリーシャが慌ててやってきた。




「ナオルさん!何をしているのですか!」


アリーシャは血相を変えて僕に詰め寄って来る。




「異世界なんて……そんな荒唐無稽な話」




すると炎龍が僕に言った。


「なるほど、アリーシャの慌てぶりからして本当のことのようだな」


炎龍は僕の話を信じてくれたようだ。




「でも、この世界に別の世界から来た人間がいるなんて……」


「実際にここに存在しているじゃないか?」




アリーシャは頭を抱えた。


そして、真剣な表情で僕のほうを向く。






「異世界から来た人間は膨大な魔力を持っていることが多く、政治や戦争に利用しようとする人も多いんです」




「ナオルさん、このことは絶対に他の人間には言わないでください!」


僕は首を縦に振る。




「分かりました、このことは二人だけの秘密にしましょう」


アリーシャと秘密を共有したことに少しドキドキしてしまう。




まあ、あくまでリハビリの専門家とビジネスパートナーしてだけどね。

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