第3話 ドラゴンとリハビリ

僕は急いで鳴き声の聞こえた方に向かった。


そこには、黒い大きな魔物がいた。


「グォオオオオオオオオオオ!」


その魔物は、村の人に向かって攻撃をしていた。




僕はその人を助けるため急いで近づいた。


「【改善する眼】発動!」


すると、目の前に半透明の板が出てきた。


そこにはこう書いてあった。


---


魔物? ---


「これは……ステータスか?」


でも、どう使うのか分からない……


しかし、さっきと同様に何か出してみようと思う……そして!


「【改善する眼】発動!」


すると、目の前に半透明の板が出てきた。


---




黒い大きな魔物は僕に襲いかかってくる。


「うわわわ!」


僕は慌ててその場から離れる。


すると、足元に落ちていた石に躓いてしまう。


「いった……」


顔を上げると、魔物がこちらへ向かって走ってくるのが見えた。


(やばい……やられる!)


…やられなかった。




魔物は僕の目の前で倒れてしまった。




「この魔物…ドラゴン?」




何かを訴えてくるが言葉が分からない


【改善する者】で自分の言語能力を改善すれば


言葉が通じるんじゃ?




【改善する言語】




「頼む孫娘に遺言を伝えてくれ」




言葉が分かった!


「遺言ってどうして?」




「私は冒険者に襲われ翼を怪我した。もう母国に戻れないのだ」




「翼は治らないのか?治癒魔法とか?」




「無理だ、治癒魔法は遠い昔に絶滅した…怪我をするということは命を落とすことにつながる」




「なら、リハビリすればいいじゃないか?」




「リハビリとはなんだ?」




怪我が完治しないならリハビリで必要最低限まで機能を底上げすればいい


日本では当たり前のことだったが


この世界では「リハビリ」の概念がないらしい。








「リハビリは体の機能を回復させるために行うんだ」


「人間にそんなことができるのか?」


「さっきスキルを使ったとき、ステータスに怪我している数値が出てたけど、治らないのかな?」


ドラゴンが頷く。


「じゃあ、さっそくやってみるよ」


僕は自分のステータスを開いた。


----------


【改善する者】発動! ----------






ドラゴンの怪我の数値が改善していく。


しかし、あるところで数値の上昇は止まってしまった。




「翼は動くようなったが、飛べるほどではないな」




俺はドラゴンのステータスを見る。


数値がまだ黄色だった。


どうやらリハビリ次第で改善が見込めるサインらしい。




「どうやらここからはお前と一緒にリハビリすることで飛べるようになるらしい」




「一緒にリハビリするとはなんだ?」




「飛ぶために必要な筋力を強化する」






ドラゴンだって人間と同じ生き物だ。


筋力を強化すれば能力が改善するはずだ。


それから僕とドラゴンのリハビリは始まった。


「まずは、羽ばたいてみようか」


「わかった」


ドラゴンは翼を動かそうと試みるが翼は動かなかった。


「まずは、自分の筋肉を意識して動かせるようになるのが大事だよ」


「自分の筋肉……?」


それから僕はドラゴンと一緒に羽ばたく練習をした。




1ヶ月後、ドラゴンは自分の力で羽ばたけるようになった。




「素晴らしい!自分の努力で怪我を治すことができるとは」




「なっ!リハビリってすごいだろ!」




正直なところ怪我の影響より高齢による筋力低下が主な原因だった。


ドラゴンも高齢化するんだな




「これはぜひ、我が国にきてもらいたいものだな」




「何か問題があるのか?」




「我が国には年老いたドラゴンが多く住んでいる…」




ドラゴンの話をまとめると


・ドラゴンの国では怪我をした者、高齢で歩かなくなった者がたくさんいる


・介護問題が国の財政を圧迫している


とのことだった。






「なんか、日本と似ているな…デイサービスでもあれば話は変わるんだが…」




「それはなんだ?」


僕はリハビリのことやデイサービスのことを説明した。


ドラゴンの王様が僕の説明を聞いて呟く。


「人間の介護施設か……興味が湧いたな」


僕はドラゴンの国の王様に日本の介護施設やデイサービスについて説明する。




「ふむ、それならドラゴンの介護問題は解決できそうだ」


「とりあえず、そのデイサービスができるまでの間はドラゴンの村でドラゴンの世話をするよ」


「それは助かる。今後ともよろしく頼むぞ!」


僕と王様は握手をした。




大好きなリハビリの仕事ができるし願ったり叶ったりだな。

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