第21話

「戻ったぞ〜っ! ふたりとも、仲良くしていたか? あ、ライリーも!」


「「!?」」


 ババーンっ! と扉を開けて、アントンさんが帰ってきた。びっくりしたよ! 何の前触れもなく、急に扉が開くんだもん。今も心臓がドキドキしているよ!


「兄さん、扉はもっと丁寧に開けてください! そんなに乱暴に開けると、部屋の扉が壊れます!」


「はいはい。気をつけるって! で? ふたりは俺たちがいない間、話でもしたのか?」


 アントンさんが興味津々って感じで、こっちを見てくる。ロバートさんと話をしたというか、言い合いをしたというか、なんというか。


「「……」」


「うわー、話さなかったのか?」


 呆れたようにアントンさんが言う。


「少しだけなら話したよ?」


 そう、少しだけならね。


「思ったより、時間がかかったと思ったんだが……。ふたりで話もせずに、何をしていたんだ?」


「ライリーを可愛がっていました!」


「ブルルル♪」


「おー、お前たちは仲がよさそうだな」


 よしよしとライリーと一緒に、アントンさんに頭を撫でられる。撫でるっていうか、撫でかたがわしゃわしゃって感じなんだよね。ライリーはいいと思うけれどさあ?


「もう! アントンさん、髪の毛がぐちゃぐちゃになっちゃったじゃん!」


「あっはっは、まるで鳥の巣みたいだな!」


 笑いながら背中をバシバシと叩かれる。痛いよ!


「ぶふっ。……鳥頭」


「なっ!」


 ロバートさん。小声で言っても、聞こえたからね? 後で覚えておいてね!


 戻ってきたのはアントンさんだけだし、聞きたいこともあるけれど、まずは髪の毛を先に整えよう。笑われっぱなしは嫌なんで!


「まったく、もう。ぐちゃぐちゃにしちゃ、ダメですからね?」


「わかったわかった。悪かった」


 降参という感じで、両手を胸の上あたりに上げるアントンさん。その言葉、信じますからね?


「兄さん、閣下たちは?」


 私が聞きたかったことは、ロバートさんが聞いてくれた。


「ああ。まだちょっと、かかりそうでな? 様子見で戻ったんだ」


「ふーん……」


 なんだ、まだかかるのか。残念。


「それにしても……」


 私とロバートさんを交互に見る、アントンさん。むむむって感じで、顎に手を当てている。


「どうしたんですか?」


 あまりにも悩んでそうなので、声をかけてみる。私とロバートさんが何か?


「いや。あまりにもふたりが、仲良くなっていなさそうでな?」


「会ってすぐに、仲良くなる方が珍しくないですか?」


「子どもと仲良しこよしはちょっと……」


「あっ! また子どもって言った!」


「子どもは子どもだろう? 何も間違えていないさ」


「それもそうだ。言い返せない!」


 ロバートさんはロバートさんだね。優しくない。子ども子どもって言うロバートさんの方が、子どもっぽい気がするよ!


「なんだ、意外と仲良くなっているみたいだな?」


「「仲良く(ありません)ない!」」


「ほら。ふたりとも、息ぴったりだ」


「「……」」


「「真似(しないでくださいよ)するなよ!」」


「……」


「ちっ」


「ふんっ!」


「……お前らなぁ」 


 呆れたように、アントンさんにため息を吐かれた。仕方ないじゃんか! 多分、ロバートさんとは、気が合わないんだよ!


「お互いに歩み寄ろうとは……?」


「「特に必要性を感じ(ません)ないな」」


「こういう時には、息がぴったりだな?」


 なんだか疲れた感じで、アントンさんが言う。私とロバートさんの、息がぴったりっていうか……。もしかして、ロバートさんと考えていることが一緒だったりして? それは何だか面白くないな。


「ねーねー。おじいちゃんたちは、いつ戻ってくるの? なるべく早く戻ってくるって、言っていた気がするんだけれど?」


 本当になんでこんなに遅いの? むぅ。


「あぁ、ハイル爺さんなぁ……。ここしばらくの間、こっちに顔を見せていなかったからか、会う人会う人に声をかけられまくっていてな? 一応、爺さんは早く戻ろうと頑張っていたぞ」


 なるほど。おじいちゃんは有名人すぎて、帰るのが遅くなっていると?


「それと。騎士団長と一緒に、国王陛下もいらっしゃったからなぁ。あれは、もうしばらくかかるな」


「「えっ?!」」


 ロバートさんと一緒に、驚いちゃった。国王陛下って、たぶん国で1番偉い人のことだよね? おじいちゃん、そんな人ともお話しできるの?


「兄さん、エルンスト先輩はどうしたんですか? 一緒には戻らなかったのですか?」


 あ。そういえば、エルンストさんもいないな。アントンさんと一緒に行動をしているイメージなのに。


「エルンストは、作戦会議に関わっているぞ!」


「「兄さん(アントンさん)は?」」


 「「……」」


 同じ疑問を持ったんだから、台詞が被っちゃうのは仕方がないことだよね?


「俺は決まった作戦とかを、後でまとめて聞くんだ! つーか、ぶっちゃけ何を話しているか、さっぱりわかんなかった!」


 あっはっは! と豪快に笑うアントンさん。そっか……、話の内容が、理解できなかったんだね? だから、こっちに戻ってきたということか。あれ? 様子見で戻ったっていうのは嘘で、話についていけないから戻ってきたのでは?


 ロバートさんが、呆れたように見ているよ? 従兄弟だもんね。なんとなく私にも気持ちがわかるよ。


「はぁ。相変わらずですね? 兄さんは。自分でも作戦を練ったり、話を理解してくださいよ」


「いや、だってな?」


「「?」」


「初めは騎士団長と、国王陛下だけだったんだが。そこにちょうどよく、王太子殿下が来られてな? 流石に、それ以上あの場に俺がいることは、耐えられなかったんだ……」


「「国王陛下と王太子殿下……?」」


 なんかやばい名前というか、役職? 職業? がまた出たな? 


「ここって王宮なの?」


「「違う!」」


「えっ、違うのにいらっしゃるの?」


 普通は、王宮とかにいるもんじゃないの? そのふたりのロイヤルさんたちは。


「違うのに、いらっしゃったんだよ。急にな! どうせ爺さんの様子見だろ」


 うんざりした感じで、アントンさんが言う。お疲れ様です。




 ってことは、おじいちゃんたちが戻ってくるのは、まだまだ先ってこと?!

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