第17話
そろ〜り、おじいちゃんの所へ行こうとする私。別にこっそりと行かないでいいのは、分かっているんだけれどね?
「あっ! お嬢ちゃん!」
ちぇっ! アントンさんにバレた。特に隠れていたわけではないけれどさ。見つかったら見つかったで、なんか悔しい気持ちになった。
「まさか、こっそりと外に出て行こうと……?」
エルンストさん、誤解です。
「違いますよ! 『今』はただ、おじいちゃんの所へ行こうと思って!」
『今は?』
「あっ!」
「おい、エルンスト。このお嬢ちゃん、外に出る気満々だぞ? 見張りをつけて外に出さないようにした方がいいんじゃないか?」
「えっ!」
「そうだな、アントン。このお嬢さんはなかなか行動力がありそうだからな。部屋に鍵もかけたほうがいい気がする」
「はいっ?!」
えっ、ふたりとも何を言っているの!?
「お嬢ちゃんも賛成だってさ?」
「ならさっそく、準備を……」
「してない、してない。賛成していませんからっ!」
「さっき、はいって言っただろう?」
「それはただ驚いただけですから! おじいちゃんもなんか言って!」
さっきから黙っているおじいちゃんに叫ぶ。
「ん? ああ。行動力がありそうなのは間違っていないんじゃないか?」
違う、そうじゃない。そうじゃないんだよ、おじいちゃん!
「おじいちゃん! このままじゃ私、このふたりに外に出してもらえなくなっちゃう。部屋に鍵もかけられて閉じ込められちゃうよ……」
目に涙を溜めて、悲しげにおじいちゃんに言ってみる。涙はタイミングがよく、あくびが出そうで。
「なんと!」
おじいちゃんもノってきた。アントンさんとエルンストさんを見て、お前たちがまさか! という顔をする。でも、私には分かるよ。顔がニヤけているのがね!
「ふたりとも、か弱い嬢ちゃんを監禁しようとは。俺はそんな風に育てた覚えはないぞ!」
ノリノリですね、おじいちゃん。腕で涙をぐいって拭いながら言うなんて! あ、涙は私のあくびが出そうなのがうつったみたい。
『誤解です! / 誤解だ!』
慌てておじいちゃんに言うふたり。ふふん、私たちの演技に騙されるなんてまだまだだね!
「監禁しようとしたわけじゃねぇよ! ただ、閉じ込めようとしただけだ!」
「それって、監禁と何が違うの?」
アントンさん。あなた、何を言っているの? エルンストさんもこいつ何を言っているんだ的な目で見ていますよ?
「嬢ちゃんの言う通りだぞ。アントン?」
呆れたようにおじいちゃんが言う。少しの間アントンさんをジト目で見る私たち3人。
「だーかーらっ! 今外に出るのは危険だから、暴走魔野菜の討伐完了の確認が取れるまで、どっかの部屋で大人しくしとけって言っているんだよ。俺は!」
自分以外の人にジト目を向けられて恥ずかしいのか、顔を赤くしてアントンさんが言う。私をとても心配してくれているのが分かる。嬉しいな! ……でも
「だが、断る!」
「なんでだよ!?」
思いっきりドヤ顔で言ってやった。すぐにアントンさんがなぜ!? って顔で見てくる。それはそれ、これはこれだもん。
いい加減、相棒と暴れてもいいかな? おじいちゃん。私は早く、美味しい料理を食べたいんだ……っ!!
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