第11話
――おじいちゃん視点2――
嬢ちゃんのしがみつく力に耐えながら、いつもよりも速く駆けてくれる相棒で慣れた森の中を移動する。木々が生い茂っているが何度も、何十年も通ればもう慣れたものだ。当然、俺の相棒もな。
暴走魔野菜……。普通の魔野菜ならば、畑から軽く逃げ出す程度だが、《暴走》魔野菜となると話が全然違うことになる。
限界まで魔素を取り込み、凶暴凶悪な自我や知能が小さくとも芽生えるという。つまり、積極的にこちらを襲うことがある。
“他の普通の野菜を作っている人たちや農家さんは大丈夫なの?”
“私のいた世界では、素人が趣味で畑や家庭菜園で野菜を育てることがあるの。もし普通の野菜を育てているつもりでも、魔素エネルギーを受けて魔野菜になってない?しかも、凶暴な暴走魔野菜に……”
俺は、何故そんな考えに直ぐに至らなかったんだ! こっちでも、普通の野菜は多くの家庭で趣味や日課として育てられることが多い。
俺の畑の全てが暴走魔野菜になってしまったのに、他のところの野菜が変異していない可能性は限りなく低いだろうに!
……幸というべきか、どこの家庭にも結界石は常備してあるはずだ。結界石は身を守るための結界を張ることができる優れもので、各家庭最低3つは常備しておくのが決まりだ。
結界石にもランクはあり、結界を張れる時間はそれぞれ違うが、家庭で常備するものは結界石1つにつきだいたい1時間は結界が持つようになっている。だが、身を守るだけで攻撃手段がない。
結界の効果が切れてしまう前に敵の討伐を行わなければなるまい。果たして、どのくらいの暴走魔野菜がいることか。
しばらく相棒を走らせていると、前方に何かがいるのが見えた。
「ギャーオ゙ォッ!!」
……森グマか、こんな時に。こっちは急いでいるというのに面倒な!
「何アレっ?動物、魔物?」
「魔物だ!森グマという。森の暴れ者と呼ばれていて、森以外にも火の付近にいる火グマや水近くにいる水グマなど、たくさんの種類がいる。まあ、色で分かるだろう。見ての通り分かりやすい色をしているからな」
森グマを知らない嬢ちゃんに説明をする。さて、あいつはどうしようか?
俺の魔法でいちいち相手をするのもなんだし、嬢ちゃんに怪我があっちゃいけねぇ。ここは付き合いの長い、相棒を頼るとしよう。こいつは最近思いっきり力を発散していなかったからな!
「やれい!相棒よ!!」
「ヒヒヒーッ゙ン゙!!」
バリバリバリ〜ッッ! ドドーンッ!!
うぅ〜む、流石我が相棒。久しぶりにもかかわらず、流石の威力の雷撃だな!腕が落ちていなくて、まだまだお互い現役だな。
森グマも早く回収して、目的地に向かわなければいけねぇ。何だか嬢ちゃんが何か言いたそうだが、まあまだ少ししか関わりがないが、本当に聞きたいことがあれば聞いてくるだろう。
相棒に跨り、移動を再開する。嬢ちゃんの腕の力が上がっているのは、俺の気のせいだと思いたい。
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