第8話
今現在、おじいちゃんが乗ってきた馬に一緒に乗らせてもらっている。高い!そして速い!馬ってこんなに速度が出るんだね!決して私が忘れていた腹いせとかではないよね、ね?
「落ちないように、しっかり掴まっていろよ」
「はーい!」
落ちたくないので、ぎゅっとおじいちゃんの腰にしがみつく。周りの様子を見てみたいが、今の私にそんな余裕はない。体が疲れているので、落とされないようにするのが精一杯だ。
こっちに来た時に、おじいちゃんは農具を持ってきていたんだけど、邪魔だからと言ってしまいました。 どこにって?
魔法の鞄にね!凄いよ!中の空間とかどうなっているの?明らかに鞄よりも大きな農具がしまえるなんて!魔法って本当に凄いね。
もしかして、私も使えたりしないかな?
憧れちゃうよね、魔法!もし使えたら、危険じゃなければ教わりたい。まだ私が使えるか分からないけど。
「ところでちょっと、気になったことがあるんだけど」
馬に乗ってから少し経った後に、おじいちゃんが気になることを言っていたような気がするのを思い出した。
「おじいちゃん。今回の魔野菜の暴走は、急にどっかからたくさんの魔素エネルギーが流れてきて、普通用に育てていた野菜まで魔野菜になってしまったのが原因かもって言っていたよね?」
「ああ、それがどうした」
何を言っているんだコイツは……。という顔で振り返るおじいちゃん。今はまだ馬を操縦しているんだから、よそ見はやめて!
とにかく、私には聞いておいたほうが良い気がすることがあった。
「おじいちゃんの畑が広くて、魔野菜の対応も終わったことも聞いたけど……。それってあるか知らないけど、他の普通の野菜を作っている人たちや農家さんは大丈夫なの?」
どのくらいの魔素エネルギーだったかは分からないけれど、広いというおじいちゃんの普通の野菜が、全て暴走魔野菜に変わってしまったと言っていた。それってもしかして……。
「私のいた世界では、素人が趣味で畑や家庭菜園で野菜を育てることがあるの。もし普通の野菜を育てているつもりでも、魔素エネルギーを受けて魔野菜になってない?しかも、凶暴な暴走魔野菜に……」
「………………。」
あれ?おじいちゃんが無言になっちゃった。呆れちゃったかな?問題なさすぎることを今更言われて……。
気まずくなっちゃたかなと思って、何か別の話題を話そうとした時、急に馬の速度が上がった。舌を噛みそうになり、慌てて口を閉じた。そして更に腰にしがみつく力を強くした。
ぐぇっ!……と聞こえたのは、気のせいだね!
「今回の魔素エネルギーは大きくて、俺のところのヤツだけじゃないかもしれん。こっちでも普通に家庭でも育てているところがあるし、俺以外にも畑を持つやつがいる。大丈夫か確かめに行かなければ!馬の速度を上げるぞ、落ちるなよ?」
そう言っておじいちゃんは、馬の速度を更に上げた。私が更に腰にしがみつく力を強めたのは言うまでもない……。おじいちゃんがまるで潰されたカエルのような声を上げたのも。潰されたカエルの声を聞いたことはないけど、イメージで!
私は無事に振り落とされることなく、目的地まで行けるかな?おじいちゃんの腰も無事だと良いね。私がいうのも何だけど……。
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