第2話

「しっかし、広いなぁ〜っ! 見る限り魔物らしい怖い姿は見えないし……。もしかして、安心安全な異世界かも?」

 

 そう思っていた私を数分後に大変な目にあう私が殴りたくなるのは、今の私は知らないことで。



 ずっと同じ場所にいてもしょうがないので、今いる場所から動いてみることにした。もちろん、お城らしき建物とは反対方向に。だって、めんどくさいことに巻き込まれたら嫌だし。こちらはただの、女子高校生なのだから!

 

 魔物には会いたくないけれど、人には会いたい。ただし、善人に限る! 欲をいえば、衣食住の保証が欲しい。休日だったから、私服なのが幸いだったと思う。ミニスカ選ばなくてよかったよ。スカートはちょっと、異世界始まりは大変そう……。何かに襲われた時とか逃げるのに、スカートの中身とか気にしていられないと思うし。今日の服装にズボンを選んだ私、よくやった!


 適当に歩いていると、遠目に家らしき建物が見えてきた。


「やっと、人に会えるかな?」


 ここに来てから、会ったというべきかわからないけれど、見たのは自分で移動する木だけだし。あれは魔物なのか何なのか、異世界のただの木だったらどうしよう? 勝手に動くとか怖すぎるでしょ。

 

 しばらく歩いていると、何かがたくさん移動しているような音が聞こえた。音の方を見てみると、


「私の気のせいかな? 何か見覚えがあるけれど、知っているのとは違うやつらが、こっちに向かってきているような……?」

 

 私が知っているやつらは、動いたりはしないし、手足もついていなかったはずだけれど!


 「私の見間違いであって欲しいけれど……。きゅうりだよね? あれ」


 そう、何故か手足の生えたきゅうりと思われるそれらが、こちらにワラワラと向かってきている。私がいる方に……。


「手足があっても、目鼻口がない! あっても怖いけれど! 実はきゅうりに見えて、魔物!? 本物は手足ないし、動かないから魔物だ! 多分!」


 そうこう叫んでいるうちに、やつらは私のすぐ近くまでやってきていた。ただのきゅうりなら、切ってマヨネーズで食べてやるのに! マヨネーズは今回、持って来ていないけれど! 持ち歩くものでもないし! きゅうりの浅漬けも美味しいよね! やつらがきゅうりかは知らないけれど!

 

 とりあえず、私に今できることは……!

 

「助けて! 文代ちゃん〜っ!!」


 頼りになる、友人の名前を叫び助けを求めることだった。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る