2-2
光子は友だちと買い物に行った。去年日本橋にできた
軒下へさげた籠の目白が、
江口が再びまどろみかけた時、ふいに目白が騒いだ。続いて「旦那、旦那」と呼ぶ声がする。
「奥様はお出かけですか?」
庭に六兵衛がのっそりと立っていた。逆光で見えないが、いつものようににやにや笑っているはずだ。六兵衛は寺男で、ちょっと見たところは五十歳くらいの老人に見えるが、江口と同い年の三十二歳だという。
「いいもんを持ってきましたよ」
「なんだね」
江口は身を起こしながら言った。なにかと理由をつけて離れにやって来る六兵衛が、江口はあまり好きではなかった。いつも光子がいる時を狙ったようにやってくるので、光子も六兵衛を嫌っていた。
しかし今日は光子がいないことを知っていてやって来たようである。
「旦那、今日も顔色が悪いですぜ」
六兵衛は断りもなく縁側に腰掛けて言った。
「そんなんじゃ、奥様もさぞご不満でしょうよ」
下卑た笑みを、その日焼けした顔に浮かべた。江口は気分が悪くなった。帰ってくれ、と言いかけた時、六兵衛は持っていた麻袋をひょいと掲げた。なにか生き物が入っているようで中で動いていた。
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