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「あ、はい」
なぜか頬が熱くなる。
「これをポストに投函して欲しいのですが」
「わかりました」
先生に用を言いつかると、僕はいつも嬉しさのあまりおかしな所から声が出てしまう。今も妙に高い声が頭のてっぺんから出てしまった。
「ふふふ」と先生は笑って、「これは今週末までに到着しなければならない大切な原稿だから、確実にポストに入れてください」と言った。
「はい、大丈夫です。これからすぐに行って参りますから」
大きな封筒を受け取ると、すぐに外に飛び出した。ポストは牛込
すると後ろから先生が追ってきた。
「寺木くん、裏道ではなく表通りを行きなさい。とても大切な原稿ですからね。万が一、賊に襲われて奪われでもしたら困るし、野良犬に襲われてもそばに人がいなければ、だれにも助けてもらえませんから」
先生は眉根を寄せて僕を見ている。盗賊や野良犬に襲われる事を心底心配しているようだった。
「申し訳ありません。今後は気をつけます」
表通りに走り出て神楽坂通りを駆け上った。
大切な原稿をポストに入れる。その役目を仰せつかったことが嬉しかった。
夏の太陽は照りつけるが、暑さをものともせず意気揚々とポストに向かったのだった。
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