第3話
とりあえず近いところから攻めていくか。まずは俺の元家で次はあのショッピングモールか。今日中にこの二つを周り氾濫を抑えよう。
「よし着いた。向こうでもダンジョンに潜ってこっちでも潜る羽目になるとはなんの因果なんだか。少し腹立たしいしこれを使うか。」
そう言って出したのは向こうでの愛刀、銘は白虎。刀身が異様なまでに白いからその名を付けたが今思えば厨二ちっくだったかなとも思う。しかしなんといっても向こうのラスボスを切れる刀だからなぁ…とりあえず強い。
「君、もしかしてここに入ろうとしているのか?」
「そうですが、あなた誰ですか?」
「私は斉藤、役所の人間だよ。この場所の様子を見に来たんだ。次は君の番だなぜ入ろうとしているか聞いてもいいか?」
「魔物を間引くためです。このままだと氾濫してしまう可能性が高いので。」
正直に答えておいた方が後々実際に氾濫が起きた時に信じてもらえそうなので答えておいた。やはり役所も見回りはやっているようだ。
「氾濫するのか?このダンジョン。魔物を間引くというがどうやってやるつもりなんだ?その刀か?」
なんだこの人やけに聞いてくるな。早くダンジョンに入りたいんだけど。
「あくまでも予想ですが、ダンジョンは氾濫するものだと何かの小説で読んだ覚えがあります。刀はある程度扱えます。そろそろ行っても?」
「私もそういう小説を読む方なんだ。だからこうして見回りをしててね。しかもこの数日ダンジョンの様子が変わっているような気もしている。そんな場所に君を大人として行かせるわけには行かないんだけどな。」
「何を言われようがやめませんよ?では。」
さっきの人なんなんだろう。妙に理解のある大人だったしダンジョンの様子の変化に気づいていた。ダンジョンは氾濫が近いとその場所の魔力の流れが変わるんだが、それに無意識に気づいたということなのだろう。
ああいう人はすぐに魔法が使えるようになるんだよな。向こうの世界でも感覚派の人間の方が魔法を使えるようになるの早かったからな。
「ダンジョンに入るのも懐かしく感じるな。とりあえず進むか。軽く10階層くらいまでは魔物を狩っておくか。」
1階層は軽くスライムだけだったので鞘で殴って倒し、2階層から5階層はゴブリン、コボルトも追加で切り進み6階層から10階層まではそれぞれの上位種がごった返していたので切りまくった。やはり氾濫間近だったようで魔物の数が異常に多かったな。大体3時間くらいだな、早く次に行かないと今日中には終わらないぞ。
「あんたまだいたのか。斉藤さんだっけ。」
「行かせてしまったし心配でね。どうだった?氾濫の兆しはあったかい?」
「ええ。魔物を間引いてなければ間違いなく後1日2日で氾濫していたと思います。」
「そうか。他のダンジョンもそんな感じなんだろうな。その様子だと君は…魔物を倒すのは初めてじゃなさそうだね。」
「多分ですが、世界中でもう一度1ヶ月前のような災害が起きると思います。それに斉藤さんの予想通り俺は以前魔物を確かに倒したことがあります。時間もないのでこれで失礼します。ショッピングモールのダンジョンにも行くので。」
「そうだったのか呼び止めてすまなかったね。ダンジョンよろしく頼むよ。」
車で約2時間くらいの距離あるショッピングモールのダンジョンも同じような状態で、魔物の種類も大体同じだった。移動に本気ダッシュで30分、10階層まで2時間かかったが今日はまぁこんなもんでいいだろう。もし氾濫が起きたとしたら自分の周りだけは守れるようにしておこう。
「ただいま。」
「お帰りなさい龍。怪我はない?お風呂沸いてるけど先に入っちゃう?」
「怪我はないよ。少し汗かいちゃったし、風呂に入らせてもらうよ。」
奇跡的にライフラインは無事だったようで電気やガスが使えるのは大分助かるな。風呂に入れるのは日本人として本当にありがたい。向こうの世界でも風呂を再現するのに全力で金を使ったもんなぁ。
「母さん、父さん、麗華。多分明後日までにもう一度魔物達の襲撃が各地で起こると思う。」
「本当…なんだろうな。それは避けられないのか?お前の力でもどうしようもないのか?」
「あぁまず無理だ。理由はたくさんあるが1番の理由は時間が足りない。俺がどれだけ急いでも後4つのダンジョンしか氾濫を抑えられないと思う。」
「お兄ちゃん。お爺ちゃん達は大丈夫かな。今は無事だってわかってるけど。」
「確かに、心配だな。大体車で4時間くらいの距離だったよな。朝一番で行ってこようと思うんだけどいいかな。」
「俺たちは助けられる人が増える事に反対なんかしない。行ってこい。」
「一応念の為、アマネを置いていくよ。こいつこれでも氾濫で出てくる魔物の100倍は強いから安心してくれ。」
「アマネちゃんよろしくね!」
妹が妙にアマネを気に入ってるな。今日一日で仲良くなったのか?ヘビなんだがな。嫌悪感みたいなものがあったりすると思うが、魔物に比べるといささか可愛いのは間違いないがな。
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