第2話
ひとしきり説明を終えたら家族はポカンとした顔をしてこちらを見ていた。
「違う世界にいたってことなら確かにこの状況を知らないことに合点はいくな。にわかに信じがたい話ではあるが。」
「こっちに戻ってきて驚いたよ。向こうの世界にあったのと似たようなダンジョンがこちらにも出来てるんだから。」
そう、俺がいた世界には元我が家があった場所にできたダンジョンと同じものが街に一つはあるのが普通だった。資源や食料なんかもダンジョンに依存した世界だった為、その周りに街ができたというのが本来の歴史かもしれない。
だがそんなことは今重要ではない。この世界にあのダンジョンが現れたということは魔物が出たということだ。これからの俺の動き方を考えねばならない。
「じゃあお兄ちゃんは魔法みたいな感じのことができたりするの?」
我が妹ながら中々鋭い質問じゃないか、少し見せてやれば家族も信じるしかないだろう。
「使えるぞ。見せてやろう。『召喚』アマネ我が前へ顕現せよ。」
なんて言ってみたが別に口に出す必要は一切無いんだが皆んながわかりやすいようにそうしただけだ。
「え、急にヘビが目の前に!」
「そう、これが召喚魔法だ。まぁ自分が契約した魔物しか呼び出せないがな。」
「本当に魔法が使えるんだ。私も使いたいんだけど!私にも使えるようになる?」
「あぁできるぞ。この世界に戻ってきて一番驚いたのは魔力が存在していることだったんだよ。魔力があるということは魔法も使えるのは道理だろ?」
父さんと母さんは未だにアホみたいな顔でこちらを見ているが理解できていないのか?
「本当に違う世界に行っていたんだな。しかも10年もこちらでは一ヶ月しか経っていないのに、いや信じるしかないな。」
やっと信じてもらえたな。まぁ確かに年齢や姿もいなくなった時と同じでこっちに戻ってこれたから信じることが出来なくても仕方ない。
「この世界に魔力がある理由は俺の予想だがダンジョンが出来たことで魔力がこちらの世界にも流れ込んだんだろう…と思う。これから身体能力が高い人間や不思議なことができる人間も出てくるだろうな。」
「龍はこれからどうするの?今は全国的に学校もやってないし、かといって働こうにも働き先だってどこも復興に専念してるから。」
「俺はダンジョンに潜ろうと思う。俺の知っているダンジョンと同じなら氾濫が起きるのも時間の問題だと思う。」
もし2週間以上ダンジョンで誰も活動していないのであればそろそろ氾濫が起きてもおかしくないのだ。一度魔物たちがいなくなった理由はよくわからないがこのままだとまた出てきてしまう。手の届くところのダンジョンはある程度魔物を間引くことにしよう。
「氾濫ってまた魔物が出てくるってことだよね。お兄ちゃんなんとかできるの?」
「手の届く範囲なら可能だな。魔物を間引くだけだからそんなに時間はかからないしな。世界的にもその重要性に気づく人がすぐに出てくるだろうからそこまで被害も出ないと思う。」
「でもそういうの誰か偉い人に伝えた方がいいんじゃないの?総理大臣とかさ。」
「この非常時に異世界から帰ってきたからダンジョンのことも知っているとか意味不明なことを言う高校生の言うことを普通の大人が聞き入れると思うか?俺は思わない。だからそんな無駄なことに割く時間はないんだよ。」
そうこの世界的緊急事態時に一高校生の言っていることを信じられるわけがない。知識のある大人達はなんとかこの状況を打開する為に知恵を絞っているはずだ。なんとかしてくれると信じるしかないだろう。
「この辺りにあるダンジョンって地図で言うとどこにあるか誰かわかったりする?」
「それなら俺の会社にいけばわかるぞ。復興の為に色々調べているからな。今から一緒に行くか?」
「さすが父さん頼りになる!早く行こうそんなに時間が残ってない気がするんだ。悪い母さん帰ってきたばかりだけど行ってくるよ。」
「せめて怪我だけはないようにしてね。」
「まぁ俺が怪我は絶対にないとは思うけど、心配ありがとう。気をつけるよ。」
父さんの会社に向かった俺は同僚の方々に挨拶をし早速地図を見せてもらった。先の襲撃で今はネット回線が不安定になりラジオで情報を集めているそうだ。こんなことが起きてもラジオはやってるんだなプロ意識がすごい。
「早速ダンジョンに行ってくるよ。父さんたちは出来れば家で待っていてくれ。」
「あぁ気をつけるんだぞ。」
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