地獄から舞い戻った最強は現実世界を救う。

スーパーレモンX

第1話

 さて喜ばしいことに晴れて超低スペックのくせに難易度が鬼ムズの異世界から戻ってこれたのだが、いざ俺の家に帰ってみると—————なんということでしょう家が、我が家がありません。


「なんだこれ。向こうで見たまんまの建造物が俺の家があったところに出来てるんだが。」


「あら、龍ちゃん!?今までどこに行ってたの!皆探したのよ一ヶ月も!」


「向かいの新井さんじゃないですか。どうもお久しぶりです。いやぁ実は面倒ごとに巻き込まれたと言いますか。連絡できない理由があったんです。」


「そうだったのね。お母さん達にはもう会ったの?」


「今帰ってきたばっかりで…まさか家がこんなことになってるなんて思わないもんですから、まだ両親とは会えてません。その感じだと無事そうですね!」


「今はここから30分ほどのマンションに皆んなで住んでるわよ。住所はここよ。」


「ありがとうございます。早速行ってみます!」


 ということで新たな我が家へ向かうと、街並みがなんだか可哀想なことになってるな。

どこもかしこも瓦礫が積まれている…俺が地獄に行ってる間に何があったらこうなるんだ。


人の数も以前より減ったような気もしなくもない。早く家に行こう。心配だ。


「ここだな。部屋は1203か、呼び鈴はこれでいいんだよな?」


ピンポーンピンポーン


「はーい。え、待って!お兄ちゃんだ!おかあさーんお兄ちゃんがいる!」


「麗華!先に開けてくれよ。」


「わかった!早く上がってきて!」


 自動ドアが開いたのでエレベーターにのって12階へと向かう。


 家の前に着くとドアが勢いよく開いた。


「龍!今までどこ行ってたのよ!連絡もよこさないで!でも無事でよかった。」


 こう言って泣き崩れる母親を見て自分でもどうしようもなかったが胸が痛んだ。


「ただいま。連絡もしないで今まで悪かった。ただ俺の意思で離れたわけじゃないことだけはわかっていてくれ。」


「お父さんには私から連絡しておくわ。お兄ちゃんが帰ったって聞いたら多分飛んで帰ってくるんじゃない?」


 妹の麗華が父に連絡を入れると30分もしないうちに帰ってきた。これで家族も揃ったことだし、色々と聞かないといけないな。説明も必要だろうしな。


「まず今まで1ヶ月ほど姿を消してしまって本当にすまなかった。ただこれにはわけがあるんだが、少し長くなってしまうから先に家が無くなった理由を聞かせて欲しい。」


「ここは俺が説明しよう。龍、一ヶ月前お前がいなくなってすぐのことだ、この世界は大きく変わった。ここに来るまでに悲惨な状態の街を見ただろう。」


「あー瓦礫がたくさん落ちていたな。見知った建物なんかも無くなってたしな。」


「街が破壊された原因は元我が家に突如現れたダンジョンと呼ばれているものだ。」


 やはりあの建物はダンジョンか。ということは街の破壊は魔物の影響ということで間違いないだろう。


「ダンジョンと呼ばれるこれらの建造物はこの世界に存在していなかった生物、魔物が多数生息している所と言われている。どういう意図でこの建造物が現れたかについてはまだわかっていない。」


 確かにこの世界の人間ならダンジョンが現れた原因、意味を考えるだろう。俺が前までいた世界ではダンジョンが元々ある世界だからかそういった研究はされていなかったが。


「我が家があのダンジョン化に巻き込まれた時ちょうどお前を探しに大きな街に出ていた時でな…おかげで全員無事だったわけなんだが不幸中の幸いというやつだ。」


「大きな街では被害が出てないの?この様子だとやばそうな感じがするけど。」


「本当に何も知らないんだな、東京なんかは人的被害が多数出て首相官邸で暴動が起きたほどなんだぞ。確かわかっている限りだと日本での死者は20万にも及ぶらしく行方不明者もその10分の1くらい出ている。」


 戦争並みじゃないか。それにしてはこうやって生活できているあたりどうなっているんだ?


「それにしては静かすぎない?日にちも経っていないようだしもっと魔物とかが徘徊してるもんなんじゃないの?」


「なぜか魔物たちは3日程で地上から姿を消したんだ。その後は国民全員で原状回復に必死になった結果が今というわけだ。この家も父さんの知り合いが無期限で貸してくれているおかげでなんとか生活して出来ている感じだな。大体はこんな感じだが、お前一体今まで何をしていたんだ1ヶ月も。」


 この世界にも色々あったんだな―――結果論だが家族が全員無事で本当に良かった。


「俺の話か…とりあえず1ヶ月前にさかのぼるんだが、俺は妙な光に包まれて気がついたらこことは違う世界にいたんだ。」


「違う世界?お兄ちゃん勇者にでもなったっていうの?よくある異世界転移みたいなやつだよね。」


「まぁそんなところなんだが…詳しく説明するとあまりにも時間がかかるから端的に説明するぞ。俺はその世界で能力を得たんだ世界を渡った者の特典とかなんとか言っていたがまぁそれについてはまたにしよう。その能力で向こう側の世界を救うことになったんだ。体感だと10年程か色々あったがやっとのことで世界を救った結果、元の世界に戻ってきたのが今日ということになる。」


 説明してたら色々あったことを思い出して悲しくなってきた。

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