第11話TSっ娘と夏祭り当日

夏祭り当日。

「御...御陵...ど...どうかな...?」

城崎が俺に浴衣姿を見せてくる。

ピンク色の浴衣に花柄、いつもとは若干違うメイク。もう可愛すぎて死ぬ。

「か...か.....良いんじゃねえかな...」

「ほんと?良かった〜」

くっそ...今言うチャンスだったろ!なんで言えないんだ...

「っていうか!なんで御陵は浴衣着てないの?!僕だけ全力みたいで恥ずかしいじゃん!」

「だって俺もお前も浴衣だともしお前になんかあった時助けられないだろ?お前浴衣着るの初めてだし」

「まっ...まあいいけど!」

そんな馬鹿を言いながら、俺たちは祭り会場に来た。やけにうるさい祭り会場。人々が祭りのテンションで騒ぎ立てている。こういう所は少し苦手だ。城崎も大丈夫か...

「うぅ...。」

やっぱりか...まあこうなるのは予想出来てたが...

「大丈夫か?体調悪いならちょっと休憩するか?」

城崎は若干顔色が悪いながらも、

「大丈夫!一緒に回ろ!」

「あ!そんな所にいたんだ〜探してたのに〜」

「わっ!なんだ早瀬か...」

早瀬はやたらと派手な浴衣を着ている。ギャルか、お前は。

「まあまあ、そんなこといいから早く回ろ!」

そこから俺たちは夏祭りを全力で楽しんだ。たこ焼きを買ったり、一緒に射的をしたり、おみくじをやってみたりと、だいぶ楽しんだ。そうして楽しんでいる時、会場に放送が鳴り響いた。

「間もなく、大花火大会が始まります。」

放送が聞こえた時、城崎が早瀬になにかボソッと言った。

「この後御陵と2人にしてくれる?」

「いいよ〜なんとなく想像してたし!」

何を言ってるのか分からないが、早く行かないと席が無くなる。

「2人ともー!早く行くぞ!」

その時。一斉に人が移動した影響で、3人が分断された。辛うじて城崎の手を掴んだ。

「城崎!」

俺は人ごみを掻き分けるかのように人混みの中を進んで少しひらけた河川敷に移動した。

「ここまで来れば大丈夫だろ」

「完全に早瀬とはぐれたなー...」

「...御陵...手...」

そういえば俺はずっと城崎の手を掴んでいた。

「あっ、ごめん!痛かったか?」

「...ううん大丈夫」

そうすると、花火の上がる音がして、脳に響く破裂音が聞こえた。

「綺麗だな...花火」

「ね...綺麗だね...」

城崎は落ち着いたような顔でそう言い放った。

「...可愛い」

「へっ?!」

俺はそんなことを口に出していた。

「会った時にいえなくてごめん...だけど今回は絶対に言いたくて」

「っ.....」

一つ、大きな花火が上がった。

「御っ...御陵!あのね!」

「僕、御陵のことが!」

僕はその瞬間に言葉に詰まってしまった。

『いや、急に言われても』『そういうのはちょっと考えられない』『だってお前男じゃん』

そんな最悪の未来とフレーズが頭によぎった。

「す...す...」

「城崎...?どうした?」

「なんで一番大切な所が言えないんだよっ...」ボソッ

「城崎?」

「今の花火大きくなかったー?」

周りで見ていた人がそういいながら城崎にぶつかった。

「あっ...すみません!花火見てて...」

「大丈夫です、大丈夫か?城崎」

「う...うん...あっ...」

ぶつかった衝撃だろうか、鼻緒が切れていて、城崎は足を捻っていた。


その後

「いやードラマみたいだな、鼻緒切れるなんて」

「早瀬には連絡しておいたから、安心して帰ろうぜ」

「.......」

(やっぱテンション下がってるな...俺はなんで城崎に気の利いた言葉の一つすら言えないんだ...)

(僕はなんてビビりなんだろう...結局御陵に好きって言えなかった...)

(でも...今回御陵に好きって言わなくて良かったなって自分もいる、だって、この幼馴染っていう特別な関係がある訳だし...これが無くなるのは少しやだった。)

(だとしても、来年は御陵の隣にいるのが別の女の子の可能性だってあるのに、僕はこんなに怖気付いて...)

「「.........」」

「...城崎」

俺は思い切って城崎に話しかける。

「城崎もなんか思いつめる事があるかもしれないけど、もしあれだったらさ、俺に相談してもいいぞ、いつでも城崎と一緒にいてやるから」

(やっぱ御陵は優しいな...でも...これは自分でがんばらないと行けないことだし...)

「ありがと、御陵。御陵は優しいね。でもこれは僕で解決するから大丈夫だよ!」

僕はもう怖気づかない。次告白する時は絶対に言うんだ。御陵に好きって...

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