第4話TSっ娘と友達

「おーい!御陵ー!」

やけにでかい声が教室に響く。

「なんだよ鷺崎」

素っ気なく返す。来たのは馬鹿でかい声で叫んだ鷺崎。そして俺の友達の黒井だ。こいつはなんでいつも人を呼ぶ時にこんなでかい声を出すのか。

「いやー最近さ、城崎っちとずっと一緒で寂しいしーついでに城崎っちとも仲良くなろうと思ってさー」

こいつは倦怠期の夫婦か。あと城崎っちってなんだ。でも最近城崎とずっと一緒なのは否めない。

「ごめんな。そんなつもりは無かったんだけど」

「しゃーないなー、心の広いオレはカラオケに今日一緒に行くことで許してやろう ついでに奢れ」

こいつはなんてことを言い出すんだ。まあ、自分にも若干非はあるが。

「わかったわかった」

「よしゃー!それでなんだけどさなんで城崎っち念仏唱えてんの?」

この男はさっきから何を言っているんだ。そんなわけないと思いつつ、城崎の方を見た。

「リア充こわいリア充こわいリア充こわいリア充こわいリア充こわいリア充こわいリア充こわいリア充こわい」

本当に念仏を唱えてた。しかも呪い強めの。

「あー...気にしないでやってくれ。」

「どうするか?断るか?」ボソッ

俺が城崎に聞く。そうすると、城崎から予想外の言葉が出てきた。

「いや、今から僕はコミュ強になる!」

城崎が拳を掲げながら宣言する。すごい自信だ。

「ド...ドウモ...御陵がいつもお世話になってオリマス」

たどたどし過ぎる。会社か。

「でもさー本当に城崎っち女子になったんだなーオレ城崎っちなら全然行けるかも」

鷺崎が言う。

「髪とかちょっと長いのにサラサラでさーちょっと触っていー?」

ガタッ

その時、俺の右手は鷺崎の右手を掴んでいた。無意識に。

「えっ...?」

鷺崎が抜けた声を出す。

「あ...いや、髪触ると髪型崩れるからさ...」

パッと出た言い訳で取り繕う。

「あ...これ出来てるかもしれない」

黒井が意味深なことを言う。

「「何が?!」」

城崎と声を合わせて言う。

「いやー(笑)御陵も隅に置けないなぁーと思っただけ」

俺も城崎も顔を赤らめる。

なんだこいつ。

「ま...まあ、城崎っちも来れたら今日のカラオケ来なよー!」

すごい雰囲気を切り裂くかのように鷺崎が言う。

「わ...わかった...」

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