contact20―ハングアウト―

日本の北端はいつも寒い。


「オレらと同じ制服。

もう見飽きた通学路。制服の誰もがボッチ」


学校が見えてくると通学する同じ方向の生徒。

その統制を取れていない雑踏する列にオレも加わり歩く。

統制が取れていないようで規律はあるのは人の世の習わし。

冷涼れいりょうな気候であって低湿ていしつな土地。

三十度も超えることなんてまれのうち稀なため年間を通して身を冷える気温。

だもんで半袖を着る機会があまりないので衣替えに煩雑はんざつになることも無い。


「とはいえ暑いのも憧れはあるよな」


たまたまイベントや両親の実家がある田舎へ帰郷したときに北海道を離れることはある。

他の都道府県は衝撃的なのは暑いこと。

夏になれば三十度なんて珍しくもないらしいのだ。

そのため本などやネットで訊いてみたこともある。

オレが住み慣れている、えりも町の夏になれば気温は初夏だって客観的にそう説明。

――教室は賑やかだった。

このご時世になると単独行動が基本とされて縛られることもないが校門をくぐれば敷地。

敷地内に建物のアギトでもいおうか昇降口。

上靴に替えてから教室に。

近づくに比例して賑やかになっていく。

なんとも不思議だろうかとオレはまるで厭世的な考えで浸かっていたらアイリスに肩を叩かれた。


「何をするのかねアイリス。痛いではないか!」


いえ、本当は手加減されて痛くなんて無い。


「めんご。

おはよーうスマホを弄っていないレアな義直。

ねぇスマホをとうとう没収された?」


手刀を作って「めんご」とギャグ的に使われる死語をスルーして。

きらびやかなまでの濡れ羽色をしたボブヘア。

アイリスは白い歯を見せて座るオレを見下ろす背後から正面へと回ってきた。


「あのなぁスマホを弄らない時だってあるぞ。

いくらオレでも」


「へぇー」


信じていない。


「たまには外の眺めでも見ていたい日なんだ。

ポエムとか作らないぞ!一応……断っておくと!」


「へぇー」


スマホの充電した残量がゼロになったから仕方なく外を見ていたと口走って、アイリスに揶揄からかわれると牽制けんせいめいた軽快に言った。


「またこうしてオレのところに来たのは友達作りに難航しているのか。

それなら手伝ってやるのもやぶさか……

いや!ではないから!勘違いするなよ!」


「へぇー」


なんでアイリスなんか相手にツンデレを披露しないとならないのだ。

たくっ、まるでオレが勝手に芸をしているみたいではないか。


「オレも人のことは言えないが女子はそういう

コミニティーにあったほうが何かとストレス発散なるだろう?

オレら男子は、ボッチを堪能するために生まれたからなあ」


「へぇー」


なんだろうアイリスの返事が同じに聞こえるのだけど?なにか怒らせた身に覚えは無いし、

落ち込むような態度にも見えんし。

参ったなぁ。


「もしかしてオマエずっと考え事しているか」


「どうして分かったの!?」


「どうせ、アイリスのお兄ちゃんだろう」


「またもヒットしたっ!?

心を読める異能でも目覚めてしまったの」


「そんなのあれば楽なんだがな」


読心術でもあればルリアンナの異界らしい言語なんて魔術師の薬なんて頼らずに済む。

味は悪くはないのだが頼りすぎると体調が変質しないか安全性を疑いの目をオレは持っている。

根拠はどれもないが強いてあげるなら〖魔術師〗だから。

そのイメージはあまり良くないし。


「えっ。急にナニ?どうしたわけ。

深刻そうな顔なんかして……どこも悪くない、支障ないよね?」


「あ、ああ。

なんでもない、平気だ。

だから顔を近づいて確認しようとするなあ!

また誤解が広がるだろう」


顔を手で押して離れさせる。

アイリスは「わたしの顔を触っていいのは、お兄ちゃんだけなんだぞ!義直のクセにィィ!!」っと

眉根を寄せて怒る。

そして周囲のクラスの連中は「また夫婦のケンカしている」「なんだろう妬みがないのは、

色々とステータス高いからか」っと、ヒソヒソオレらまで聞こえる声量。

こうやっていると日常の生活しているなあと冷めたオレがそう感じる。

そうだ。ルリアンナはこの馬鹿げた日常を過ごしているのか。否、いない。

なら塞ぎ込んでいるとも捉えて。

そんな彼女は、異界に還ろうとして大いに奮起しては失敗している。

それでいずれ心は壊れる。

だからあのビルは壊れた箇所がいくつかあった。

不安や見知らぬ土地での恐怖、それは怒りに変わって負のスパイラルの渦にいる。

どうにか渦から出してあげて明るくしたい。


「なあアイリスなにか一つのことで没頭している人がいるとして。

どこも行かず熱意があって失敗したとして、

塞ぎ込んでいる相手にどうすれば元気になってくれるか?アイデアとかあるか」


アイリスに解決の糸口に繋がる切っ掛けを求めて

オレは自然と言葉が出た。


「えっ……また唐突なことを。

うーん、普通に遊びにいけばいいんじゃない。

遊園地とかストレス発散ならスポーツ施設もいいかもねぇ」


「楽しむならレジャー施設ってことか……。

ある種それは理にかなっているかもしれない」


「で、なんの質問がいい加減に教えなさいよ!

わたしたち幼馴染でしょう」


「また今度。いつかは教える」


信頼しているけど教えて誰かについ語るに落ちたりしないかも懸念してアイリスには語れない。

他にも心配はある、それにルリアンナに相談や許可もなく教えるのも良くないだろうし。

やや不満そうにしながらもアイリスはそれ以上は

踏み込まず溜息する。

いずれ教えなさいよっと目で訴えて。

オレはそれに小さく頷くだけにした。

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