contact18―煙月6―

表へと揺さぶれる。

これに、さしたる理由や意味は無い。

オレが目を開けて起きるだけであって、揺さぶれるのは成すことを定まっていないからだ。


「いつのまにか寝ていたのか。

彩るか……楽しみたいだけ?

そんな事あるわけがッ」


あるのか、咽喉はそれを否定して発さないと拒絶反応するかのように抵抗した。

内側にいる”幻想の自我”の問答をしていると決めたことが揺れそうだ。

たった短い掛け合いだけ。

しかし疑問を抱いたものは根源的な動機に刺さる。

刺さっていた。

情動を覗かれて語ったことに。

可哀想だから助けようとしてきたのが……。

近づいたのは退屈の灰色を楽しいと満たすための

鮮やかな色に塗るために。


「よく眠れたか?」


「ルリアンナッ!?なんで寝所にいやがるんだ……そうか!ここオマエの家だったなぁ」


「ああ。仮住まいしているだけだ。

よくみれば顔色が悪そうだが眠りが浅かったか」


「いや、十二分に取っているよ。

少なくとも陽が差し込んでいるなら。陽射しから見ればわかる。長く寝ていただろうし」


新しい事柄が今日も迎えようとする太陽光。

陽を浴びながらオレは掛けてくれた毛布を丁寧に直してから立ち上がる。

硬い材質で寝ていたからか尻が痛い。

両手を広げる。

弛緩した凝り固まったような筋肉がほぐされ柔軟性になっていくようだった。

次に腕を上げて引き伸ばす。


「朝の支度しておいたぞ。

そろそろ空腹だろう人間?ここを我が家と思って、早く顔を洗ってぜんに着くといい」


「ああ。そうさせてもらいます。

んっ。どういうことだ?普通に会話ができている事に驚きなんですが」


「フッ。それもそうか」


おかしそうに頬を緩めるのも絵にはなるが、その理由は応えようとしないか。

応えを言わず試しているかのような目。

それでやや回りくどい言葉遣いをするのか。


「ルリアンナさんは日本語を喋れるのですか。

けど昨晩で習得するには……ならオレが魔術の秘薬がまだ作用しているからか」


「私が魔術の末裔に頼んで魔術の秘薬を使用しているんだ。

ゆえに私は言語をしばらく四苦八苦することはあるまい人間よ」


どうやってその秘薬を入手したのかまではつぶさに述べていなかった。

詳しく応えてくれないようで諦めるか。

ともあれ魔術の秘薬を着服したのなら言葉は通じれることになる一時的になるけど。

であるなら非言語コミュニケーションをしばらくはしなくていいわけか。


「おぉー。これでアクションで会話しなくて済む。

でもルリアンナさん魔術の秘薬をどこで?」


「ここへ尋ねていてなぁ。

直接に渡してくれたわけなんだよ」


「ふーん、なるほど」


元からそんな話術は熟練したのではない変わった高校生なのだ。

どの辺で尋ねようとまた機会を伺うとしよう。

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