contact17―煙月5―

いつからだろうか。

何かあればスマートフォンを優先するようになってしまったのは。

手軽に、いつでも人生に彩りをつける。

新鮮な気持ちにさせた。

次々と新しい情報が入ってきてはアップデートして便利な機能が増えていく。

娯楽も勉強や通話のサポートだってなんでも。

すっかり略称でしか呼ばなくなったスマホ、

あらゆる面を欠かせず進歩していくに連れてより必要不可欠なツールになっていた。

それは画面を閉じる古いケータイ。

それにはインターネットも情け程度にしかないと風のたよりで聞いた。そんなモノを知らない世代のオレでも、スマホは新しい。

飽きることなく彩りを多くを常に続けさせてくれるそれは虹が昼夜のべつ幕無まくなし空を留まり続けるようにあるようだった。

でも……。

退屈に感じるようになる。

十年が一日のごとく過ぎていく。

虹がずっと空にかれば飽きてくる。

彩りを与えるものに辟易して疲れてくる。

けど興奮して好奇心のとりこには逆らえない。


『まるで麻薬だなスマホは』


暗闇の中で、つぶやく。

ポツンと。闇だけしかない一色で支配される空間内に別の黒が輪郭を持つ。

幻影のオレだった。


『ああ。そうだ。

スマホは危険だ。なんだって人は曖昧な情報が大好きな変わった生き物だ。

それが依存に繋がっては喜んで陥るのだからな。

勉強を疎かにしてきた』


幼少はもっと成績はあった。

スマホにのめり込むほど勉学に時間は減っていた。


『睡眠よりもスマホの画面を注視してきた。

意識が内在されないようにさせてしまう。

そんな感覚を。

友達を優先して選んできた。

よく知らないのに情報の画面しか知らないタレントなど発言や行動に大きな反応をした』


痛いところをついてくる。

どうしてこんなにも的確に指摘してくるのか。


『これは夢だからなあ。

だからそんなオレであるオマエに対してズケズケとうんだよ。

わかるだろう?どんな漢字表記か感情とかを

見たくない、

触れたくない、

考えないようにしてきたことを』


そうだ。

やつの言う通りにスマホをのめり込んできた。

オレが友達の約束や時間を軽視するようになってきた罪悪感。

それから逃げてきて……薄れて感じることも減ってきた。

どこか頭が回らなくて夢の中に揺蕩たゆたっている独特なもの。

これも流されるままに聞き入れるしかない。

どんな姿や距離であるのか漠然的にしか頭に浮かばない慇懃無礼もうひとりのオレを〖幻影の自我〗と付けよう。

名乗らなくてもそれがオレの記憶と感情から構成されている。

咎めたいのだろうかオレは……。


『でなければオレはいない。

幻影の自我か、さすがは元々は厨二病だけはある。

なかなかのセンスしていて気に入った。

これからはカッコイイ名称にしてやる。

まあ自分で自身だから、感性は同じなんだけど』


フレンドリーではあるけど言葉の端々からはどこか侮蔑が含めれている。

早く目を覚ましたい。

どうにか目覚める妙案とか浮かばないものか。

でも向かい合って話せる機会がもう二度とないかもしれないレアなケースに起きるのも。

こんな厨二病な展開をしているのに抜け出すのは損するのではないかと考えるオレがいる。


『我ながら厨二病から卒業していない。

スマホを手放せない、止めれないように』


「――それが普通じゃないか!」


『フン。理性よりも感情に屈するオマエには乗り超えない。

ドワーフのお姫様みたいな美少女に向けるものを。

異世界から日本に召喚されたルリアンナに』


「勝手なことを……ペラペラっと。

分かったように言うな!」


『奴にある消極性を見ていたか。しかしオマエは共感したらしいみたいだけど、それは勘違いだ』


「勘違い?」


『そうだ。置かれている今を恐れて変化すること諦めている。

共感して、ドワーフや美少女も相まって知的好奇心に刺激した』


まさかルリアンナのことまで言及してくるのか。

この幻影の自我……ほんとうに聞いているだけでも精神の衛生的によくないのでは?

そう疑いを持ちはじめていくと奴は何もないのに。唐突と『はっはは!』まるで愉快そうに楽しげともとれるようなわらい出した。


『ルリアンナを心配している?

オレと似ている。

あっはは。いいや、違うね。

オマエは新しい自分を彩りを得られる物を見つけたから来ているんだ。そうだろう兄弟?』


なにを勝手なことを並べているんだよ。

それは憶測で、後ろ向きな考えじゃないか。


『オレはオマエ……なのだからなぁ。

ルリアンナにオレの言葉を通じたと分かれば

”さん”で敬称している。

また聴こえないと知ると呼び捨てる。

無意識を具現化した存在が幻影の自我だよ。

認めろ。それが本音ほんねだと』


嘲笑いながらも突き落とすような冷たい言葉。

オレは否定も拒絶どちらも湧かない。

なにも言えず頷くようにしか出来なかった。

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