contact16―煙月4―
風と月からは声もさえぎる。
半壊した
私はいつになれば帰れるか。
胸の内は負の連鎖に絶叫している。
見知らぬ土地から抜け出せるのか月を見上げる。
「煙のようだ。
かすんでいる月……こんなにも心を穏やかになる。静かで眠気になれば否応なく孤独感も濃くなる」
壊して開放的になった風を感じれる場所まで進み出たルリアンナは月を仰ぎ見ていた。
(なんの縁や繋がりまでもない。神は何故こんな
文化や価値観の違う異世界へ飛ばしたのか……。
ここで呼び出した魔術師も私には興味を持ってはいるが……)
こうして立っている今ここが屋上となる。
半開きまで開放的なフロア。
ヒッソリと建てられた建造物。
無人でここを身を潜むには適している。
人目を晒すのは抵抗がある。
ときどき。脱出することだけを費やしていいのか。ヒッソリと暮らしていると還れないのではないか。生きるために食事をして、やり遂げる使命や立場を何もかもが無為に過ぎていくようで虚無感になり。悲観的で打ちひしがれる。
(どうすれば生きれる?
もう脱出するのに気力は減っていく。
戻っても
ここでも魔法は使えることは検証した。
検証を済めばそれだけ可能性は無いと痛感させられて絶望する。
還るべき魔法を発動させる陣の内側から踊る儀式は失敗している。
ここ最近に付きまとうようになった尾張義直を少しでも空中の吹き寄せる風でも浴びたら?
恐怖して逃げていくと予測していたルリアンナだったが食事を誘われたときには意表を突かれていた。
(生まれてから神の便宜を図ってもらうため。
舞うための鍛錬して伝統を学んできた。
このままだと私はッ!?)
「ほう。ここにいたかドワーフの踊り子。
「ッ――!?ドワーフと分かるとは何者だ」
警戒は緩んで沈思して黙考のルリアンナは、不覚を取るとは!内心でそう嘆いて舌打ちする。
足音もなく忍び込んで現れる姿は。
全身を覆う異形性のある者だった。
「これは邪魔をしたか。せっかくの静かな月の下だったようだったようだなぁ。どうも無粋をした。
すまない。
謝ったのだ。多少は落ち着いてもよいではないか」
本来なら関わることも知らないまま世界のここへと呼んだ張本人。
魔術師の末裔、感情を読めない。
とうとうと退屈そうにも話をする。
「気配を消して近づいたことは許せる。
それ以上に私を呼び出して留まらせることは看過はできない」
「ごもっとも。正当な怒りに対して帰還してもらうために我も世界をまたぐだけの転移を探いている。
猛省している。いずれ還す」
「謝罪はもう聞き飽きた。
お前も発見はしていないのだな」
「不甲斐ない限りだよ。
さてもう一人の件だが」
「あの奔放人のことなら。ここへ一度も戻ってきていないぞ」
「金髪の少女をさがしているが、そっちでは無い。
あそこに寝ている少年のことだドワーフ。
驚いたぞ。男を連れ込んでいたとは」
親指だけを立てて魔術師の末裔が淡白な声。
その男と言うのは指している方に尾張義直が残骸にならなかった壁にもたれて安眠していることについて、ルリアンナは苦笑した。
佇んで応えるのを待つローブの魔術師。
ルリアンナは、どんな顔をしているか窺えれないが想定外な苦笑したことに軽くビックリしている。
もしや泰然とした態度を保っている魔術師の末裔も
人間らしい感情が富んでいるかもしれない。
「違うぞ。あれは勝手に来ているだけだ」
「勝手にか。
もしや少年に
もしそうだとすれば……魔術師の端くれとしては正義感は似合わないが。
それ相応なアクションしないといけなくなる」
一時は緩んでいたのが尾張義直を一瞥。
それから神経を張り詰めさせる威圧的な言葉をおし掛けてくる。
手を広げてルリアンナに向けるのは、即時に返答次第には、ためらいなく狙い撃つだろうと確信させるものだった。
「何もしていない。
むしろ出ていって、もらいたいぐらいだ」
「そうか。不振な動きをしていないなら。
もしコチラを害があれば」
「ああ、そういう約束で食事や結界を張っているのだろう。理解している。
でも私だってオワリ・ヨシナオ追い出すつもりだったんだ。
本当に参っているんだ。
夕刻に空が染まれば来るのだ!
それも馴れ馴れしくしてなあ!」
目を大きく開いて感情のまま吐き出したルリアンナにさすがの魔術師の末裔もこれには哀れみを抱かざる得ない。
「そうか。それは……よく堪えてくれた」
感情的になる彼女をなだめてから。
同情してくれた魔術師の末裔に納得してくれたことに安堵しながらも少し情けなくなるものだった。
二人は残された壁のある空間の内部へ歩いて進む。
そこで予想外の件。
有線をしたイヤホンを耳につけて眠る尾張義直の姿を見下ろす。
「音楽系のサブスクリプションでも入っているのか音楽を聴きながら眠っている」
「さぶすく?」
「失敬。無駄話をしたようだ。
では先程の話は真実であるのだな。
魔法や薬などの作用していない、色仕掛けを誘うようなこともしていない。神に誓えるか」
「言ったはずだ。何もしていないと。
神に誓うのは重たいがそうだ」
どこかの中世的な信仰心のあつい。
とくにルリアンナは
神に誓いを告げることは重たい。
異世界を渡ったことの無い魔術師の末裔は、その誓うことに偽りが許されないだけ重たいものと会話して知ったことだった。
「ならば信じるとしよう。
それであの魔法陣はなんだ?」
それに触れてこなかった魔術師の端くれが訊いてきたのは魔法陣。
日がまたぐ数時間の前に。
尾張義直を月が見えにくい空へと転移させて移動する昇降機を指す。
「あれか。転移するための文様と文字を構成させた円形だ。
区切られて構成した質量を持つ。
空間内を別次元へと渡る魔法」
「別次元へと渡される魔法か。
面白し……興味深いものだ」
声をはずませて。
魔術と魔法が体系がまったく異なるからか。高揚感で近づいて歩くのをルリアンナは横目を向ける。
しゃがむと手袋をはずした魔術師の末裔は直で触りだした。
優しくなでても光や音もしない。
「これは魔力の体質があっても扱えれない。
誰でも魂を込められた舞いを捧げないと動かない。
見知らぬ世界へも渡れる
彼女が転移をしたり移動もコントロールするための舞っていた魔法陣。
煙月ノ舞によって操作を可能とさせる。
「なんだって、舞を捧げないとならぬか。
どうやれば起動する?なんとも奇妙で面白いしだ」
「教えても魔術師の末裔では、それは出来ない。
これを応えるのは妖精の血をくんでいるものだけ。
それに月がかすんでいる日により効力を高める」
霞んだ月に、その魔法も通常よりも強くなる。
ルリアンナは煙月の日を迎えた今日を執り行ったのが理由。
「妖精の血だと?だとすればルリアンナ・スティーエルネこれは妖精にしか発現しないのか」
「ええ。そういうことだ。
でも妖精の血をくんでいるのは代を重ねるごとに、薄くなっていく。元々ドワーフは妖精。
妖精の魔法を扱いには人の血も混ざっている私には負担が大きい」
ドワーフはエルフと同じくして妖精であるのは北欧神話から記されている。
とある神が求められし武器を造り上げてみせたことから。ドワーフは鍛冶師のイメージが凝り固まるのだった。
「どうも、そのようだな。
舞うだけでは奇跡は降りては来ない。魔法を起動させる道理を理解できぬが。
負担は大きい様子というのは確からしいようだ」
「どういう、ことだ?」
「よく自分の顔を見てくるがいい。
隠していたメッキが剥がれているぞ。真っ白な顔が
まさかそんな事はとルリアンナはそう口を開こうとして途中でやめる。
白皙の肌をどうやって見破られたのか。
あるいは本当に……。ルリアンナは何も応えないまま走り出して姿見を眺める。
そこに立っているのが見えるのは左半分ほどを褐色肌で表れていたのだった。
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