contact11―異世界から召喚されたら先ずは言語に直面するだろうね7―

並んでベンチに座る。

アイリスから追わず昼食をゆっくりとボッチ飯を食べていこうはすが賑やかな男に捕まる。


「なあ深刻な話をするんだが……アイリスは……

上手くやれているか?クラスに馴染んでいるかな」


「心配なさるなアイリスのお兄ちゃん。

もう以前の問題にはならないはずだ。

なんならクラスのアイドルに降臨している。

もてはやされるぞ」


「はは。持て囃されているのか……それはそれで

心配だ。

今から様子を見に行くか!」


ベンチから立ち上がった成瀬正成。

オレは慌てて彼を止めにかかる。


「まって、待って!オマエが行くと色々と騒がしくなるんだろうが。せっかくの機会なんだ。

もう兄を離れるためにも。

こういうのは放っておくのがいいんだよ」


「それはそれで……なんか落ち着かん。

頼っている方がまだマシだった。

ただ見守るだけなんて」


「そういう年頃なんだよ。

相伴しょうばんあずかった者としては偉そうに助言めいたことしたけど。

まあ成長したんだアイリスは」


コイツもコイツで度を超えるシスコンだ。

まあアイリスとはベクトルやや違うのは家族に対しての愛ってことだけど。

襟裳えりもレーフ高校、まさにそこの屋上でいるのがオレと成瀬正成。

地名から名前になっている学校の屋上は望遠鏡がなんの為にか設置されているのか。

星座部?からの要望なのかまったく知らないが星を観察することが誰でも許されている雰囲気。

確認は取っていないが屋上に訪れては許可なく。

使用してもいいのだと成瀬正成が入学したばかり頃の四月に言っていた。

なので休み時間などでは人が寄ってくる人気スポットなのだが。人払いでもしているのか今日は誰も来ようとはしていない。


「不思議な日もあるんだな。

今日はここまで来ようとはしないなんて、

いつもなら騒がしいほどなのに」


「二年生のほとんどは授業が長引いたと聞いたけど、移動するのも惜しかったじゃないかな。

三年生は受験で一年はもう望遠鏡に飽きてくる時期だからとは思うなぁ」


「その二年生が遅くなっている成瀬正成は、どうして告白されていたんだろうね。

覗くような真似して悪かった」


「気にしなくていいぞ。

朝のホームルームから手伝っていたり、他にもあるからなあ。特別に早く体育が出ていったんだ。

早く片付けたら屋上に呼び出されて今に至る」


この人気者は何かと勤勉だ。

教諭からも信頼されている。

雑務や頼み事などをこなす。よく引き受けては迅速に終わらせて時間が余れば後輩や同級生の面倒をみるからその人望が絶大に厚い。

そのためか。様々な人から過労度しないように気を揉んだりもされているのだろう。


「そうか」


「ああ。まだ時間があるし。

アイリスの古い友達に相談を聞いてやるぞ」


「どうしてそんなことを訊くんだよ」


「なんとなく」


「あっそ。じゃあこれは友達から聞いたんだが。

仮の話だけど……真実味があって。

ドワーフの舞姫がここ、えりも町に召喚されたらしいんだ」


「ドワーフの舞姫だって!?おいおい、ドワーフを召喚って凄い場面に出くわしたなあ」


「なにかの比喩だと思うぞ。たとえ!」


例えといえば荒唐無稽なものに装飾して大袈裟にしていると解釈してくれるだろう。とは思ったが「そうか。ドワーフに会ったのか。それで」と続きをどうも促してくる。

このワクワクしたような顔つき、どうも誇張とか

絵空事とか思わずにいて信じているようだな。


「義直はドワーフに会ったんだな。

舞姫ってことは女の子だとして可愛いかったらしいと見たぜ」


「どうしてそうなるんだァァァーーッ!?」


やや解釈が飛躍しすぎてコチラが困惑したわ。

にしても笑わずに真面目に聞くなんてなぁ。

デタラメなほどの愚直さがモテる秘訣なんだろう。

オレは「少し話が長くなるが」と前置きをいれてから立ち上がって手すりの近くまで歩く。

背後から成瀬正成「よっこいしょ」とベンチから腰を上げて隣の手すりに近づいて学校の外を見渡す。

立ち木が並んでいて花が咲いているのもあり自然が豊かに囲まれている。

そんな自然の中で生活の営みのために切り開かれた道路が見下ろせる。


「――翻訳アイテムが切れて言葉が通じないことでいいのか義直?」


オレは頷いて肯定する。

全部まで語るのはルリアンナのプライバシーとかあって一部は伏せておいた。

あらかた説明を終えると成瀬正成は難しい顔をして口を元を手で覆いながら考え事をする。


「そういうわけだ。

ドワーフを打ち解ける秘訣とか無いかな。困っていることを聞いてあげたいんだけど言語が」


「そりゃあ。

異世界に召喚されたらずは言語に直面するだろうね。それなら感情で話してみることだ」


まだ右も左さえも分からないであろう異界から望まずにして飛ばされたドワーフ。

そんな彼女に成瀬正成は、さも簡単にいうがそれは既に試して上手くいかなったのだ。


「イモーションはした。でも……」


「根気よく。ダメでも何度でもやるんだ。

それが根気だろう!

こんどはもっと感情的にやってみればどうだ」


根気よくか。

とにかく様々なものを試しては手法を変えることばかりしてきた。

ここで粘り強く、それに伝えることの根本的な

感情がこれ以上にないほど。

もっとも伝わりやすいと聞く。

ならまたやり直してみる価値はあるか。

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