contact7―異世界から召喚されたら先ず言語に直面するだろうね3―

ルリアンナに忠告。

あれから少しだけ日は経つ。

体育館の倉庫。


「……雨か」


この日はよく雨が降っていた。

窓越しから雨の線がみえる。

中に閉じ込めないよう対策してなのか知らない。

マットを積み重ねた上に腰掛けて過去を振り返る。

どこか進展を望めないまま諦めた顔をしたルリアンナは『二度とここへ来るのではないぞ人間よ』そう……言っていた。


「知らないことが多すぎるんだよ。

魔術師の末裔は何のためにルリアンナ、、、、、を日本に召喚したんだっ!

それにオレもどうして気になっているんだよ」


モヤモヤして晴れないまま。

彼女がまだドワーフかさえも怪しい。その証拠となる物的に示すものは無い。

疑ってはいるけど、会話を試みて嘘をつくような人ではないと感じた。


「もし嘘ならあんな芝居するはずが無い。

あれだけの複雑な感情をしたのが今でも鮮明に思い出せる。

毅然としていた……助けを求めないで」


だいそれた嘘なら利己的な一面を露わにする。

そして赤い髪。あんなツヤやかで透き通った緋色ひいろは見たことがない。


「そういや会話していたと言っていたなぁ。

ルリアンナは魔術師の末裔とッ!

でもなんの会話を……?」



明確な動機は不明。

以前に口にしたルリアンナを信じるなら知的好奇心が動機だと。

でもそれは説得力のある魔術師の末裔が嘘ついた

なら?これはミスリードだな。

かえって間違った方向へと考えを、推理させるための偽りの判断材料。

でもどれだけ追想ついそうしたって。


「会わなきゃ意味がない」


えりも町でこんな非現実が身近にあることに未だにオレは信じれていない。だって異世界があることに驚いて思考はそこから先を進むことを放棄しているんだ。

えりも町ファンタジー。

こうした特別な場面にオレのような便宜的に普通の高校生としよう。

取り柄はあっても上は山ほどいる高校生が可憐なドワーフに目的が不明の魔術師の末裔がいる中へ

飛び込むのは分不相応。

舞台に立つには役者でもないオレが飛び込めば好転するとは思えない。


「周辺に起きたイベントをたまたま目に見れただけで満足しないとなあ!

なんだってドワーフの美少女なんて早々お目にかかれないんだから……でもいいのかオレはこれで」


あれから気にって仕方ない。

灯りを消した部屋でスマホを触って眠りに付けない時間は検索しまくる。

こんな珍事件がオレと同じく体験した事ないかを。

魔術師の末裔がどうしてそんな事するか近づくために魔術師を調べたりした。

ついでにドワーフも。

けど何も分からずじまいだ。

ドワーフは民間伝承や北欧神話、それに娯楽でイメージが固定化した指輪物語や白雪姫らしい。

ここはルリアンナの主人公が現れるのを願って、部外者は入らないようにするか。そう結論すると音が軋む音。

顔を開ければ扉が開く。向かいの位置から目が合うのは無邪気な高校生アイリスである。


「おっ!ここにいたか義直」


「……アイリスか」


「せっかくカワイイ彼女が探しているというのに

存外な扱いだよ。

それでなにを悩んでいるのかな」


「悩んでいねぇ」


物思いになっているところでアイリスに発見されてドアを閉めて倉庫の中へ入る。

そしてマットの上で隣に腰掛けた。

眉根を下げて顔を覗いたアイリスから目を逸らす。


「これでも友達で幼馴染でしょう。

高校ライフは始まってから短い、ちょっとした悩みとか愚痴とか聞いてあげるからさぁ!」


このときのオレは少し誰かに頼りたかったと後になってそう思った。


「これはオレの知り合いなんだけど……故郷を帰りたくても帰れない若い女性がいる。

手を伸ばそうとしても無理して諦めて強がるんだ。

どうすればいいと思う?」


「えっ、もしかして義直のカノジョだよね!?

きゃあぁぁーーッ。

アオハルだぁぁ!

マジもんの恋バナ来たあァァァーー!!」


「さ、騒ぐなよアイリス。

あとオレ彼女なんかいない」


「照れなくて、いいって。

そんなのやる事は一つだけ……ガンガン攻める!」


右手を拳を作ると、それを胸の前であげてテンション高めに助言をしてきた。


「よし、相談する相手まちがえた。

アイリス友達を作りにいきなさい。オマエのルックスと笑顔を振りまけば、すぐだから」


「間違えていませーん。それに友達は、ゆっくり築けたらいいし。

いいかな?彼女は寂しいんだよ」


「さびしい?」


「うん!だって故郷を帰れない諸事情があって、

諦めている。けど、それを話すのは頼ろうとしているからだよ」


「あっ、そうか。見知らぬ土地なら誰でもそうなるはずだから」


「えへへ参考になったか!」


「ああ。ありがとうアイリス」


まさか素直に頷いていると思っていなかったのか、アイリスは目を大きく見開いていた。そこまでビックリすることか。

ここで次の授業を報せる電子の鈴がここまで鳴り響てきた。


「それじゃあ。行くぞ義直!

位置について、よーいドン」


「走るのかよ」


気分屋にも程があるぞ。

体育館の倉庫を開けるのは、なかなかシュール。

釣れないオレに頬を膨らませるアイリスは振り返って手を振ってくる。


「今すぐ行くよ」


「体育だから、わたしは先に行くからねぇ」


いきなりの競走は中止に流れとなりアイリスは手を振って去っていた。

ルリアンナは心のどこかで誰を頼ろうとしていたのかは憶測に過ぎないだろう。

でもそれしか思えないうれえた表情していた。


「ルリアンナ!

頼れるものいないならオレが手を伸ばしてやるぞ」


オレは帰宅部だから授業が終われば一直線で向かっていける。

自分に奮い立たせて、そのまま教室へ急ぐ。

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