contact5―異世界から召喚されたら先ず言語で直面するだろうね―

昨日は色々とあった。

なにか良い言葉を求めようとして。

特定されないようネットのチャンネルで相談を持ちかける。

怪しい関西弁やコミカルな口調で相談を聞いた側は漫画や小説のような虚言だと信じてくれなかった。

それに最後になるフレンドとの遊びに関しても心残りがある別れになってしまった。

――昨夜でのこと。

オレが逃げ遅れているのを心配していた姫路輝政たちは廃ビルの外に出ていていたようだ。

オレが出ていてから敷地を抜けたところで彼ら三人は発見してオレに駆け寄る。


『心配したぞ!?平気なのか。

何もされていないか義直』


お化けのことよりも身を案じてくれた。

ルリアンナの対話から。

得られたものは闇の霧から歩いてきたロープの男は魔術師の末裔。

霧から逃げ切った三人に中で散々なにがあったのか、怪我は無いのかと質問を浴びせてきた。

ここで彼女のことを言うべきか迷いがあったものの

根が良心的でオレなんかよりも人柄は完成的。


『ドワーフがいた』


信頼に値すると省いた一言だけの説明に。

笑われてしまった。

しかしそれは嘲笑ではなくて。

親和性のある笑いであった。

ともあれ心配かけて偽りを言いたくはなかった。

信じてくれないのは分かっていたし嘘だと思われても『怪我ないなら別にいいよ。

本当でもウソであってもさあ』と快活な笑みを浮かべてそう言った。

そしてバス停まで見送ることにした。

バスが到着すると別れ際になって熊本清正は泣く。


『もう、会えないとか……水臭いことを言うんじゃねぇぞ!

たとえ高校が別で離れようが!だとしてもだ。

この絆は永遠だ!

思い出は友なら、連絡もなかなか取れなくても友だ。うぉぉーーッ』


うぉーん、うぉーん。

この擬音語が頭に出てくるほどの熱量が感じさせる決別だった。

次に清正の肩を回そうとして身長差で手が届かない仙台政宗は断念して右肩を叩く。


『これもダークネスな聖戦から帰還した者の運命さだめ

共闘はしてもいずれ道は違え日がある。

しかし心に刻めよヨシナオ!いずれ約束した日は、終わる。あらゆる秩序には絶対なる維持がないように契りには絶対はないのだからなぁ』


よくそんな即興でこんな言葉を言えるものだ。

オレは頬を引きつらせたまま笑顔を作って手を振って別れる。

発作していた頃にある過去の暗黒だった歴史がまたうずきそうになる。


『まあ。コイツらも名残惜しいんだよ。

俺は別だけどなぁ。

でもこれが最後とか勝手に今日にするなよ義直』


『輝政……ああ、そうだな』


『また連絡する。えりも町なんか近いわ。じゃあ』


『ああ。じゃあなあ輝政』


先に熱い別れをぶつけてきた二人の後だと

クールダウンするか姫路輝政。

でも温かい気持ちは伝わった。

バスが出発してオレは見えなくなるまで闇夜に走っていく一台を見えなくなるまで手を振る。


『えりも町は近くても毎回なると遠いぞ』


そして後ろ髪を引かれるまま帰路に就く。

再会を約束しながら今日で終わる。

未練を残しながらレジャー施設やゲームしたりする時間を共有するのは、これで終わりだ。

なにも別れを告げることが断念ではない。

約束しながら叶えないまま緩かに断つこともある。

――長く想起に浸かっていた。

現在。

えりも町にある一年の教室。

中学時代までも想起させられる昨日をまだ

名残惜しくある。

けどこれも徐々に想起するだけになるだろう。

スマホでもしよう。


「おーい、スマホ眺めてばかりで何が楽しいんだ?

わたしの声が聞こえないのか……」


センチメンタルになろうがお構いなし。

席からここへ寄ってきたのだろうは見なくとも想像がつく。

上から声をかける元気な声調。

かてて加えてセリフの順序を替えさせて昨日を再現みたいだ。


「アイリスか。

わるいが相手はできない。ごらんの通り忙しい」


「いやいや、無理があるでしょう。

スクリーンタイムしていてヒマそうでしょう。

雑な嘘をつくなぁ義直は」


「それで何の用だ。

こんなスクールカースト底辺なザコなオレ様と話をしているのも同じ生徒から変な噂が流れるぞ。

クラスの貴族だって意識を持つべきだアイリス」


「クラスに貴族がいるものかあっ!!

あと変な噂は気にしないって言わなかったけ?」


「記憶にはございません」


「記憶喪失キャラをするなッ!

んなァーーッ!くだらない時間を消化したくない。

ほら、もう行くよ」


こんな戯言ざれごとには付き合いきれん!

っと言わんばかりに強硬たる手段を取ってきた。

それは腕をつかんで無理やり動かそうとしてきた。

周囲がザワつくだろうと気にしたが反応は……

黄色い声が多かった。「きゃあーーアイリスが攻めてきたわ」「大胆とは思っていたが、人気ひとけのないところで勝負かけるつもりだね。

恋愛シミレーションゲームを鍛えられて百戦錬磨。

この観察眼から王道パターンよ」「なるほど。

では明日は新たなる美男美女のカップルが出来たと特ネタとして載せるとするか」ほら!

見なさいアイリスくん。

こんな好き放題と言っておるでは無いか。

男子サイドはやたらと静かだなと一瞥いちべつすれば男泣きしていた。「くうぅ、こんな

イケメンの何がいいんだアイリスゥゥゥーー!」まるで親しく叫んでいますがメガネくんオレは知っているよ。アイリスに挨拶された反応しどろもどろ対応をね。「えっ、お、おぉ、おはようございます!」っといしにえかくやオタクの反応を。

いや古のオタクでも典型的なオタクでも動転するのは漫画やドラマの中だけか。

混沌となる教室には歯牙にもかけないアイリス。

うん、評価のアクセサリーを飾ること無意味と思うところは男らしい奴だぜアイリス。

オレを引き離されて連れて行かれたのは空き教室。

いわゆる過去に使われていた教室で今はただの置物みたいになっている場所だ。


「なんだよ。教室で相談が出来ないことか」


「さあ、食べるわよ」


「食べるって?」


「お弁当よ。ほらそのために運んできたのだから。

予鈴がなる前に片付けるわよ。いいわねぇ」


しまい込んでいたはずの机が中心に寄せている。

感覚を開けない。

くっ付けている机の上には弁当。

わざわざアイリスが運んだことに疑問をオレはもう抱くことは無い。

何故たかだか弁当を先に運んでいくか。

手伝うならオレを誘うがてらでもさせればいいし、一人でも同時にするのに運べない重量では無い二人分なら。

だけどもし健啖家けんたんか(食いしん坊)がいれば話は変わってくる。


「今日もこんなに……食べるつもりなのか。

三段の重箱が三つ。

アイリスのお兄ちゃん頑張りすぎでしょう」


「お兄ちゃんが愛情を込められているからね。

わたしが普通の子よりも多く食するからと張り切ってくれたのよ。

よーし、すべてたいらせげるわ。

ついでに義直は小さな箱ね」


渡されたのは弁当。

フタを開けると量はある。

男性高校生ならこれで満足するだろうボリュームのある弁当サイズ。


「これが小さな箱ね……ははっ」


これだけ食べるだけの生活ライフでもスタイルは整っている。

基礎代謝があまりにも高いのか。

アイリスがいないのも不思議この上ない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る