contact4―奇しき巡り合わせ4―

唯一の無二である想い。

変化をもたらせば心に響いていた感動や目指すことの熱意。

固有たるこだわりまで失ってしまうのではと思ったからこそ性質的な変化を嫌う。

それに美しいとあのときに感じた想いまで変わりたくないから。


「……んぅ?」


「起きる!?」


どれだけ見惚れていたか。

女神にも匹敵するまである容貌の優れた少女は、

ゆっくりっと目を開ける。

柱にもたれていた赤い髪の一房ひとふさが肩に掛かっているのを少し揺らして目覚める。


「…………」


「あっ、どうも。こんばんは……では起きたばかりでありませんね。おはようございます?」


どうしてそこで疑問形で返すんだオレよ。

ほら口を開けてポカンとなっているではないか。


「……………ニィヒャル」


「はい?にいひゃる」


「ドムカライヤ!イィヒャサラ……ダウワ!!」


異国の人であろうか。

座り込んで眠っていた少女はゆっくりと立ち上がると柱から少し離れて置いていた剣を手にする。

鞘から抜く。

そして髪に負けないほど鮮やかな深紅の剣を構えて向けた。

あれ、これ本物でしょうか。


「これ、なんてソシャゲ?」


スマホやパソコンなどで遊べるバトルも恋愛パートもあるソーシャルゲームみたいな現実離れした

彩りのある姿だった。


「リニャガルディ!」


腕を後ろに引くと、横へ滑るように一閃。

尋常じゃない風圧がこちらに襲い肌が斬れたような痛みを訴える。髪も何本か落ちているの走馬灯のようにスローモーション。


「う、うわぁーーっ!?ほ、本物だ……コレ……」


その脅威に認識。

全身が強張ってしまい身体がうまく動けずに尻もちをつく。

命の危機だ。

危惧するべき事態なのに赤い少女の目にあるのは、敵に向ける絶対的な冷気。

こんな時なのに……オレは一部が半壊して射し込まれる月のほのかな光に照らされる美しい赤い髪とのコントラストの明暗に目を奪われていた。

踊り子の衣装でありながらも露出は少なめで気品を感じさせる。


「シアマ」


「綺麗だ」


彼女そのものが宝石だ。肌は粉雪だと欺かれるほどの白くて、なだらかな肩、均整の取れた手足。

山なりの胸部にスラリとした体型が曲線を描く。

すずしく心の奥を波打つような佳人。


「ラーク、シアマ!」


「怪しいものじゃない!敵対するつもりは無いですし、すぐに去りたいところですけど腰が抜けてしまって動けないんですよ」


「ラーク、シアマ!」


なんとなく出ていけ!なのか理解したけれどオレの言葉が通じずに途方に暮れている気持ちになる。

スマホの通訳アプリでも役に立つか分からない。

いい手立てが無いとなれば会話が困難であると惹き付けるものが必要となりポケットやカバンを探っていると怪しいロープからいただいた飴玉。

これでも舐めて頭を冴えらせるか。

甘いものは頭の回転には良いとよくいうし。


「こうやって威圧的に睨まれてしまうと怖くて動けないのですけど……言葉が通じる訳が無いか」


手を動かしたりして試みるが反応は薄い。


「そうか。なら剣を下ろしてやる。

すぐに立ち去れ」


「こ、言葉が通じたっ!?

いや言語までいきなり日本語になっているのだけどぉぉぉーーッ」


「……こちらも驚いたぞヒューマン。

どういうことだ。

なぜ言葉が、なにか魔法でも使用したのか。

分かるのなら説明をしてもらうぞ」


つい先程まで別世界の言葉であったはずだ。

それが不便なく話せることに。

オレと彼女も困惑を顕にせざるにえないのだった。

――さて対談だ。

比喩ひゆなしで話し合いの席に着くことになり信用してもらうために来た経緯けいいを説明した。


「……それは現地の異変がないか調査なのか。

そうは思いたいが寸止めしても反撃ないことからして察するに。

武装も無いことから所からそうなのだろう」


おとなしく聴取者となる美少女。

でも説明を聞いていくうちに、ときどき難しいそうな顔したり時偶ときたまに頭を抱えるなどしていたけど。


「あっ、はい。もし遭遇したらネタにするなり、

恐怖も楽しもうと考えていました……はい」


「考えられん……私たちの世界では生きるか死ぬかの瀬戸際でいるのが世界でいる。

それに飴玉を食べてからと思ったが魔術師の末裔まつえいから貰った物なのか」


「あはは……って、ええぇぇーー!!

いきなり言葉が通じれるようになったのって……

女の子みたい悲鳴を上げていて渋い声をしたロープの男がッ!?」


対座の位置にいる彼女から聞きなれぬ言葉がして

オレは今日この日でもしかしたら一番に驚愕きょうがくさせられたかもしれない。

いや、赤い美少女もさることながら驚愕の対象ではあるけれど現実で魔術師が存在していたことには比較にはならない。

あの独歩どっぽした魔術師を去った道を、

つまりは入り口の先に続いている廊下を見ても何も無いのは分かりながら警戒する。


「関係者では無いのは理解した。

それで目的は非日常を体験したくて来た……

この認識で当たっているのかしら」


「あっ、はい!そうです。

それが肝試しですから……はい」


警戒心は解いてくれたのは良かったものの目的を話してからは明らかに闖入者ちんにゅうしやから奇行する痛い人に向けるソレだった。

尻が痛くなってきた。座っているテーブルはこの中ではマシなほうの古びれて足の一部が欠けている。


せないままだが目的を達成したなら後は出ていくといい」


「あのこちらも質問してよろしいですか」


「構わぬヒューマン。

誠実に応えてくれたから私も応える義務はある。

しかし表面上の範囲になるが」


問い掛けることを許してくれたが話せる範囲までと

彼女は断言した。

やや背が高くいから腕を組むと威風を感じれるけど華奢なため、どうしても可愛さが前方に出ている。


「それじゃあ最初の質問はヒューマンと種族で呼んでいたのですがもしかして違う種族なのですか?」


「私がヒューマンではない問いなら…………

ああ、そうだ。

私はドワーフ。そして神に勝利の祈願や願いを伝えるために舞いを捧げる一族になる」


「ドワーフ……あのドワーフなのか?」


耳は長くはないから天使とか名乗るものだとは予想はしていたが期待はハズレた。

よもや屈強なイメージの強い種族であったとは。

ゲームやアニメなどの創作イメージになるのは武器や防具や道具などを造ることには種族の中では群を抜いて優れていて頑固者。

細かいことは気にせず大らかが大半がそうなっているが対面する彼女からはどれも当てはまらないような気がした。


「ずいぶんと驚かれているようだが。

それ程めずらしいのかドワーフは」


「はい。なんだって創作モノですからね。

でも知っている知識と違いがあるといいますか」


「うむ?そうなのか」


「はい。そうなのです」


頑固者だけは少し話を交えただけでは判断は出来ないが細かい事を質問するし、手を口元に当てて考えることとか。

そして奇をてらう創作物のドワーフでも、

典型的な思い描いたドワーフと一つだけ一致しては共通する点があるのは、背丈が小さい点だ。

男性だけは大きい設定もあるが個体差とかもある。

そこから根拠にするなら目の前にいるドワーフ、

自称しているとはいえ本人の前で言っては駄目なのだけどドワーフらしくない。


「これで質問は終わりでいいのか?」


「いや、他にも。

お名前をお伺ってもよろしいでしょうか?」


「そうだったなぁ。名を言ってなかったか。

だが名乗らないまま尋ねること……この異世界では常識で無礼にはならないのか」


たぶん怒ってはいないだろうけど。

目を鋭くなりどこか試すような声音だった。


「マジでそうでした!?

オレは尾張義直といいます」


「オワリ・ヨシナオか。

私はルリアンナ・スティーエルネ。

スティーエルネの一族は代々から神の前で踊ることを義務付けされており捧げている。

そしてお言葉を伝えたりもする。

恩恵を賜ることも役割とするが……私はまだ姉のようにいかないがこれでも巫覡ふげきだ」


なんだか難しい言葉が出てきたが神に仕えて人々に神の言葉を伝えることの職業にしておこう。

彼女……もといルリアンナ・スティーエルネの言からは重要な役職を引き継がれる一族になるわけか。


「おーい、義直!」


遠方から耳に入ってくるのは姫路輝政がオレを叫んで呼ぶ声。

そろそろ夜も深くなっていき帰宅するバスも利用するのが厳しくなってくる。

心配している元友人らを合流しないと。

それにこの場面を見られるのも得策ではないし。


「まずい!あの下にはオレを探している友人がいまして。

ここで合わせると面倒になります。今日はこれで!あの、また来ます。望むものがありましたら明日にまで考えてください」


目撃されればアウトだ。

素早く立ち上がってカバンを手にして出入り口に向かおうとして別れを告げて行く。


「待って欲しい」


「まだ何か」


彼女も立ち上がって緩やかな歩行で近づいていく。

オレの前まで歩んで足を止めると言葉を続ける。

別れようとして引き止めるのは理由はなんだろう。


「私が望むのは一つだけ。ここにはみ込まないことを約束してほしい」


「えっ、ここには来ないでくれっと言うのですか」


のぞんできたのは不干渉。

もう関わるなとドワーフのルリアンナはそう言葉にした。


「ここへ望んで来たのでは無い」


これはオレに向けたものではなく。

おそらく魔術師か理不尽な境遇を与えた神に対して訴えたものだろうか。


「だとしても困っているじゃないですか。

ここへ住み着いていると思うけど、話し合いにならいつでもなりますよ」


「そうか。……情けないがそれに甘んじて受けいれるしか無い。

私が生きるすべは無い……身体で払うことも」


高貴な踊りの衣装である脱ごうとした。

白い肩が覗いたところでオレは手を伸ばしてそれ以上の行為を止める。


「わ、わぁ!?分かりましたから。

いえ、全然どういうことか分かりませんよ。

とりあえず自分を大切にして!」


「そう、だな」


毅然とした振る舞いがどこへやら。

あの強気でいた表情は今やかげりゆくように染まっていて掛ける言葉が見つからない。

もう何日いや何年になるのか。

ここへ住み着いていてから。どうやって生活したのかは存じない。

糊口ここうしのぐのも困難なほど境遇にあるのか。


「また明日には来ます。それじゃあ」


「待ってくれ。見苦しいところをみせた。

それと引っかかりさせようと駆け引きしたこと謝らせてもらいたい。

すまなかった」


「はぁ!?駆け引きあったのですか……。

うん、まあ別に悪いこと無かったですし。

いいかですよ。ではまた明日」


最後には謝られたことにオレは戸惑いながらも快活に応えた。

それが元気付けるとは思えないが。

あの美しいルリアンナも精神的に病むほど苦しんでいたのだろう。

でも性交渉をうまく運べたのでは後悔はあったけれど、その悔やみは明日には消える。

ドワーフと名乗るルリアンナ・スティーエルネ、

どこかデジャブを感じた。

それを感じ取れるのは。


(人が変われることを簡単にはいかないと結論に至った諦念)


まるで諦めて何がなんでも助けを求めた急な行動。もし関わらないとなれば、いずれあの闇は膨大ぼうだいしていくのを感じた。


(それから変わることの現実と理想の違いに苛まれて苦しんで目標へ向けて励むことの恐怖)


あの頼みは勇気とは違う。

理想を手にするための目標を立てずにいる流れに身を置くだけでいる。

いずれくる時流や運命の出来事をただ流されるまま求めるしか知らない者。


(それと環境が目まぐるしく変わっていく未知に対する色が恐怖と見た。

けどそれに自分だけはそれに染まらないよう自己を変化を拒みながらも受け入れている)


無自覚にその抱える問題を立ち向かおうとせず

生活の循環として受け入れて明日を迎えようとする

準備を進める。

それは呪いの指環ゆびわをいつまでも付けたまま手放すことを選択に捨てた考え。


(なによりも似すぎている……誰か”さん”と。

自分を証明する固有たるこだわり!

それを大切して拒まない自分がいる)


まるでオレのようだった。

変わることに極度に恐れて現状にいることを望んでいる矛盾のかたまりがルリアンナとオレは

あまりにも重ねて見えてならない。

酷似こくじしたものと向き合うのは苦手だ。

いや自己嫌悪というべきか。

ともあれオレはそれを確認したく明日にも会おうと決めた。

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