contact2―奇しき巡り合わせ2―

変わるなら目標へ向けて励む。

嫌いな現実の自分を決別して望む理想へと。

けどそれは並ならぬ決意と行動力があってこそ。

常人にはそう簡単にはいかない。

人物像を目指そうと走っても理想には近づけない。

たとえ成功しても、成否は関係なくて。

抱えるものをどれか折れて諦めて見えなかった嫌いな部分だけが新しく抱える結果になる。


(どうしてそれで胸を張れるのか)


えりも町。

北海道にある地名で当南端とうなんたんの位置にしている。


「それとなんて都合が良いのやら。

ここ、オレが生まれてから住んでいる場所にロボット開発があったなんて。

灯台もと暗しってよく言ったものだよ」


歩きスマホしながら独り言をつぶやく。

誰へもなく掛けた声は画面の向こう側と思われて訝しむことはない。

それよりも咎めるような冷ややかな目を浴びているけどね。


「ハチ公みたいな銅像があればなぁ。

消極的に待ち合わせは……駅になる」


えりも町の中心部には駅がある。いや、あったなのが適当だろう。

産まれる前にはバス停となっており今は簡素な建物が佇んでいるらしい。

なにせ走っていたのが信じられない世代だから。


「……ゲームでもして時間を潰そう」


移動している間はSNSを流し見。

もうやることは怠慢に今日の分をこなして経験値を稼ぐだけゲームだけ。

ややあって日が暮れたところでバスが来た。

降りてきたのは元友達の三人。


「そこにいるのは尾張……義直か。

やっぱり義直か。

ハハ、ずいぶんと見違えたぞ。

似合っているなぁ進学校は」


このハキハキした白髪ショートの高校生は元友達。


「久しぶり姫路輝政ひめじてるまさ

でもなんだよ。オマエはいつからオレの親戚オジサンになったんだ?」


「はい?わるいけど親戚では無いじゃないか。

ボクと同い年なんだわけで」


「そうじゃなくって!これただの軽口だよ。

まったく天然なのは変わらない」


「そうか?でもよく指摘されるなら感覚が他よりも相違あるものか」


なにやら自覚しているようで手をアゴに触れながら頷いている。

そしてこの中でラインで肝試しに行かないか誘いを寄越してきたの姫路輝政になる。


「ほほーう、ひさしく会わないうちに英智の波動はどうがピンピンと感じてくるぞ。

くっく、やはりか。お主オワリ・ヨシナオだな」


「うん。仙台政宗せんだいまさむねくん。

このやり取りしなくても輝政と話を聞いていて知っているよね」


「なんだ釣れぬことをうではないか。

我とはよく世界の終焉ラグナロクに戦い抜けてきたではないか。

あの頃の反骨心はどこへ行ったのだ」


「その暗黒の記憶を掘り下げないでくれ。

もう卒業した。

スルトの炎は遠い過去の彼方に消えたのさあ」


おとなしく会話を終えてから次は我のターンだと意気揚々になる仙台政宗。

もう厨二病をやるには精神的に進んでしまったのだ。すまぬ政宗くん。

まだ疾患しっかんしている彼の背丈は健常な十代であるが十三から十九ティーンエイジャーから小さい。身長は159センチ。


「ああ。そうだな。

失われたロストジャッジメントから創造されて

反逆の学校。すべからく平穏を求めて卒業するか。

この見えなくなった右目もうずく」


「もしかしたら誤用かるからツッコミするけど。

言っておくことはすべからくは、やるんじゃない!やらないといけないこと。

成すべきことだけど当然でも使われる」


「えっ?そうなの」


そこは素に戻るところ変わらないのだな政宗くん。

それと右目が白濁はくだくして失明しているからそこはデリケートなので安易に言えない。


「帰宅もあるから仙台その辺しろ。

今度は俺にも話をさせてもらうぞ」


ややあって会話を傍観していた高身長の金髪イケメンが手を伸ばして政宗くんの肩を置いた。

気安くかけるだけの友好が感じ取れる。


「んあっ?

ああ、熊本清正くまもときよまさでも話すのは手短めにだぞ。夕刻の世界が闇に包まれる前に終わらせろ」


「ああ」


もう雑に返事をしているよね清正。

虎にも負けないようなものが放っており緩やかな動作で近づく。

そして手を拳にして前に突きつける。

これに呼応するようにオレも拳を作って軽くぶつけて挨拶をとる。


「まさかオマエが本当に来るなんてなぁ。

こういう挨拶するの好きだよな清正は」


「それに応える方も大概だとは思うがなぁ。

肝試しはついでだ。それにアイリスのことも気になるというか。

もしかしたら機会があるとか……女々めめしくて未練タレタレな理由だ。

お前に会っておきたい情けない動機なんだぜぇ」


「らしくないことを言う清正。

まだ二年前に振られたこと引きずっているのか。

いや想いが消えないからか」


「あ、ああ。もし不快だったら殴ってくれ。

お前はアイリスのこと好きなのか」


「またそれか。何度も言うが幼馴染にそういう

感情は持てないだよ。

恋愛のドキドキは期間限定であってだな。

身近なアイリスにはそんな感情はない」


「そうなのか。

それを聞けて安心した。もしかしたら気が変わった可能性があるかもしれなかった。

これで心置き無くアタックできるものだ」


「言っておくがアイリスはやめておけ。

アイリスは、もう好きな人しか目がない乙女にいるから諦めろ」


「……そうなのか」


分かりやすいほど肩を落として落ち込んでいる。

まあ、極度のブラコンなんかと伝えたら立ち直るから事実は言わないでおこう。

また恋があるさぁと心の中で励ましておいてから

視線を姫路輝政を向けると彼は、かつて電車駅を

仰いで眺めている。


「にしてもバス停にしては電車のような」


「元々は電車が通っていたから、その名残りとか

残っているじゃねぇのかな。

難しくなって、いりも町のシンボル見たいな

バス停の留所になったわけで。

それよりも帰宅するなら早く行かないか?」


「それもそうだな。

よし!二人ともいくぞ」


すると身長差が開いているコンビは快く返事する。

進学してからは学校は別々となり次第に距離があいてしまった。

ただ学校という場があったから顔を合わせて話が弾んだ。連絡を教えてからも休みの日は遊びに行っても学校のように弾まなかった。

あれ以降から外で遊びにいくこと無くなった。

そうなると学校が変われば必然的と物理的に離れたら交友する理由が無くなる。

どこか遠慮がちな友情を。

もう継続するには、場がなくなっており終わりを飾るにはちょうどいいだろう。

目的地に向かうまではスマホをいじりながら会話をときどき挟むとしよう。

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