スマホ依存者とドワーフの舞姫
立花戦
contact1―奇しき巡り合わせ―
人はいつでも変われる。
遅いなんてことは無い。
決意して。
そこに努力へと点火すれば変われるのだ。
果たして鼓舞されてそうなのだろうか?
「わたしの声が聞こえないのか……。
おーい!スマホ眺めてばかりで何が楽しいんだ?」
鈴を転がすような
スマホから顔を上げると。
ボブヘアの似合う女子が呆れた顔で座るオレを見下ろしていた。
「ああ。ごめんアイリス」
「うわぁー。いつ見てもその
すこしはマシにならないの」
「ルッキズムだぞ!ソレ」
「はい、はい。
それよりも今日も手を貸してもらいたい」
スマホを手にしたまま見上げる。
放課後で帰るつもりなのかカバンを手にして見下ろして声を掛けてきたのは幼馴染の女の子である。
名前は
「ごめんアイリス。
今日は元友達に誘われているんだ」
机の前をたたずんで見下ろすアイリスは信じられないといった
「と、友達がいたの……」
「失礼な。いたわ!」
つい関西弁でツッコミいれる。
しかし言葉をしないアイリスは同級生のオレでも
常識の枠を超えた美しさをもつ。
いわゆる美少女。
窓際から射し込む陽光がアイリスをより黒髪に光沢を増す。
ついでに顔は険しくなっている。
「へぇー、ほーん。
そう、そうか。わたしの誘いを偉そうにも断るというのかね
「そこでフルネームだと怖いんだけどアイリス様。このとおり。この埋め合わせをするから」
許しを
「うーん、よし!その無礼を許そうぞ。
されど
埋め合わせを期待しておるぞ」
「ハッハーァ。
寛大な処置をいただき感無量です。
でも具体的な条件を突きつけられると恐怖しかないのですが」
「なにか?」
「いえ。アイリスの心広さに助かりました」
「うむ。苦しゅうないぞよ」
あまりにも区切りが見つからない雑然たる寸劇。
時代劇はこの辺にしてアイリスを断ることは周囲も少なからず聞こえるわけで。
スクールカーストという厳しい格差社会のクラスでの格付けがあり尾張義直はとても低い身分だ。
よって
権力のある地位には逆らえば周囲がどう動くか分からず怖い。
「クソッ。あの七三分けした平凡な黒髪のクセにしてアイリスに気安く話すとはっ!?
でもあのイケメン、無駄に成績は良いから強く出れない」
ほらイケメンと言いながらもアイリスを狙っているメガネから敵意をむき出しだ。
「でっ、吐き出しなさい」
「なんだ。なにを?」
「この流れで
決まっているでしょう!
このわたしよりも優先することよ。
イラ立ってきた。セクハラされたいか」
「お、おい!手を怪しく動かすなぁ。
仮にも美少女なんだぞオマエは。
クソッ、逆セクハラはやめろよ。
いいか。悪質な女性から受けた被害に苦しんでいる男もいるんだぞッ!」
「構えても教えるつもりはないようね。
まったく、なかなか話そうとしないし強情な同級生をもって苦労するよ……ハッ!
もしかして言えないのは彼女なのッ!?」
「ハッ!それこそ彼女が居ないことはオマエだって知っているだろうによ。
教えてもいいけど、大したことないぞ本当に。
元友達からだよ」
操作せず手に持っているだけのスマホ。
上で冷たい眼差しを向けるアイリスに画面を見えるように突き出す。
「なになに、肝試しするから来い……はぁ?
こんなのに優先なんかするわけ。
わたしのデートなんかより?
ねぇ首を絞めてほしいの」
「しめないで。
そんなことよりもデートとか叫ぶなよ。もう手遅れだけど付き合っているとか迷惑だろ」
「はん。構わないわよ好きに
「でも人気を博しているから発言は気をつける。
これでも一応はクラスのアイドル様のアイリス」
「放っておきなさい。どうせ冷めるわ。
わたしは兄ちゃん一筋なのよ。
アイドルとか崇拝されても嬉しくない。
長く男子と話をすれば付き合っていると勝手に広まる人達には気を貼るのは疲れるから放置よ」
おぉー、さすがは威風を体現したかのような女傑
アイリスだ。
手を腰に当てて胸を張ってはいるが。
内容の一筋である相手な実の兄なのだからイバラの道である。
この勇ましさ。
うん、この子ブラコンすぎるわ。
「パチパチ」
「拍手されてもね。
これで放置は決まったわね。
お兄ちゃんを落とすのに協力しなさい」
これで拒絶するもの要素は取り除いていたわよ態度で成瀬アイリスは顔を近づけてくる。
すると一部から黄色い声が上がってはいるけど、
キスはないよ。
恋愛感情では無くアイリスとは友達で。
幼馴染の兄を落とすのにオレがお膳立てをするために連れていこうとしているだけ。
「そらでもいいんだけど中学の友達は、別れる言葉とか用意せずに別々の高校に進んだ」
「ふーん、元友達を選ぶんだ」
「違うよ。今だけは選んで行くだけだ。
そうだな……繋ぎ合わせるだけの友情?
言語化ムズい。なんて無いから静かに自然消滅するのはみえている。
でも友達を終了を告げたいかなって」
「ふーん。つまり自分の中で終わらせてから新しい友達に更新するためことね。
でも会っても時間の無駄じゃない?
もうこうなれば義直の好きな場所へ付き合うわよ」
どのみち関係性は希薄なもの。
これは別に乗らなくても変わらない。
どの関係性でもない通過点にすぎない相手からの誘いは心底どうでもいい。けどモヤモヤ。
ようするにスッキリしないのだ。
「それもいいんだけど。
なんだって肝試しするのがさぁ!聞いてくれよ。
以前にロボット開発していたって会社なんだ。
工場も近くにあるというし」
「はあ?」
「あまりにもコストに経営は破綻。
放置された会社なんだけど、ならロボットも残っているはず。
なら行かない理由はないじゃないか!」
「あー、そう。ここ最近のアニメってロボット作品が再燃しているからね。
その影響。ふーん
呆れたわ。もう好きにすれば」
「おう!そうさせてもらう」
途中あら呆れてしまい、アイリスはまるでハエを払うように出て行けと手を振る。
スマホをカバンに放り込んで教室を出ていく。
「……こんなオレに付き合わなくていいのに」
なんて不合理な選択したのか。
でこれは言い訳にもならないが過去のそれなり仲良かった連中との終わらせる。
キレイに精算したいと考えている。
それにアイリスがオレに密かに向けてくる気遣いをやめてほしい。
もう高校生。
義務教育を終えてから自らの道を踏まないとならないことは多い。
まだ一年生のオレは廊下を走り出す。
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