第27話 クエスト難易度と冒険者ランク

 まぶたを開ける。

 夢をし、朝と対面した。

 時計を見る。今日も、きっちり7時間睡眠である。

 異世界いせかい転移てんいしても、生活リズムはくるわず、そのままだった。


 それは、この世界が地球と同じく、1日24時間で回っているからだろうか?

 明るくなる時間と暗くなる時間にも、たいした差異さいが見られない。

 つまり、日光にっこう影響えいきょうを受けるメラトニンのリズムも、地球時ちきゅうじの生活と大して変わらないということである。


 ――と、睡眠のあれこれを考えながら、僕は布団ふとんからはなれ、ステータス測定用石板そくていようせきばんに手をれた。


 緑色のかりが発光はっこうする。

 現在のステータスが、表示された。



 レベル:1

 H P:4,320,100

 攻撃力:4,320,010

 魔 法:4,320,005

 防御力:4,320,008

 耐 性:4,320,001

 俊敏性:4,320,005

 スキル:睡眠すいみん強化きょうか……1ぷんるごとにぜんステータスが3000上昇じょうしょう。なお、ステータス上昇効果じょうしょうこうか一生永続いっしょうえいぞくされるものとする。



「…………」


 自分で言うのもなんだが、人間のいきを軽くえているのは、るがない事実だな。

 なかなかに、反則級なスキルと桁違けたちがいのステータスがしめされている。ご丁寧ていねいに、7時間分の能力上昇がしっかりと反映はんえいされていた。

 僕は、ここに来てはいけない人間だったのでは? と思えるほどの強さである。


「おはよう、ナオキくん――って、え……?」


 そして、気づいたころにはうしろに、起床きしょうしたばかりのシンシアがいた。

 もっとも、僕のステータス画面を視界しかいれ、眠気ねむけんだ様子だったが……。

 とりあえず、僕は朝の挨拶あいさつを返した。


「おはよう。シンシア」

「な、なななななな……」


 そして、仰天ぎょうてんされる。

 もはや、お約束やくそくの流れとなっていた。

 僕の耳には、そこそこのダメージがはいった。


 ◇


「シンシアちゃんの挑戦ちょうせんしたいクエストは、どれくらいの難易度なんいどのクエストなの?」


 ギルドへ向かっている最中さいちゅう、サラさんがシンシアに、そう聞いてくる。

 シンシアは、質問に答えた。


素材そざい目当めあてのためになるのですが、翼竜観測地点よくりゅうかんそくちてんに行きたいなと思っていて……。なので、私は翼竜討伐よくりゅうとうばつのクエストに挑戦したいです。その、クエスト挑戦者以外は、ることのできない区域くいきになっていると聞いたので……」


 ――翼竜観測地点よくりゅうかんそくちてん


 何だろう? 中学校二年生の男子がこのみそうな、ネーミングセンスの場所名だな。……いや、そうでもないか?

 サラさんは、わずかなおどろきをふくんだ表情となった。


「翼竜討伐……かなりの上級者向けのクエストになるけど、大丈夫だいじょうぶ?」

「は、はい。ナオキくんもいますので」

「それなら安心だけど……でも、シンシアちゃんは知っているよね」

「は、はい。私はCランクの冒険者ぼうけんしゃなので、まだ翼竜討伐クエストの挑戦権ちょうせんけんがありません」

「そうだね。まずは、ランクを上げるところから始めないとね」

「そ、それは頑張がんばります……!」


 …………。

 異世界人いせかいじんであるがゆえに、話の追いつけない僕は、サラさんに声をかけた。


「あの、すみません」

「はい、何でしょう?」

「あの……クエストの挑戦権とか、冒険者のランクとかは、何なのでしょうか?」

「それは――」


 異世界ラノベを読んできた僕には、何となくの想像はできるものの、一応説明をお願いした。

 予想していたものと違う可能性も、普通にあるので。


「冒険者には、ランクという格付かくづけがあるんです。一番下がCランク、そして一番上がSランクです。当然、クエストの挑戦した過去の無いナオキさんとシンシアちゃんは、現在しのCランクの冒険者に当てはまります」

「はい……」

「そして、クエストには難易度というものがあります。低難易度ていなんいどのクエストには挑戦の制限がなく、ランクの低い冒険者でも受けることができるのですが、高難易度こうなんいどのクエストになりますと、いのちの危険性が発生することもあり、クエストに挑戦権という制限がかかります。ちなみに、シンシアちゃんが挑戦したいと言っている翼竜討伐のクエストは、Aランク以上の冒険者でないと、挑戦権が与えられないものになりますね」

「Aランク、ですか?」

「はい、二番目に高いランクです」

「す、すみません! 実力じつりょく不相応ふそうおうのクエストの挑戦をのぞんでいて……!」

「いや、全然気にしなくても大丈夫だ。ようは、まずはAランクまで昇格しょうかくすればいという話だろう」

「う、うん。そうだね。一緒に、上までのぼってこう……!」

「そうだな」

「……若いとは、うらやましいものですね。そういう私も、一応まだ20ですけど」


 そうして僕とシンシアは、まずは低難易度のクエストから手をつけることとなった。


「…………」


 朝日あさひが、地面をす。

 やがて、僕たちはギルドへ到着とうちゃくした。

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