第24話 誰が誰の子供を……

 俺は慌てて外に飛び出し、家に転移した。

 妹たちは店にいたから無人だった。


 俺は自分の姿に戻り、シャツを着てブーツをはいた。

 そしてあらためて、徒歩で店に向かう。


「ただいま。」

「「お兄ちゃん!」」


 妹たちが抱きついてきた。


「ねえ、さっきのはナニかしら。」

「ああ、新しいスキルを覚えた。さっきまで魔界に行ってたんだ。」

「魔界?」

「うん。世界中がダンジョンみたいなところ。王都でトラブルがあって迷い込んじゃったんだ。でも、帰ってこられてよかった。」

「……まあいいわ。おかえり。」

「ただいま。魔界は時間の流れが違ってたんだけど、どれくらいいなかった?」

「三か月よ。」

「ひゃあ、それじゃあ、お客さん怒っちゃうよね。ちょっと行ってくる。」

「待って!」


 シースに抱きつかれてキスされた。

 ポロポロと涙を流している。


「心配かけてごめん。」

「いい。帰ってきてくれたんだから……。」

「それから……、オヤジさんとオフクロさんも見てる……。」

「えっ!」


 シースの耳が真っ赤に染まった。


 俺は、一旦ジュエリーサンドを採りにA2ダンジョンの最下層に転移し、木箱いっぱいに詰めて家に戻った。

 そして適量を袋に入れてA3ダンジョンの地下13階層に転移。

 アークドラゴンを倒して肉屋に戻り解体。

 

 それから、魔界へ転移してサラを連れて町に戻る。

 服屋で採寸してもらい、生地を選んでオーダーする。

 既製品も買い占めた。

 魔界にも子供や色々な体系の人がいた。

 サラが着られなくても、誰かが使うだろう。

 当然、下着もあるだけ購入した。

 おまけはスイーツだ。


 サラを送り返してから、王都のアンヌさんの元に行き、その後の状況を確認する。

 あの時放った”心停止”で半分の黒マントは死んだようだ。

 俺は、魔法局にあった資料をすべて焼却した。

 持ち出された資料があるかもしれないが、今は放置でいいだろう。


 そして王都でも大量の服と布を購入した。

 魔界には綿花もないし、羊もいないため、衣服は基本的に皮なのだ。

 ほかにも、魔界は物を生産する文化が低い。

 サラのところに、色々と届けてあげよう。

 サラからもらった”転移”のスキルは、それだけ途方もない価値を持っていた。



「えっ、これって……。」

「魔界のドラゴンだよ。」


 例のティラノサウルスに似たドラゴンだ。

 サラによれば、こいつが一番旨いらしい。


 血抜きしたあとで、円盤で首と尻尾を落とし、皮を剥いでいく。

 素材の買い手は例によって決まっているらしい。


 まずは首から顎にかけての肉をソテーしていく。


「うん。アークドラゴンの上をいくね。」

「そうね。脂が上品な感じ。」

「次のは脇腹の肉を網焼きで。」

「うん。これも行ける!」


 サラのところには、ドラゴンの血で作ったソースを届けておく。


「ありがとう。魔界では塩とコショウしかないから助かるわ。」

「ねえ、最近太ったんじゃない?」

「や、やーね。そんなことないわよ……。」


 明らかに動揺していた。


 

 生活は安定している。

 スキルは転移以来増えていないが、日々の鍛錬は怠ってない。


 屋根に上って空を見ながら先のことについて考える。

 肉屋の裏手の空地を買い、新しい家も建てた。

 週1回のドラゴン確保とA2ダンジョンで掘り出した鉱石で作った彫刻も好評だ。

 わだつみは、まあ無理に討伐する必要もないので放置している。

 旅の薬師Rは完全に廃業状態で、各町の長には、万能薬が必要なら連絡くれるよう伝えてある。

 まあ、2か月に1本届けているので問題ないとは思う。


 あとは……、胸がチリチリと音を立てた。

 意識の中で何かが伸びてきて、繋がったような、そんな気がする。

 その瞬間、激しい動機を感じ焼けるような焦燥感に襲われた。


 呼吸が荒くなり、手足が震える。

 初めての感覚だった。


 いや、感覚ではない、これは感情だ……。

 胸を焦がす思い……。


 俺はシースを店から連れ出して家に入った。


「お前が……欲しい……。」


 シースはコクリと頷いてくれた。

 俺は普通に勃起し、シースの中に射精した。何度も、何度も……。


 結婚というものが制度化されているわけではない。

 両親の承諾を得て、シースは俺の家に入った。


 一年後、シースは男の子を出産した。

 いずれ、本人たちが望めば妹と一緒になってくれたらいいなと思うが、先のことは分からない。


 そして、俺は死ねるのか……これが最大の課題だ。

 相変わらず、自動的に成長することはない。

 髪や爪も伸びない。


 息子は普通に成長しているので大丈夫そうだが、最近シースに疑われている。

 髪が伸びないとか、成長が遅いとかだ。


 だが、今のところは二人目の妊娠でそれどころではまいだろう。


 ところで、最近気になっていることがもう一つある。

 俺は、女性の姿だと妊娠するのかどうか。

 これはサラも気にしていて、ザジと試してみろとか言い出している。

 俺の子供を産んでみたいとも言っているが、これは冗談だと思いたい。


 まあ、もし死ねなかったら、色々な人生を経験するのもいいだろう。

 両性具有にしたら、自分で自分の子供を妊娠できるかもしれない。


 将来が楽しみである。



【あとがき】

 おしまいです。お付き合いいただき、ありがとうございました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔人R モモん @momongakorokoro3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ