第10話 私の回りの愉快な人達
「ねぇ、葉利菜。」
「なあに?お母さん。」
「彼氏出来た?」
ピタッ
私は箸で茶碗から持ち上げたお米を口に入れる寸前でフリーズした。
「あら?あらあらあら?」
「お、お母さん?どうしたの急に………」
「んー図星なのねー!」
お母さんは興奮したように声を上げた。
「違っ!…ちょっと!止めてよ!」
「だぁいじょーぶよ!お母さん、葉利菜のこと秘密にするわ!」
お母さんが胸を張った時、私には遺伝されなかった大きい脂肪の塊が存在を主張するように揺れた。
「………信用できないよ…………」
私があなたの娘ってことがね…………
まぁ、それは冗談で、見て分かる通り、お母さんはお喋りだ。話しちゃいけないことを話しても、後で「そうだった~」なんて言う人だ。
それのせいで、近所のおばさま方には、私の小さい頃のエピソードが知れ渡っている。
「んもう!お母さんのことどう思ってるの!」
「お喋り。」
「う!」
「考え無し。」
「うぅ!」
「若作り。」
「うぅあぁぁ!?」
オーバーなリアクションをして机に突っ伏した。
「バカなことしてないで食器洗っちゃいなよ。そうやってても、私は洗わないよ。」
お母さんは隙あらば私に家事をやってもらおうとするからね。甘やかすのは良くない!
歯磨きを念入りにして、鏡で身だしなみを整える。
「チェッ、いけずー。」
「じゃ、いってきまーす!」
「はぁい、いってらっしゃ~い。」
大野くんとの図書館デートはあの後時間がある時は積極的に実施した。そのお陰で、私は無事テストを突破出来たのだった!
それにもうすぐ夏休みー♪︎
大野くんといっぱいイチャイチャするためにも、頑張っていこー!
「おはよー。」
カバンを机の横に引っ掛けて、友人の所へ向かう。
「あ、葉利菜おはよー。」
「舞子髪切ったんだねぇ。似合ってる!」
「おぉ、よく気付いたね?ありがとー。」
ふふん!こういう細かい所に気付くのが好印象なのだよ。聞いているかね!?大野隊員!
「にしても、そろそろ夏休みだね。」
「うん、そうだね。」
「どっか遊びに行かない?」
「いいね!あ、でも舞子、陸上部の練習は?大会あるんじゃなかったっけ?」
「もー!先生みたいな堅いこと言わないで!厳しい練習してるんだから、パアーッと遊ぶのが気持ちいいのに!」
「へえ?………ん?その言い方だと、練習してないと遊ばないってこと?」
「当たり前じゃん!遊んだらそれ以上運動しないと、身体は鈍ってダルダルになっちゃうんだよ!」
舞子が両手でお腹を控えめに触りながら叫んだ。
「あぁ、うん。そうだね。」
言えねぇ……家で寝そべりながらお菓子食べてるって………
「そういえばぁ、葉利菜って運動してたんだっけ?」
うっ!?
「いやぁー、そのー……やってたっていうか…まぁたまに?やってるっていうかぁー?」
たまに運動はやろうと思うんだけど、その度にお母さんから高級菓子という誘惑を受けているんだ!しょうがないじゃないか!これは陰謀を感じるね!
「ふーん。」
舞子は目を細めて私の身体、特にお腹を舐めるように見る。
「な…なにさ………」
「体育でしか運動してないのにその身体なんだぁ?」
「え、まぁ…………あぁっ!?」
「ゲロッちゃったねぇ~?逃さないよぉ?」
「ひえぇ!?」
延々と健康のためにももっと運動しなさいと説教を食らってしまった。
舞子のが私のお母さんよりお母さん向いてるよ。
「ふぅー、まぁ筋トレでもやってみてよ。身体の調子が全然変わるよ。」
「……分かった。やってみる。」
「うん!」
「あ、そうだ。これお礼に。」
いつも学校に待ってきている個包装のおやつドーナツを舞子に渡した。
「え!?良いの!やったぁ!食べていい!?」
「良いよ。」
「あ~む…うぅーん!美味しい………」
「じゃ、そろそろ朝のHR始まるし、私は戻るよ。」
「んー。」
「それじゃ舞子、運動頑張ってね?」
舞子はキョトン?とした後、おもむろに手元のおやつドーナツを見る。
「ゴクン……あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
口の中を空にしてから叫ぶぐらいの余裕はあるみたい。
ー昼休みー
「三人ともやっほー。」
「よぉ、川越。」
私が向かったのは男子三人のところ。
……浮気じゃないよ!?彼らはカラオケ三人衆であり焼き肉三人衆でもある私の恩人だ。恩人ってのはデートのヒントをもらったから。密かに敬ってるだけ。
今挨拶を返してくれたのは園生優羽牙。優しいのかおっかないのかよく分からん名前をしている。
その隣にいるのが佐世平健一郎。させひらではなくさせだいらという言い方に妙にこだわっている。
最後に席に座ってるのが千鶴根万。鶴かと思いきや名前は亀の寿命である。
「俺たちのところに来たってことは、今週何か良いのを見付けたんだな?」
「ふっ、あたぼーよ!これ!」
「おぉ!?除虫草先生、新作出してたのか!」
そう、ラノベ仲間である。
「へぇ……設定は初めてのものだね。」
「いやいや、中身が良くても挿し絵も完璧で……な、ナニィ!?イラストは電動三輪車先生だとぉ!?」
「まさかこの組み合わせが実現するとは!!」
「い、生きてて良かった…………!!!!」
最初の印象は陽キャァ!って感じだったけど話してみたら同志だと分かり、すぐ意気投合出来た。
このオーバーリアクションも慣れると見てて楽しい。大野くんが教室にいなければ私も参加していただろう。
「俺は!?」
大野くんはまた今度で。
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