第6話 喜ぶ私と震える彼
「テスト終わったなぁー!!」
「おっしゃ!どこ行く!?」
「頭使ったし、焼肉食い行くか!」
「「おぉ!奢りか!?」」
「んなわけあるか!アホどもが!」
男子三人が教室から出ていった。
カラオケ三人衆が焼き肉三人衆になったか……
「何をそんな神妙な顔で腕を組んでるんだ?」
「大野くん……テスト終わったし、どっか行かね?」
私は腕を組んだまま、さっきの三人のノリのように言ってみた。
「まぁ、良いけど。」
ガタッ!
「わ!?なんだよ………」
「ごめん…言ってみるもんだなって………」
驚いて立ち上がっちゃったよ!まさか乗ってくれるとは……恐るべし男子のノリ!
「そ……で?どこ行く?」
んーこの近くで拘束時間的に………
「…映画館はどう?」
「映画かぁ………何見る?」
む、どうしよう……今シーズンのアニメは全部見ちゃったし、ラブロマンス…は興味ないだろうし、つーか私がない。今のラインナップは………
私はスマホで映画の一覧を見てみた。
「んーーー………あ、これどう?」
「………オゥ。」
一時間半、かなり洗練されたホラー映画を見た。CGも違和感無かったし、演技も不自然じゃない。BGMで驚かせるタイプじゃなくて、ストーリーの不気味さと不可解な現象でゾクゾクさせてくれるかなりの良映画だった。これはネットでの考察が捗ってるだろうし、家帰ったらちょっと覗くかなぁ。
それと、ポップコーン(塩味)うめぇ!
「いやー面白かったねー。」
「オゥ。」
「そうだ、感想会も兼ねてまたあそこのカフェ行こうよ。」
「オゥ。」
「………?じゃあ、しゅっぱーつ!」
何か違和感があったけど、まぁいいか。
大型のショッピングモールだから、大体のお店が揃ってるけど、あそこのショートケーキがまた食べたい欲が勝っちゃったね。
「ご注文は?」
「じゃあ、ローズヒップとショートケーキ。…あ、あとモンブランも!」
「かしこまりました。そちらの方は……?」
「あ、コーヒーで‥‥」
「かしこまりました、少々お待ちください。」
「……ねぇ。」
「………」
「なんか元気ないけど、どうしたの?」
「あ…あぁ。」
顔が少し青ざめてる………?
あ!さっきの違和感分かった!いつもなら私の目を見て喋るのに、今日は足元ばっかり見てる!
「体調悪いなら無理しないで言ってよ?」
大野くんは何か考え込んだ後、顔を上げた。
「…スゥー。
あーーー実は、ホラーダメなんだ。」
「え?そうなの?」
全然イメージ無かった…………
「人生で一度もお化け屋敷に入ってないレベルだと伝えておく。」
「あ……それならそうと、苦手って言って断っても良かったんだよ?」
「……いや、折角の機会だし、今ならいけるんじゃないかって思ったんだがな………」
本当かなぁ?なんか視線逸らされたし。
「大野くん。」
「何だ?」
大野くんが私に目を合わせた…今!
「ガオッ!」
「うっんぁ!?」
私が両手を出してライオンの真似をしてみたら、大野くんはすごく驚いて声を出しかけたけど、外ってこともあってか抑えこんだ。
その土俵際は見習いたいね!
「なにすんだ…!」
少し怒り気味に私を睨みながら尋ねてきた。
「もう、さっさとゲロりなよ。ビビリです……ってね!」
「な!?」
ピシャーンと、大野くんの背後に雷が落ちてきたように思えた。
「お待たせしましたー御注文の品でーす。」
その時、丁度良く?店員さんが来て、大野くんが固まったままだったから、私が受け取っておいた。
「別にビビリだからダサいとか思わないし、そんなんで私の好きは消えないからね?」
私は固まった大野くんにウィンクでフォローした。ちょっと恥ずかしいけどこれでアピールは出来たんじゃなかろうか。
「………すまん。………なぁ。」
「なに?」
「隣行って良いか?」
はうぅぅ!?!?
「ど、どどどどうぞ!?」
「あぁ、ちょっと、不安で………」
そう言って移動してきた大野くんは少し震えた手で私の制服の裾を掴んだ。
「!?!?!?!?!?」
なんだこれは!?可愛いかよ!?
「お、大野くん?」
「…なにも言わないでくれ……まだ余韻が残ってるんだ………」
んんー、思いがけないご褒美……テストの後の脳に糖分とともに染み渡るわぁ……あー定期的に大野くんとホラー見ようかな。
「ケーキいる?」
「いや、いい。」
「残念。」
前回の間接キスチャレンジしたかったけど、流石に無理か。
「ふぅー落ち着いた。悪かった。これが驚かせる系だったらもっとやばかったな。」
すっと立ち上がると、大野くんは私から離れてしまった。
「あ……」
「これでゆっくり出来る。」
そう言って大野くんはコーヒーに砂糖を二つ入れた。
「また見に行こうね!ホラー。」
「断固拒否する!」
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