第4話 ニヤける私とぶれない彼

「今日カラオケ行こーぜぇー。」

「良いねぇー。」

「あ!俺金ねぇわ。」

「しゃーねーなー貸してやるよ。利子付きで。」

「は?ケチじゃん……因みにいくら?」

「一時間2乗。」

「クソじゃねぇか!訴えてやる!」

「まぁまぁ、冗談だって。利子無しで貸してやるよ、俺は優しいからな。」

「へいへい、ありがとよっと。」

 男子生徒三人が教室からいなくなり、教室には私だけ。そう、私だけだ。大野くんは先生に呼ばれているからね。

 にしても、カラオケ………明日は休みだし、デートに誘ってみるのもあり、かな?

「こんな時はネットの力を!」

 えー……と、カラオケの他に博物館、ショッピング、映画館…………何とも言えないなぁ。大野くんは何でもめんどくさいで片付けそうだしなぁ。

 


 んんー……やっぱり無難にカラオ…

「わぁ!」

「ケッ!!」

「うおぉ?変な声だな。」

「へ!?あ、いや………」

 後ろから驚かせてきたのは大野くんだった。ていうか、急に声かけてきたからキモい声出たし、大野くんそれで笑ってるし……どう反応すれば良いのよぉ…

「で?何してたんだ?」

「あぅ………」

 デートに誘ってないのに、妄想しながらデートスポットを探してましたなんて、言えないよぉ!

「そ、それより!先生に呼ばれてたけど、何だったの?」

「あ?あぁ、あれだよ。何かしらの部活に興味は無いのかぁ?ってやつだよ。」

 あぁ、いつものやつか。

 大野くんは運動神経がなまじ良く、覚えも早いため、色んな部活から勧誘をされていた。結局、本人が顔を縦に降らなかったため、担任の先生が何となしに話す程度になったけど。

「大変だねぇ。」

「ホントだよ、全く。それで?何してたんだ?」

「あう!?」

 誤魔化せなかったかぁ……

「ほら、キリキリ吐けよ。」

 なんでこんなところでSっ気を出すのかなぁ?

「いや……まぁ……ちょっと、デートスポットを…」

「え?調べてたん?」

「あ、はい。」

「へぇーー………」

 私の答えに表情を変えずに反応する大野くん。

「…………」

「…………」

 え?この沈黙は何?


「ごめん、これ何?」

 私には耐えきれなかったよ…………

「……これ。」

 スッ…、と差し出されたのは大野くんのスマホだった。

「え………」

 そこにあったのはとあるカラオケ店のホームページだった。

「一応、探そうと思ってさ。これなら良いよ。」

「そ、そっか。」

 そう言った大野くんは恥ずかしそうに、手で口元を隠して視線を反らしながら呟く。

 

 ハアァァァ?可愛いかよ。しかも、カラオケを選ぶとか、解釈一致すぎるわ。

 これだけでもメチャクチャハッピーだけど、……ここ、踏み込みチャンスでは?

「大野くん、これって明日デート行けるって意味で良い?」

「え?……まぁ、良いけど。」

 っしゃぁ!

「それとね?カラオケだけだとあれだし、ショッピングもしよ?」

 なるべく要望が通るように、大野くんの袖を掴んで、上目遣いで話しかける。

「あぁ、なんか欲しいのでもあるのか?」

 くっ!効いてない!?

「大野くんの好みの服を選んで欲しいなって。」

 ならば、これで!

 必殺!あなたの好きに染まりたい!

「じゃあ、目が痛くならないやつで。」 

 む、無傷だとぉ!?

 いや、諦めるな!ここで粘れば!

「いや、今じゃなくて。」

「ハァー…まぁ、良いけど。」

「やった!言質とったからね!?」

 勝ったわ。

「うるさいな、分かってるよ。」

 なぁんか憎まれ口叩いとりますけど、お兄さん。隠れるように手で風を送ってるのがバレバレですわよ。それやってる時のお兄さんは、めっちゃ恥ずかしがってる時ですのよ。

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