25. さみしさとうれしさ(終)

「終わったな」



「なぁ」

「何」

とフルーが返す。

「作るよりも壊す方が早いな」

リーマルド王国。生まれてから十数年、何度も通った道も何度も入った家も無くなった。長い時を使って大きくしてきたであろう国の王都が消え、国としても無くなった。


「たぶん死んだやつらの中には俺と同い年のやつらもいるんだろうな…俺は運が良かったな」

あの時、縁を切られてなかったら今も家にいただろう。冒険者になって外に1人で出ようとも思わなかったはずだ。


「そう。ゴトは運が良かった。死んだ人たちは運が無かった。いつもそう、運がいい人だけ生き残る。そういう人をいっぱい見てきた。暗殺者をやってきたから分かる」

とフルーが言う。

「悲しい?」


「…いや、別に。親しかった訳でもないからな。それに知らない人が死んだところで悲しめる程、俺は良い人でもないからな」

「そう」

「ただ…」




「人がいなくなるのは…建物が消えるのはさみしいな」




思わず寝転び、空を見上げる。オスクリタの闇によってつけられた傷が痛む。

王都があったはずの場所には岩以外には何も残っていない。空も雲がほとんど無い。

「なんか俺ら2人だけになったみたいだな」

とフルーに言ってみる。



「ふふっ。そうだね。まるで私たちだけがどこか違うところに追放されたみたいだね」





「おや。私も入れてはくれないのかい?」

とカルエラの声が聞こえてきた。

「なんだカルエラ。逃げたんじゃないのか?」

「何を言っているんだ?私は死にたくないから離れるとは言った。逃げるとはひと言も言っていないね。それに君がオスクリタを倒したからこうして来たのさ」

というカルエラの言葉を聞くと、途端に眠くなり目を閉じる。


「君は怪我人だからね。暴れないように眠ってもらうよ。…あぁ、君にはゴトを…」

とカルエラの言葉の途中で寝てしまった。


====




「う~ん?」

目を覚ますと木の天井が見えた。


「起きた」

「…フルー、ここは?」

と隣にいたフルーに聞くと

「ガラストさんたちが作った怪我した人用の家の中。ゴトを運んでからそこまで経っていない」


ガチャ

「…起きたようだね」

と丁度ガラストさんが部屋に入ってきたので、起き上がる。

「ここは君の友人のスラン君が守ってくれたおかげで無事だよ。だから怪我人だった君を運ぶ事ができたんだけどね」

「カルエラは?」

とフルーに聞くと


「多分他の怪我した人を見てる」

「あぁ、あの子ゴト君の知り合いなんだね。なら怪我人を任せても安心かな?」

と心配していたことが無くなったのかガラストさんは安心していた。あいつ、勝手に治しているのか…


「そういえばガラストさんはこれからどうするのですか?」

「これからって?」

「ほら。リーマルド、無くなっちゃいましたよ」

「あぁ…」

とガラストさんは声を出す。

「多分どこかの街のギルドに行くよ。エレーデかな。そう言う君は、君たちはどうするのかな?」

と言い直しながら俺とフルーにガラストさんは聞いた。

「私はゴトについていく」



「俺は…旅をしようかな」



「リーマルドが無くなったのは「しょうが無い」、「まぁ、いっか」と思って、俺は冒険者の道を進みます」

とガラストさんに言った。


俺の進む道は周りから見たら間違っているのかもしれない。どこか大きい店で働く方がいいとか、どこの国で静かに暮らした方がいいと言う人がいるかもしれない。

でも俺は自由に旅をする。だって、




なんとなくそっちの方がいい気がしたから。





「ゴトが旅をしようと私はついていくよ。たぶんファウシーもアドニアスもついてくる。カルエラもジュビナもついてくるかもしれないね。もしかしたらユアさんも」

「はは。それはどうだろうね」

とフルーの言葉にガラストさんが言葉を挟む。


「いくらゴトの周りに人が増えても変わらない事がある」

「なんだ?」

と聞くと


「ゴトとの旅は楽しい」


「だから最後まで見てあげる。ゴトと誰かの間に子どもが出来ても、身体が思う様に動かせなくても、ゴトの旅を隣で見てあげる」

とフルーは言ってくれた。


「…ありがとな。そしてこれからもよろしくな」






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====


ここまでお読みいただきありがとございました。

初めての中編小説の完結です。

感想、評価などをいただけると嬉しいです。

また、自分の投稿している他の小説も一読していただけると嬉しいです。(現在長編を不定期で投稿中です)


ようび

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