24. 最後の火
オスクリタが闇で作った剣、アドニアスが鉄の剣で斬り合う。…が
「…まぁ、こんなものだろう」
とオスクリタは余裕の顔で剣を振っている。それに比べてアドニアスは厳しい顔だ。
「君は貴族だろう?剣の握り方、振るう方向、力の入れ方、すべてが綺麗だ」
「…」
「だが戦いに向いてはいない」
「確かに綺麗に剣を振るえばより大きな傷を負わせる事が出来るかもしれない。…だが戦いにおいて小さな傷だろうと大きな傷だろうと勝てばいい。むしろ分かりやすい貴族の剣は強者の格好の餌食だ」
「君のようにね」
ガギン!
と言い終わると同じくしてオスクリタがアドニアスの剣を跳ね上げた。
「ここだろ」
ビュオ!ザシュ!
完全にオスクリタが油断し、さらにちょうどよく脇腹が空いてる時に風属性魔法を打ち込んだ。
「!?」
オスクリタはその場から素早く下がった。そのため最初に当たった風属性魔法以外は外れたが、アドニアスは傷を負わずに俺の元まで下がることが出来た。
「ありがとうございます」
「いや、たまたまだから。それと剣貸してくれる?それとガラストさんのいた建物まで戻ってくれる?」
と俺が言うと
「…色々、言いますね。…分かりました」
とアドニアスは素直に剣を貸してくれ
「先に戻っていますので…早く来て下さいよ?」
と言い、走っていった。
「…やはり俺にとっての1番の敵はお前だ!ゴト」
「正々堂々とやろうか、オスクリタ」
====
ガギン!ギン!ギン ギン…
オスクリタと剣を打ち付ける。もちろん剣なんてほとんど振った事がないので適当にだ。
「やはり剣を振ったことがないな。雑だ。…だが俺の攻撃をちゃんと防いでくる。…脅威だ」
「どうも」
「褒めてはいない」
とオスクリタが言うと、剣を振る力が強くなり、それによって飛ばされて少しオスクリタとの間が広がった。
というかどうする?剣を振ったところで勝ち目はない。やっぱり魔法で攻めるしかないが…
「俺には剣では勝てない。少なくともお前と俺しかいない時に剣1本で俺に勝つ方法はない」
1人しかいないのがだめだ。詠唱ができず、簡単な魔法しか使えない。…いや、その考え方は駄目だ。
「俺に勝つとしたら魔法を使う事だろう。…もっとも」
ガッ!
「そんな事はさせないけどな」
とオスクリタは俺との間を詰めて、剣で追い詰めてくる。
ギンキンギン!
と剣を頑張って合わせるだけになり、俺はオスクリタに攻撃を出来ていない。
「…」
「厄介だな。重い闇をさらに加えよう」
ガギン!
「…、そ……え…」
「…闇による斬撃を食らえ」
とオスクリタが言うと、俺に向かって小さな闇が降り注ぐ。
ギギッ ザクザク
「……大…を…がせ」
「さっきから何を言って…」
「火炎よ。敵を燃やし尽くせ」
「!?詠唱か!」
とオスクリタが後ろに下がり、俺の詠唱した魔法に警戒する。…が
「…?」
当然何も起こらない。まだ魔法は放っていないからな。ただ、オスクリタの攻撃が止まった。しかも、無属性魔法で強くした足なら届き、攻撃出来るだけの時間が出来た。
ドゴン!
足に力を入れた次の時には、オスクリタのすぐ目の前に俺はいた。
「!?そういうことか!」
とオスクリタは気づき、剣を振るってくる。いや、少し早くないか?だけど、俺も止まれない。
思いっきり剣をオスクリタの胴体をめがけて振るう。だけどオスクリタの剣の方が早い。だけどこいつを倒せるのであれば剣を受けようと死ななければいい。
ザシュ!
そうして飛んだ。
闇の剣を持つオスクリタの腕が
オスクリタの後ろには少し大きめの短剣を持ったフルーが立っていた。
オスクリタは気づかずに腕を振るが、当然俺には腕すら当たらない。
ザシュ!
そして俺の剣がオスクリタの腹を切り裂いた。
====
ドサッ
「…くそが」
オスクリタの身体は地面に倒れる。すかさずオスクリタは闇で傷を覆おうとするが…
ドカッ!ザシュ!
フルーは落ちていた腕を蹴り飛ばし、俺は土属性魔法で地面から剣を生やし、足を切り離した。
「!?…ガァ!」
「闇で傷は覆える…治している訳じゃ無いなら血は別だろ?」
もちろん血も闇で増やせるかもしれないが、傷を与え続けるのがこいつを倒せる方法の1つであるはずだ。
「お前はどこから来た!なんで俺の後ろにいた!」
とオスクリタはフルーに叫んだ。
「私は木にしがみついていた。防御魔法もかけてもらっていた」
あの木はエレーデの方から来ていたからな。木を飛ばしたのはファウシーだろう。
ザシュ!
どさくさに紛れて闇で傷を塞ごうとしているオスクリタの残っていた腕をフルーは切り離した。
「無駄だ」
「…ハハハハァ!お前らも終わりだ」
と傷を塞いでいた闇が消えた。多分何かやるんだろう。…だが
ボウ!
「誰も詠唱していないとは言っていないぞ」
オスクリタにどこからともなく火属性魔法が当たり、オスクリタの身体を燃やす。
「何!」
「学園の禁書で見た『すべてを燃やす火』だ。学園でところ構わず練習した甲斐があったな」
「…お前さえいな」
と最後の言葉を残し、男は灰になった。
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