23. どこから来た?

(時は戻り…)


「そうか…そうか…」

俺がオスクリタにつけた傷は闇によって覆われ、瞬く間に血は止まってしまった。おいおい、それはずるくないか?


「ゴト、力は弱いが脅威だ。間違いなく。もしこの世に俺を殺すやつがいるのであればお前だろう」

「いや、俺の他にもっと別なやつがいるだろう?」

と俺が言ったとき


ドン!

グァァァァァァ!

と銀色の竜が血を流しながらも戻ってきた。


「お前もいたな。確か白銀の竜だろう?竜の中でも特に強いという。…だが」

とオスクリタが言うと闇を身体の外に広げ、空を覆った。

「強力な一撃をもってこの王都ごと葬ろう」

と言い、王都の全てを覆い尽くす闇を勢い良く降ろそうとしてくる。


「スラン!救え!1人ぐらいなら俺が守れる!」

「分かった!…なら」

とスランはの姿は瞬く間に消え


「彼女は頼んだよ」

というスランの言葉と共に、俺の後ろにアドニアスが訳の分からない顔で座っていた。

「え?」

その言葉を聞き、防御魔法を上からの攻撃から守れるように俺とアドニアスを覆うように囲んだ。




ドッ! ゴオォォォォォン!




====


凄まじい音がし、防御魔法の板に石や岩などが当たる音も響いた。目をつぶっていたのでそれ以外は分からない。

いや、まじで耳が壊れそうな音だったんだけど……壊れてない?俺の耳?


少なくとも俺は生きている。後ろにいるアドニアスが生きているかは分からない。

それを確かめるために後ろを振り向き、目を開けると、そこにアドニアスはちゃんと生きていた。…ん?暗いな。


「え?」

というアドニアスの言葉と共にアドニアスの見ている方向、上を見てみると


クルクゥゥ


竜が覆い被さり、俺たちを闇から守っていた。


「…なんでだよ!」

お前が俺らを守ることはねぇ。なにせ普通の力だったら俺らより強い。しかもオスクリタの攻撃を何回も耐えられる程に丈夫。俺らを切り捨ててでも良いはずなんだ。


俺らが無事なことを知ったのか。

ブワッ!

とぼろぼろの翼を動かし、俺らの上を飛んでいく。背中が傷だらけなのか、竜が上を飛んだ地面には血だまりが竜の進む道に沿って出来ていた。


「…白銀の竜がかばったか…まぁ、いい。これで俺の敵が減った」

と竜がいなくなったことによりオスクリタが見えるようになった。


あれだけ壊されていた王都はさらに壊され、辛うじて残っていた王都の壁は完全に無くなり、元々建物のものだと分かる王都の中にあった岩はほとんど無くなっており、あったのはひび割れた地面だった。


「…しかし、あれを守れるとは…もう少し鍛えなければな」


…俺らの周り、詳しく言うと竜を中心に俺らの方向に広がるように闇が落ちる前の地面が残っていた。


「まぁ、とりあえず残りを壊そうか」

とオスクリタはこっちに闇を伸ばしながら向かってきた。それを見て


グッ

とアドニアスの服を無理やり掴み、横に自分の背丈よりも長く移動した。


すると

「!?」

ドゴン!

と何かが俺たちの横を通り、オスクリタに向かって飛んでいった。…がオスクリタは飛んで避けた。


「ふむ。遠くからの攻撃か?」

とオスクリタが言うと闇を思いっきり振りかぶり…


ドガン!


地面をめくり上げた。その地面は凄まじい速さで飛んでいった。

「これでいいだろう。後は…お前たちだけだ」


キン!

と音を鳴らし、素早くアドニアスがオスクリタに斬りかかった。

「君が相手してくれるのかい?」

「そう!あなたを止める為に!」

とアドニアスが言うのを合図に斬り合いになった。


俺はふとオスクリタの後ろに飛んで来たものを見る。

ぼろぼろで所々焼け焦げたような跡が見えるが明らかに太い木であった。そして飛んで来た方向には…あの街がある。そして竜が飛んでいった方向でもある。


「…大丈夫か?」


まぁ、怪我人がいる建物は大丈夫か。スランがいるし。

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