20. 強すぎねぇか?

「アドニアスは行くか?」

と一応聞いてみると

「行きますよ?」

とまるで「何を言っているんだ?」と言わんばかりに答えた。


「…なら1番大きな門から入って。そこなら塞がれていない」

とガラストさんが言う。

「分かりました。じゃあ、行くので。…アドニアスは勝手についてこい」


====


王都の見知った場所の見慣れない形になってしまった門をくぐる。


そこから見えたのは壊された家しかなく、辺りはすべて建物が崩れ、岩だらけになっていた。


その王都の中心の方で何かが動くのが見えた。


「…アドニアス。お前は怪我人を探せ。敵は俺1人で探す」

「大丈夫なのですか?」

大丈夫か大丈夫じゃないかで言えば大丈夫じゃないが…

「大丈夫じゃないから、怪我人を助けたらすぐに来て欲しい。もちろん死ぬつもりもないがな」


「…分かりました。気をつけて」

とアドニアスは言い、俺とは別な方向、王都の壁に沿って走って行った。




ひたすらに元々は建物である岩を避けながら王都だったものの中心に向かって進む。進めないときは岩を踏みしめながら進んだ。


進むごとに王都の中心にいる何かがよく見えるようになってきた。


「…ん?…あぁ、次か」

と言い、防具がぼろぼろの冒険者らしき男の首を掴んでいた黒色の短い髪の男がこっちに目を向けた。


ボキン!


と低い音がしたと思うと冒険者の首が折られ、折った男はそのまま冒険者を投げ捨てた。


「次はお前が相手をしてくれるのか?」

「オスクリタだな」

と言ってみると

「…俺の名を知っているとは…まぁ、関係ない」

とオスクリタが答えた。その時、嫌な予感がしたので防御魔法を使うと


ガキン!

「ほう?」

防御魔法によって作られた壁越しにオスクリタの腕から伸びるが見え、それが俺に向かって攻撃を行っていた。


「…まじか…凄いなこれ」

見えなかった…

「…俺のスキルだ。すべてを壊す闇だ」

「教えていいのか?」

「問題ない」

とオスクリタが言うと、腕がぶれ


ズガン!

と音が鳴った。


「は?」

「教えても壊せるからな」


オスクリタが城を狙ったのか、かろうじて残っていた城の下半分が地面ごと無くなっており、オスクリタから城を超えて広がるように地面が削られていた。


凄い力だ。だが、不思議に思うところがある。

「…なんで俺を一発で殺さなかった?」

城に向けた力を俺に向ければ防御魔法も簡単に破れただろう。



「美しくないだろう?」

「うつくしく?」



「破壊にも美しさがある。確かに一発で壊しつくすのも美しい点がある。人ならば死を感じずに死んでいく、物ならば跡形も無くこの世から無くなる。…うむ、美しい…」

「ならそれでいいだろ」

思わず口に出してしまった。こいつヤバいだろ。

「…だが、少しずつ壊れていくのも美しい。さっきの城だってわざわざ下半分だけ残し、助かったと思ったところで残ったところをすべて壊しつくした。人だってそうだ。死にかけ、生きれると思ったところで少しずつ壊す。…自分はこれが特に好きでね…」


ズバン!

と俺の近くの地面が切り裂かれる音がした。そして

「え?」

肘から先の右腕が無くなっていた。

「死なないでくれよ」


====


腕を切られたところを着ていた上着で包み、縛った。…火属性魔法で傷を焼く事も思いついていたがなんとなくこっちにした。…とりあえず


「化け物か…さてどうしようか」

「まだ、魔法は使えるだろう?抵抗してくる人を壊すのも悪くない」

じゃあ…

「岩壁よ。大地から敵を貫け!」

と言うとオスクリタの下から土属性魔法の鋭い岩が伸び、オスクリタの周りが別の岩の壁で囲われた。


ドゴン!

「造作も無い」

岩の壁を壊してこっちに来たオスクリタを


バリバリバリ!

あらかじめ発動させていた雷属性魔法が襲う。


バリ! バチッ!

「面白い」

オスクリタは難なく闇で作られた腕で雷属性魔法を振り払った。

「学園で習うような戦い方じゃないな」

これでも一応学園に入っていたんだけどなぁ…

と思っていると


ドッ!ガガッ!

と地面が揺れ


グルルルゥ


「ほう。これは面白い獲物だ」

先ほどオスクリタによって削られた地面に銀色の身体の竜がどういう訳か降り立った。

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