19. 救うことと倒すこと
俺らは急いで王都に近づく
どれだけ近づいても見た景色は変わらず、むしろ崩れかかった壁がよく見えるようになり、どれだけの被害が出ているのかが分かるようになってきた。
「…これは」
とスランの上にいるリナさんは信じられないようなものを見る目をしていた。
「さて…近くまで来たは良いがどうするか」
王都の中に行くか?
「とりあえず王都から離れた場所にいる人たちに話を聞きに行った方が良いと思います」
とアドニアスが言ってくれた。
「じゃあ、もう少し進んだら俺たちを降ろしてください。そこから歩いて行きますんで」
と
「分かった。降ろしたら森の方まで離れてるからな」
と言ってくれた。
しばらく馬車で行き、降ろしてもらってからは少し走り気味で、アドニアスと一緒に遠目に人が見えた場所に向かった。
「私たちは他のところに行った方がいいですよね?」
と俺たちに合わせて歩いているスランの上に乗っているリナさんが聞いてきた。
「…そうですね。他のところに行った方が良さそうですね。馬に乗っているなら誰かいないか王都の周りを一周してきても良いかもしれません」
とアドニアスが言う。確かにそうだな。俺たちが走る速さとスランが走る速さはあまりにも違う。なら他に、スランにしか出来ないことをやらせればいい。
俺はさりげなくスランに近づき
「怪我している人を探してこい。救えるだけリナさんと一緒に救ってこい」
とスランだけ、かろうじて乗っているリナさんに聞こえるように言った。
「ならスランさんに乗って1周してきます」
と言い、リナさんはスランに乗って王都を1周しにいった。
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リナさんと別れた後、しばらく走っていると布で作られた建物が見え、周りには人がそれなりにいた。
「…布で作られた建物…ということは」
「怪我している人がいるな」
学園では怪我している人がいて、建物がない場合、骨組み以外を布で作った建物を作るように教育されている。
なので布で作られた建物に近づくと
「怪我人か?」
と建物の前にいた男に声をかけられた。
「いや。王都にさっき戻ってきたばかりなんだ」
と話していると
「おや。君はギルドにいた子だね。ほら扉が壊れたときの」
建物からギルド長が出てきた。
「…どの時なのかは分かりませんがユアさんと一緒に入ってきたのであれば自分です」
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「何があったんですか?」
と建物の近くの座れる場所で落ち着いてギルド長の話を聞いた。
「…簡単に言うと、王都が攻撃を受けて壊滅した。たくさんの人が死に、怪我をした」
凄く分かりやすい。でも…
「…えぇっと…あなたはなんで無事なんですか?それに周りにいた人たちも」
「そういえば名前言っていなかったね。僕はガラスト。…で僕たちが無事な訳ね…たまたまギルドを閉じて外で訓練をしていたんだよ。ほらギルドの中で冒険者が暴れた時があったじゃん?それがもう起こらないようにギルドの職員を鍛えるために外で戦っていたんだ」
…本当に偶然だな。
「…ゴト君は冒険者だったよね?」
「そうですけど…」
なんだ?
「王都に向かってくれないかい?実は王都の中に向かった冒険者がほとんど戻ってこなくてね」
「…何人死んだんですか?」
と聞いてみるとガラストさんはため息を吐き
「周りを不安にさせることはあまり言わない方がいいよ。…数えていないけれども、少なくとも20人が1人の敵に殺されている。ランクBやランクAも殺されている」
「これらの情報は王都の中の怪我人を運んできた冒険者の言葉だから間違いないだろうね」
ランクAですら…か。
「もちろん無理にとは言わないよ。ここで逃げたとしても誰も責めやしない。自分の命が大切なのは当然のことだから」
「…白い馬が怪我人を運んでくると思います。その時は怪しまずに受け入れてください」
元々頼まれたからここに来たんだ。
「その代わりに俺がどうにかしてきますので」
オスクリタを倒すために
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